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第三十二話 三大使徒と勇者達

誤字がありました。

裏蟻×→浦蟻◯



雲母と寧々と合流して、藍那達はもう少し奥へと進む。

今回の目標である其々の魔物の部位獲得は達成したが、それとは別にもう一つ、女神から特別課題が勇者達には出されていた。


「草木竜の棲息エリアは、ここね。」


その課題とは、この遺跡でも強力な力を持つ草木竜の牙を持ち帰る事だ。


女神から渡された地図で棲息地の確認を終え、地図をしまう。

地図と共に渡された生物図で、草木竜の姿形は憶えている。

草木竜は群れで行動する習性があるので、囲まれないように注意しなければならない。


戦乙女(ワルキューレ)の能力である、浮遊剣を上手く使えば私は囲まれても対応可能だ。


此処は森。

木々が四方八方から生えている。

たとえ剣でも闇雲に振れば木々に阻まれてしまう。

慎重に、考えて対応する。


数分歩き、棲息エリアに到達。

そこでふと、違和感を覚える。

気になり、少し進む。

そこである光景を目撃する。


「え…なに、これ…」


由香里が、怯えた声を漏らす。

其処は、緑が覆い茂った森林とは思えない酷い景色が広がっていた。

夥しい草木竜の死骸。


蹂躙、殺戮。


そんな言葉が、頭をよぎる。


「ったくヨォ、手応えがネェンダヨ!弱ぇ、弱ぇ弱ぇ!蜥蜴なんだから、もう少し強くアレや!あー、むしゃくしゃするゼ!」


葛葉末羅の怒号。

森の木々が収束して造られたような洞穴から、魔物の首を両手に持って現れた。

顔や制服には、大量の返り血を浴びていた。

その姿を見た、綾乃さん達は酷く怯えていた。


「うわぁ〜、末羅えぐぅ!」

「殺人鬼みたいー、ウケる!」

「それなー、え?あんたが魔獣だった?」

「流石だな!」


どうやら此処は既に、浦蟻グループに占領されていた。



「うるっせぇよ! ったくよ、もう少し歯応えのある魔物はいねぇのか?」


斧と拳にこびり付いた血を払う。

心底、つまらなそうに魔物の首を踏みつけてそう言った。


「この程度じゃぁ、魔神サマもらくしょーなんじゃねぇの??」


ドガッ、グシャ


地面に転がっている魔物の死体を蹴り飛ばし、踏み潰す。

血や、臓物が飛び散る。

女子は甲高い悲鳴を上げて、末羅の行動を批判する。


「おぉ?鬼龍院じゃねぇか?」


末羅が振り返る。

そして藍那に話を振ってきた。


「なぁなぁなぁ、漆原も姫羅技も鬼龍院もよぉ、オレたちは選ばれた人間なんだぜ?なのによぉ、理解できねぇよ。そんな、ゴミカス共に構うならヨォ?俺達の所にこいヨォ!

愉しいぜぇ、飯も豪華で、部屋もひろくてぇ、夜はコイツらとハメ放題だぜぇ?

しかも、此処は合法的にヤクを決めれるしなぁ!?どうだぁ、オレたちの所にくればぁ、気持ちよく慣れるゼェ?

