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第二十八話 願わくば、2度とこの世に生まれて来ない事を

3階層へ降りて来た。


気配察知には、何も引っかからない。

前方への後方への警戒は怠らない。

神殺ノ遺跡ではひどく背後や前方に神経をすり減らした。

何処にいても必ず化け物が襲ってくる遺跡だったので、気配察知は研ぎ澄まされている。


「よし、進もう。」


2人にも魔物の有無を報告する。

ま、俺がするまでもないと思うが。


迷宮攻略は今のところ順調だ。

地図が無い中で、神龍眼の力で進むべき方向を示す。

また、層の全体図の把握も出来ているので何処がハズレで何処が当たりかもわかる。

階層の地図を、羊皮紙に羽ペンで書いていく。

新層のマップを白紙部分を埋めていく。

上手く新層部が埋まればその地図が高値で取引される。


魔物の方は、依然問題なしと言える。

あの遺跡には現れなかった、新しい魔物。

が、危険度や強さで比べれば神殺ノ遺跡の魔物とは雲泥の差。

弱かった、弱すぎた。

ただ少し殴っただけで、身体が弾け飛ぶ。

ステータス補正の恩恵か或いは魔物が脆すぎるのか。

おそらく、両者。

魔物は、隻眼は1匹も見かけなかった。


異界大全には迷宮や遺跡の魔物は大きく三つの習性に分けられていると。


下の階層に潜ってその場所に留まる魔物。

上へ上へと登って来る魔物。

地上から定着した魔物。


弱い魔物だけがのぼってくるわけではなく、強い魔物ものぼってくる。

確かに、神殺ノ遺跡でも階段を下っている途中に魔物と遭遇した。

つまる所、階段間を魔物が移動できない何かが無い限り、魔物は強い弱い関係なく上がってくる。

その強い魔物と弱い魔物が争い、強い魔物が増える事で上層探索が進められない。


なので強い魔物は大抵、名高い傭兵や冒険者が駆逐する。

上層の強い魔物の駆逐のみをギルドが直接指名依頼をするケースも少なくないらしい。

強い魔物は、個としては強いが種としては脅威ではない。

しかし、弱い魔物は個としての力がなくとも種としては強い。

弱い魔物は基本的に探索時に無視される事が多い。

何故なら、経験値にもならないし、素材としても安値で価値が低い。

 結果、弱い魔物が上層に溜まる。

それらは一つの群れとなり、脅威へと成り代わる。

そう、記されている。


他の傭兵や冒険者との接触は避けて進んだ。


一応、3人とも仮面を付けているが万が一もある。

正体がバレる事は避けたい。


「さてと。」


 階段を降りる。


「ここが、5階層か」 

 

5階層へと到達した。

俺達は、そのまま先へ進んだ。


「…………」


どうしても神殺ノ遺跡と比べてしまう。

難易度が低いというのもそうだが、、、何より緊張感がない。

あの胃液を吐きそうになるほどの緊張感が全く感じられない。

なので、どんどん進んでしまう。

この迷宮自体のレベルは高いのか分からないが、他の傭兵や冒険者は苦戦を強いられているようだ。


「シぃゲぇェぁァあアあア!」


鎧や斧を武装した豚鬼オークの群れが襲いかかってきた。 


「『動く事を禁ず(レームング)』」

「お、ぇ……?」

「潰れよ。」


俺が動きを封じて、二人がトドメを刺す。

魔物の死骸はなるべく、壁側に運ぶ。

通路の妨げになるのを避けるためである。

3人で、ビーフジャーキーを齧る。

特に、2人は美味しそうに平らげる。

 水筒に入ったお茶を飲む。


「ふぅ」


魔物の死骸に目を向ける。

神殺ノ遺跡の怪物たち。

ヒュドラやスカルキング。

栄光の渇望者(デジールグランツ)と呼ばれる5人組の傭兵。


あの遺跡の怪物やあの五人組が強いのはその場でわかった。

纏う魔力や持っている雰囲気だけで、強いと理解出来た。

しかし、この迷宮に住まう魔物には今のところ何も危機感も強さも感じない。


「止まれ。」

「「?」」


人の気配。

複数人の男女。

静かに、壁に背を預ける。

俺達はひっそり聞き耳を立てる。

彼等の会話が聞こえてくる。


「――あんたら…『強欲の手』じゃねぇか?」

「ああ、そうだ。」


少し顔を出し、様子を覗く。

アイツは…冒険者ギルドで粗相な振る舞いをし俺達に叩きのめされた勇者国の奴らか。

ハーゲン、と名乗っていたか。

他の奴等は、知らない顔だ。

 低い声で、髭男が話す。


「おれたちになんか用か?」

「実は、同じ勇者国として頼みがある。」


残りの2人の容姿は、髭男にデブ男。

奴等も勇者国の冒険者だとリーゼスさんに聞いたな。

 顔を見合わせる。


「さっきの、見てたぜ? お前達みたいな実力者ならこの迷宮の魔物なら簡単に殺せるだろ?

