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邪に堕ちし神達の番 〜復讐の焔は、世界をも焼き尽くす。〜  作者: ぷん
二章 地上、到達篇 〜悪意に満ちた異世界へ、込めて〜
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第二十二話 異世界の料理

ふと、目が醒める。


ベッドは思ったよりも眠り心地が良く、すぐに寝落ちてしまった。

ふと、隣と窓際の方を見る。

2人はまだぐっすりと寝ている…なら、もう少し寝かせてやろう。


俺は一人で朝の身支度を終える。

そして、下の階に降りると宿屋の主人が俺を出迎えた。



「ご準備はできましたかリュー様!あら、お一人ですかね?」

「はい。他の2人は後で起きてくると思うので、そのときも宜しく頼む。」

「かしこまりました。では、こちらへ」


洗い場へ案内される。

俺は現在、宿から支給されていた衣服に着替えていた。

それは何故か?

あの遺跡から俺が元から着ていた服は既にボロボロで汚れまれになってしまっている。

だから、洗濯しておきたかった。


洗い場は一階の奥部屋にあるらしい。

流石に俺達が宿泊してる部屋よりは狭いが広い洗い場。 今は朝日が登っていて明るい。

部屋の窓から太陽の光が程よく照らしている。

洗い場を見渡す。

やはり、日本のように洗濯機はないか…ま、当然だな。

壁から壁へ数本の紐が張られている。

紐には幾つもの洗濯物がかかっていた。

衣服、女性用の下着も掛かっている。

これは少し不用心ではないかとも思ってしまう。

盗難被害に遭う可能性を考えたりはしないのだろうか、監視カメラがある訳でもないのに。

よく見れば洗濯物には鈴が備え付けられていた、少しなら盗難防止にもなるらしい。

 洗い場には俺一人。


「さてと。」


俺は予め用意されていた木製の台に洗濯物を並べた。

遺跡で手に入れたローブと通っていた学校の制服。

そして、下着類。

制服はもうかなりボロボロな状態だ。

激しい戦闘の所為で、所々が破れ千切れている。


「始めるか」


洗濯は慣れている。

そもそも、一通りの家事はいつも俺が担当していた。

そのせいか、洗濯などはやるなら徹底的にやらなければ気が済まない。

洗濯機がないが、問題ない。

小瓶を一本、手にする。

緑色の液体が中に詰まっている。

主人の話では、これが衣服を洗う為のものらしい。

石鹸液と言ったところだな。


昨日の晩に、ディナの洗い物も手渡された。

アルは流石に…自分の物は自分で管理したいだろうからな。

出会って間もない男に自分の衣服を触られるのは嫌だろう。

 次に、部屋の隅に置いてあったデカい桶を手に取る。

桶にはびっしりと水が詰められていた。

予め用意しておいてくれたらしい、気が利く。

 石鹸液を桶の水に浸し、手で洗濯物を洗う。

二人分だから少し念入りにしよう。

30分ほど経ち、ようやく終わった。

洗濯物を纏め、宿屋の主人から受け取った物干し竿を手に部屋へと戻る。

 寝ている二人を起こさないように、洗濯物を干す。

一通りの作業を終えた。

 

ギシッ。


 ベッドに腰掛ける。


「んん…」


つい気が抜けていた。

アルが目を覚まして起きてしまった。



「あ、リュー殿…おはようございます。」

「ああ、おはよ。」


少し眠たそうに目を擦りながら、ベットから起き上がる。

 可愛らしい寝癖をオマケに。


「俺はこれから少し外出するけど、どうする?」

「…もう少しだけ寝させていただきたいです。それに、ディナ殿を一人にするのも心配ですし。」


チラッとディナの方に目を向ける。

ま、確かに…衣服は着崩れ、胸や局部が少し露わになった状態で寝ているコイツを置いて外に出るのは心配だな。

宿には、2人を見て下卑た視線を向ける野郎は大勢いた。

心配しなくとも大丈夫だとは思うが…万が一もある。

あの宿屋の主人も、特にディナに目をつけていた。

まぁ、少しでもディナに触れたら"殺す"がな。

 