そんな、ゴミ共はさっさと捨ててよ、こいよ、なぁ?」


藍那は絶句する。

元の世界でも末羅の言葉は気に障る事が幾度とあったが、この世界に来てからヒートアップしている。

此処で反論をすれば、末羅はもっと調子に乗るだろう。

それに、みんなを巻き込むわけにも行かない。


「みんな、行こう。」


葛葉末羅を無視し、皆んなを連れて歩き出す。

その間も末羅を警戒しながら歩く。

漆原さんや姫羅技さんは、末羅やその取り巻きを今にも殺してしまいそうだったので引き離す。

あの末羅の事だ、とんだ気まぐれであの大斧で襲い掛かってきてもおかしくはない。



「ピぎ、ぎゃぁい、アルェぇえ」


魔物の声。

何処か、苦しそうな声だ。


ズリッ

ズリリッ……


現れた草木竜の有様は酷かった。

苦しそうに、身体を引き摺って歩いている。

いや、歩いていると言うよりも…


次に姿を現したのは、暗い森に輝く聖剣を手に持った浦蟻聖也。

その聖剣は、血を浴び真っ赤に染まっている。



「っ!?」


由香里や綾乃達が口もとを両手でおさえ、絶句する。

浦蟻のグループに居る男女生徒の面々も顔を引き攣らせる。

葛葉末羅は、愉快そうに笑う。



草木竜の翼は引き千切られ、手足は斬り落とされ。

身体を必死に引き摺り、匍匐前進のような体勢で裏蟻から逃げようと踠いていた。


悲鳴にも似た声を上げる赤眼の魔物。


「弱い」


草木竜を見下ろし、笑顔で魔物に声をかける。

聖剣を握る手に力を込めて、ゆっくりと歩いてくる。


 ザクッ


草木竜の腹に剣を突き刺す。


「ぃぎ、ぁぁあ!」


絶叫する魔物。


「苦しいかい?」


必死にもがき、逃げ出そうとする魔物。

見るに堪えない光景、不愉快な光景だ。

相手は、魔物。

それでも、限度はある。


「聖也くん?」


一人の女子が、恐る恐る声を掛かける。


「ちょっと、や、やりすぎじゃね?」

「いいかい君達、女神様は魔物が如何に残虐かを聞いた筈だ。少し甚振った所で問題ないさ、それに女神様はやるならとことんやれと言っていたじゃないか。」


浦蟻は、そう言って魔物の腹を更に斬り刻む。

 血飛沫が舞い、魔物の絶叫が響く。

ギャアギャアと、聞くに堪えない声で。


「ま、もうそろそろ良いじゃねぇか。さっさと殺しちまえよ。」

「そうだね、もう飽きたし。」


腹に刺さった聖剣に魔力を込める。


「ギ、っ!?」

「さよならだ。」


聖剣が光を放ち、草木竜は内部から破裂した。


 ブシュゥ!


魔物は血と臓物を噴出させ、息絶えた。


「歯応えがないね、、、さてと、彼女もそろそろ僕の偉大さを痛感しただろう。」


そう、的外れな言葉を口にした。


ーー



 無事に草木竜の牙を入手し、安全を確保しながら藍那達は拠点へと戻る。


勇王国の領地にある遺跡は全て、女神の手によって管理されている。

山岳森林遺跡は周りを壁と結界で囲まれていた。

地上へ出てくる魔物を防ぐための壁と結界。

監視塔もその側に建てられている。

藍那達は、遺跡前の広場へ足を運んだ。

今回の遺跡攻略に於ける、勇者たちの集合場所だ。

広場には別の勇者達のグループの姿もある。

戰慄天城のグループ、下衆太夫のグループ、浦蟻聖也のグループが集まっていた。


一人も怪我人は出なかった。

他のグループのみんなも、目立った怪我は見られなかった。

天気は曇り。

薄暗い景色が広場を覆う。

全員が揃っているのは、久しぶりだ。


椎名霧香先生は、レジーナさんや騎士団のサポート役。

そして、死亡したと思われる出雲龍斗。 


「ん?」


気怠そうに地べたに座っていた葛葉の目に、ある物が映る。


「あぁ、んだアイツ。」


葛葉の声と視線の方向。

クラスメイト達の視線が同じように一点に集まった。

高い壁の上に、一人の女が立っていた。


「蝙蝠…?」


いや、違う…アレは紛れもない人。

あの顔を半分を覆う仮面がそう見えただけだ。

ペストマスクと蝙蝠が合わさったような不気味な仮面。

黒を基調とした身体のラインが浮き出た過激なボディスーツ。

口元は不気味に微笑み、ゆっくりと歩いてくる。

その唇は何処か、血の気が薄い。

黒と灰色のロングヘア。

仮面から覗く鋭い眼光。

過激な服装で一部の男子が卑猥な視線を彼女に送る。


自分にはとても真似出来そうにない服装だ。

拳には、籠手が装着されている。

彼女の何処にも隙がない。


思い込みかも知れないが、レジーナさんと同じような圧を纏っているような気がする。

最も、その在り方は異なっている。

 

