間章 迫り来る脅威
四大勇者国の一つ。
大陸の東側の大部分を支配する超大国、ブリテン大帝国。
四大勇者国の中でも最も、強大な土地と武力を誇るがその国の情報は未だに謎が多い。
その情報封鎖能力は凄まじく、あの女神ヴィーナスですら大帝国の内情は理解できていない。
ただ一つだけ、公に広まっている事実がある。
それは、数百年前。
当時の女帝だったモルガンに不満を持った妹帝アルレイヤが自身の騎士団を率いて反旗を翻したが、敗れ去り国を追われているという情報のみ。
そんな大帝国の国境付近を、一人の男が馬に乗って走っていた。
身体中から汗を流し、急げ急げと馬の尻を叩く。
そして、ようやく伝令の青旗を掲げた早馬が到着する。
ブリテン大帝国の国境付近に聳え立つ巨大な国門が、彼を出迎える。
巨大な国門の前で護衛をしていた者達の検問を終えた伝者は急足でブリテン大帝国の首都ル・フェの中心に聳え立つ巨大な城。
帝城アヴァロン城内へと向かう。
100を超える部屋。
赤い絨毯が敷かれた広い廊下を早足でで移動し、向かった先は玉座の間…ではなく、とある一室。
その部屋は異様な空気に包まれていた。
全身に伸し掛る重圧と緊張感。
恐ろしい程に、静まり返った部屋。
円卓を囲うように座る6人の男女。
部屋の中は暗く、その姿はハッキリと見えない。
ただ分かるのは、全員が異常な程の存在感を持っている事である。
伝者はその空気に呑まれ、ただ身体を震わせて立ち尽くしていた。
(な、何という重圧…恐ろしく、身体が動かない…)
無理はないだろう。
何故なら、彼等はこの大帝国で女帝の次に権力を持つ者達なのだから。
かの女帝モルガン・ルフェ・ペンドラゴンが召喚した異世界からの勇者。
一人一人が千、或いは万の軍を相手にたった一人で滅ぼせる力を持った最強の騎士達。
「それで、何用だ?」
円卓の前座に腰を掛けていた人物が伝者に向かって言葉を投げる。
ごくり。と息を呑み恐る恐る答える。
「ハッ…なんでも、我々が放っていた間者がかの叛逆姫を発見したとーー」
ズン!
身体に凄まじい圧力が伸し掛かる。
「ほう…それで、何処で見つけた?」
「確か、アネットなる国で…」
「そうか。」
聞けば、アネット小国は大帝国と聖王国の間に位置する小国でありこの辺りでは唯一の非勇者国であるらしい。
ああ、そう言えば…あの女神ヴィーナスが一目置く、傭兵団"竜誓剣団"がその出身だと聞いた覚えがある。
しかし、かの叛逆姫はなぜそのような小国に…
そう疑問に思っていると、先程の男が再び声を上げる。
「あの周辺に…ガレス達が魔物を狩る為に出張っていたな?」
「あー、そう言えばそうだな。そのはずだぜ?」
「ガレス達に任せるのか?」
「ああ…おい、貴様。」
声を掛けられ、びくりと肩を上げる。
「は、はい!」
「今すぐにガレス達に伝言を伝者鳩を送れ。」
「は、ははぁ!」
伝者の男はすぐさま、部屋を飛び出して高台から鳩を送る。
その鳩の行き先は…
アネット小国の近郊にある、大帝国の領地ブルターニで騎士団を率いて突如として発生した魔物を狩っていたガレスの元へと届いた。
騎士団に指示を出し、ガレスは鳩が咥えていた羊皮紙を受け取る。
朱印を外し、手紙の内容を確認する。
「ほう…」
その内容を一通り確認したガレスは、隣に居たもう一人の大槍を担いだ騎士に手渡す。
「なっ!?これは、本当なのですか?」
「ソカモナ。」
その内容は、彼等にとっては驚くべきもの。
『アネット小国にて叛逆姫アルレイヤと思わしき人物を発見。
近郊に居る円卓十剣及び円卓騎士団は直ちにアネットに向かいコレを捕える或いは仕留めよ。
そして、その首を女帝の元に献上せよ。』と。
この手紙を読んだ、ガレスは直ちに自身の直属の騎士団を動かした。
彼と共に居た騎士もまた各々の騎士団を率いて移動を開始した。
純白の猛々しい馬が凄まじい速度で大帝国の領内を駆ける。
様々な方角から同じように騎士達が合流し、同じ方角へと馬を走らせる。
行き先はもはや、言うまでもない。
彼らにとって何が正しいなどどうでもいい。
例え、大陸中に広まっている叛逆姫の話が偽りだったとしても…
全ては己が愛し信じて止まない女帝の為に…彼等ただその為に剣を振るう。
かつての勇士、かつての正義、かつての騎士道。
それら全てを捨てて、彼等は女帝の剣となった。
邪魔する全てを蹂躙しながら、騎士は進む。
叛逆姫の居る、アネット小国目掛けて彼等は駆ける。
だが、彼等は知らない。
かの叛逆姫の元に居る…厄災の化身の逆鱗に触れる事を…
次回から、新しい章に入ります!
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