そんなお前達が、俺達に何を頼むってんだ?」


 髭男が興味深そうな顔で問う。


ガハハハ!と『強欲の手』リーダーのハーゲス達が下卑た笑みを見せる。


「最近、俺達に逆らう生意気な3人組の冒険者が居てな?そいつらに、報復をしたいんだ。」

「殺すのか?」

「ああ、殺す」

「あの3人組か。」


少し迷った様子の二人組。


「報酬は?」

「ああ、報酬は…あのガキが両隣に侍ている女2人と金貨だ。」

「へぇ、そいつは良い。」


その報酬内容を聞き、デブ男と髭男は目の色を変える。


「ガキは、手足を切り刻んで魔物の餌にする。女は、まず痛めつけて手足を切り刻む。」

「そして殺す前に、アンタ達全員で使ってあげな。」

「たりめぇだ。生きて捕らえられたら、ズタズタに犯してやる。」

「ぐへへ、ヤッていいんだな!」

「ああ。この件がバレても俺たち勇者国の名を使えば罪は幾らでも揉み消せれる。

アイツらは俺達を舐め侮辱した!だから、この世に生まれて来なければ良かったと後悔させる。奴等の全てを蹂躙し奪い尽くす。」


下衆共が…と、アルが吐き捨てる。

全く、懲りない奴らだな。


「やべぇ、やる気が湧いてきた!……ありゃあ最高の女だったからな!」

「服の上からでもわかる、どエロいカラダしてたもんなぁぐへへへへへ!こいつは是非とも生け捕りにしてぇ、犯してやりてぇ。

「早く、見てぇぜぇぇ、…あのガキの目の前で自分の女が無理矢理犯された時の、絶望した顔が見たくてたまらねぇ!」


大男は、冷静だった。


「気を付けろよ、奴らは手練れだ。油断していたとは言え、俺達を退けたんだからな。」

「確かにな。だが、アイツらもこの迷宮攻略で疲れ切っている筈だ。背の低い女の方は、少しフラフラと歩いてた。

俺達の状態は万全だ、俺達だけでも勝てるが、万が一を考えてだ。」


驚いた、まだ勝てる気でいるのか。

身の程を知らしめてやった筈なんだけどな。

冗談で言ってるのか、それとも本気でそう思ってるのか。


拳と拳を突き合わせる髭男。

大斧を振り回すデブ男。


「まぁ、俺たち勇者国最強の傭兵相手にあのガキ共が勝てる道理はねぇさ。

それにアイツらだって、俺達勇者国の人間に手を出したらどうなるかなんて分かってるはずだ!」


やれやれ、どうやら本気でやるつもりらしい。

自分達が最強だと信じて疑ってないのだ。


「奴らの目的は、あの"龍の雫"に違いない。なら俺達は奴等よりも早くその至宝がある部屋で待ち伏せをする。

奴らが龍の雫を手に取ろうとした瞬間に全員で襲い掛かる!」

「いいわねぇ!」

「流石の奴等も不意打ちには反応出来ないだろうな。それに、疲れ切った状態で俺達と事を構えるのは難しいだろう!」

「ガキは痛め付けて、手足を切り落とす。そしたら、女どもをガキの目の前で犯す。」

「身体も心もぶっ壊れるまで犯し続ける。2度と下が使い物にならない位に犯しまくる!んで、ガキを殺した後は、娼館に売り渡す!」


盛り上がるクズども。

会話のボルテージは既に最高潮らしい。

よくもまぁ、こんなにも俺達を不愉快にさせられるものだ。


そろそろ、限界だな。


俺達は、物陰から姿を現す。


「随分とまぁ、楽しそうだな。」


この湧き上がる憎悪と怒りを吐き出さずには要られない。

奴等は化け物だ。

そう、怪物だ。


人の皮を被った、悪魔。


なら、良心は痛まない。


いや、初めから俺には良心など存在しない。


 