「おいおい、なんだぁなんだぁ?おまえ」


葛葉と数人の男子が彼女の前に立ち塞がる。

浦蟻は、ただ黙ってそのやり取りを眺める。

下衆太夫達は、下卑た会話を繰り広げ楽しそうに眺めている。

戰慄天城は、この光景を見て不思議そうに呟く。


「んー、誰だあれ。女神サマの知り合い?んま、どうでもいいけどさ。」


と、心底つまらなそうにしている。

彼女は以前から、少し人とは違う感性を持っている印象がある。

未だに私は彼女がどんな人間なのか分からない。


謎の女性は、その不気味な笑みを浮かべながらクラスメイト達を眺める。

特に、浦蟻、雲母、寧々、天城、藍那を観察する時間が長い。


そして最後に、葛葉。

女が、言葉を発する。


「不合格、失格、失敗、期待外れ。あの女神が期待してるとか言うから見てみたら、なーんだこの怠慢は、怠惰は、愚鈍は…脆弱、軟弱、貧弱、ほんとうにつまらない。」


と、依然不可解な笑顔を見せながら放つ言葉は罵倒に次ぐ罵倒の応酬。

声は低いが、よく通る。

故に、その暴言をハッキリと近くで聞いていた葛葉が反応する。


「おいおい、いきなり来てなんなんだぁ?俺達が雑魚だと?もう一度、行ってみろヤァ!?」

「いいでしょう!ええ、いいでしょう!いいか、よく聞け、そのクソみたいな耳の穴をかっぽじってよく聞け。テメェらはゴミだ、雑魚だ、私の足元にも及ばない無能だ。んま一人か二人、見応えのあるやつもいるがなぁ?」

「てめぇ、死にてぇのか?」


葛葉から殺気が漏れる。

拳に、魔力が収束してゆく。


「なら、試してみるかい?ま、君達の脆弱さが露見するだけだがね。」

「おいおい、本気かよ。ブハハ!本気で俺様に勝てると思ってんのか?面白れぇ、いいぜやってやるよ!

その余裕ぶっこいてる笑顔を絶望に変えてやるよお!俺様が完膚なきまでにボコしたら、なんでも言う事聞いてもらうがな!」

「いいでしょう!もし仮に私が君に負けたならば~、性奴隷にでも、いいや、肉便器にでもなってあげますよ!」


女は、更に挑発する。

既に葛葉の怒りは頂点に達している。


「君の名前は?」


「あ?葛葉末羅だ。てめぇは?」


「ああ君が…私は、ヴィーナス勇王国"三大使徒"が一人。『死徒』レーヴァです。以後、お見知り置きを。」


三大使徒?

確か、女神が誇る勇王国の最高幹部の総称だった。

だとしたら彼女は…


レーヴァが、腰に装備した短剣で自身の喉を割く。


その光景に、女子の悲鳴が飛ぶ。


大量の血が空を舞う。

同時に不思議な事が起こる。

空を舞っていた血がピタリと固まり、収束し形を成す。

それは、真っ赤に染まる剣へと成り代わる。


葛葉が両拳を叩く。


「はっ!気持ち悪い能力だなおい! まぁいい!行くぜ? 死んでもしらねぇからなぁ!!!」


葛葉が大地を蹴る。

凄まじい速度で間合いを詰めると、その拳を振り下ろす。

しかし、その拳は彼女の剣に阻まれる。


「な、んだぁ?うごかねぇーーうお!?」


葛葉の身体が宙へ浮く。

レーヴァの武器が変形しハンマーへと変わる。

葛葉は、咄嗟に防御体勢を取るが彼女の一撃はその防御の上から容赦なく襲い掛かる。


「が……ッ!? ぅぐ、ぐ……っ!? 」


地面に叩きつけられ、動けない葛葉。

防御に使った腕は、鎧が砕け、痙攣を起こす。

葛葉は、口から血を吐き、苦しそうにしている。

一方のレーヴァは、薄ら嗤いを浮かべ見下している。

傷一つ、埃一つ、ついていない。

先程の武器は変え、斬り裂かれた筈の喉は元通りになっていた。

彼女を見る浦蟻の笑顔は消えている。


強い……その一言に尽きる。


動きも洗練されていた。


「おっと、本来の目的を忘れていた。んじゃ、王都へ帰えるぞー。それとー、伝言。」


何かを思い出したようにして、そう言った。


「おめでとう。君達はようやく次のステップに進むようだ。」


この話が面白い!続きが気になる!と思ってくださった方は是非、評価や感想を宜しくお願い致します!


次回の更新は、来週の火曜日を予定しています。

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