ハーゲンが俺達の存在に気付く。


「あ……?おいおいおい、まさかこんな所で遭遇しちまうとはなぁ!ちょうど良かったぜ。」

「おまえら…救いようがないよ。」


ハーゲンを含めた全ての塵芥共が血走った目で俺を睨みつける。


「あ"? この俺様達になんて口利いてんだガキがぁ! やっぱテメェは、ぶっ殺す。謝ってもゆるさねぇ!ぶっ殺す、お前の全てを奪ってぶっ殺す!」

「そうよ!生意気なお前達は全員、アタイ達の玩具として殺されるのよ!光栄に思いなさい!」

「俺たち『強欲の手』が本気出せば、ヴィーナス勇王国最強なんだからな!大女、早くテメェをぶち犯したいぜぇぇぇぇぇええええ!!その仮面の下に隠れた顔を涙でぐちゃぐちゃにしてぇぇえええ!その軀を隅々まで蹂躙してやるからなぁぁぁぁぁあ!!」


「「「………………………………………………」」」


「そうだそうだぁぁあ!喜べよ!俺っち達のような高貴なる存在の手で犯されるのだからなぁぁぁあ〜!早く、あのクソガキを殺してぇ、あの女二人をぉ、ぶち犯すぞぉぉぉぉぉぉおおおお!あぁぁあ、滾ってきた!!」

「早く始めようぜ!もうまちきれねぇぇぇええ!」



もはや、奴等の言葉など雑音。


何一つとして、聞こえない。


聞くに耐えない、聞く価値のない、妄言。


もう、一切の容赦も手加減もない。


殺す。


完膚なきまでに殺す。


5人が武器を構える。

緊張感もなく、油断と慢心で埋め尽くされた構え。


「ーー動く事を禁ず(レームング)


ピシッ――


「な、ん、だぁ、、うご、けな、い!?」

「なん、だ……?、何が、起きて?」

「な、によこれぇ!」

「お、い」


だから、こうなる。

神殺ノ遺跡の怪物やあの五人組は、油断も隙もなかった。

しかしこいつらは、隙だらけ


「何を、し……た?」

「さて、面白いことを言っていたな?」


ハーゲンの正面に移動し、顔を近付ける。

そして、歪んだ笑みを向けて囁く。


()()()()って?」


「ひっ――」


短い悲鳴。


圧倒的な殺気の前に、ハーゲン一行はビクビクと怯えて鼻水や涙を漏らす。


「な――な……なんだ、なんなんだ…」

「ああ、その顔だ。恐怖と絶望に染まったその顔が見たかったんだ。」


 今も眼に浮かぶ、奴等(クラスメイト)の顔。


「俺はな、お前達のようなどうしようもない屑どもが何よりも嫌いなんだよ。」

「ひっ!?」

「お前達のような奴を見ていると、この煮え滾る憎悪と怒りがお前達を殺せと雄叫びを上げる。」



"悪"に対する燃えたぎる憎悪と怒り。

そして何よりも、俺の大切な仲間への侮辱。

奴等の口振から、これまでも同じような事をやって来たのだろう。


その中には、彼等に抗った者も居るだろう。

しかし、届く事はなかった。


ならば、この俺が。


名も知らない彼等の為に、奴等を殺す。


完膚なきまでに、生まれて来たことを後悔する程に。


「楽には殺さない。苦しませ、死を願っても死なない地獄を味合わせてやる。

二人とも、手出しは無用だ。思う所はあるかも知れないが、此処は俺に譲ってくれ。」


2人はただ何も言わず、静かに頷いた。


「邪龍魔法ーー『腐蝕の罪鎖(グレイ・プニル)』」


五人の身体に、錆色の鎖が蛇の様に巻き付く。


「う、げ、ぇっ……な、にっ!? なん、だ、ぁ、ぁ……っ」

「ぐ、ぐるじ……っ、身体がぁ、ア…」

「どげ、てぇ…いたぁ、い…」

「助、け、ぇ――」

「じにだく、な"い…」


ジュ、ジュ、、と言う音を立てながら、ハーゲン達の身体が溶けてゆく。

身体の皮が剥がれ、骨が剥き出しとなる。

何の抵抗も出来ず、ただただ地獄のような苦しみの中で死んでゆく。


「チッ…もう少し歯応えが有れば、もっと痛めつけたから殺してやったんだけどな。」


コイツらには、そんな価値はない。


それに、こんな奴等に時間を割くほど暇でもない。


あと数十分は、地獄のような苦しみが奴等を襲うだろう。


「じゃあな。願わくば、もう2度とこの世に生まれて来ませんように。」


この話が面白い!続きが気になる!と思って下さった方は是非、感想や評価を宜しくお願いします!

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