「………」


この街で休息と今後の旅支度は問題ない。

幸いにも、目的地は決まってる。

旅の資金は、まだ余裕はある。

 遺跡でも金になりそうな宝石などを拝借したから安心していい。


目的地は、古の魔女が住まう危険地帯。

彼女と会合し、異界暗文を解読してもらう。

 幻界地帯生と死を隔てる冥門(ハデス)へと向かう。



 少しずつこの世界の情報を知るべきだな。

どうやら異界大全に載っている情報と現代の情報には少し乖離があるらしいからな。

その点で行くとアルならば適任かも知れないが、彼女はまだそこまでの信用を築けていない。



ーー


考えていても仕方ないので、俺は宿の外へ出た。


空は明るい、快晴。

が、大通りを通る街人は何処か昏い。

それでも遺跡に居た時とは大違いだな。

あそこには、あんな食事屋も武器屋もなかった。

それに、治安もそう悪くなさそうだ。

 通りを軽く歩いているが、冒険者が多い。

 街中での武器の携行は認められているらしい。


とある店が目に入り、立ち止まる。

看板のマーク、剣と盾と盃。

 なんの店かは、異世界の小説や漫画を見てるならある程度予想出来る。


武具を扱う武器屋。

道具を扱う道具屋。

衣服を扱う衣服店。

食料を扱う料理店。

そして、酒場。



最初に立ち止まった、店。

かなり立派な建物だ。

出入りする客を見ると、旅人や戦士風の人間が出入りしている。

やはり此処は"冒険者ギルド”だ。


道路を挟んで正面には教会がある。

看板に刻まれている絵は、蜥蜴?いや竜か?

ただまぁ、女神ヴィーナスを表している訳ではないだろう。


「で……」


奥の方。

此処よりも酷く暗く、それでいて卑猥な雰囲気が流れる地区。

スラム街或いは色街か。

 雰囲気でなんとなくわかる。

あそこに行く事はない。


「町の把握はこのくらいか。」


ぐぅぅ、と腹が鳴る。

そう言えば、朝飯を食べてなかった。

宿へ戻るとしよう。



ーー


 俺は今、宿の一階で食事を取る事にした。

正確には2人と合流し、3人でだが。

 この宿は一階の左半分が食堂、右半分は酒場となってる。

俺達は部屋の中央近くの卓を陣取った。

 まず、この世界の料理を本格的に食べるのは初めてだ。


 今日の料理。


何らかの肉の丸焼き。

野菜炒めに、玄米?

 あとは、一口サイズのパンにスープ。


鶏の丸焼きは、宿主のサービスらしい。

まずはスープを、スプーンで掬う。

 ゆっくり啜る。


「おぉ。」


思わず声が出る。

悪くない。

日本でいう所のシチューっぽい風味だ。


一口サイズのパンを摘まんでシチュー風のスープに浸す。

 湿ったパン生地を噛む。


「――――」


やはり、美味しいな。

懐かしい味がする。

2人の方をチラッと見る。


アルは、とても行儀良くまるでお嬢様の様な感じで食事を嗜んでいる。

やはり、彼女は…何処かのお貴族様或いは王族なんて線もあり得るな。

ディナは、俺の食べ方を真似ながら料理を頬張っている。


観察はここまでにして食事を楽しもう。

次は玄米っぽいやつを食べてみる。

へぇ…元の世界の米にかなり近い味と食感。

鶏の丸焼きは、ちょうど良い塩加減が相待って最高だ。


 異世界の料理。

期待していなかったが…なかなかに悪くない。

宿屋の主人が料理を推していた理由が分かった。


料理ばかりを食べていて、水分補給を忘れていた。

 俺は、木製のコップを手に取る。

入っているのは水。

一見するとただの水だ。

少し、口に含む。

 うん、ただの水。


ただまぁ、日本の料理と比べると盛り付けや味付けは物足りない。

だが、満足感はある。

そもそもこの文明レベルで、ここまでの料理を作れるのは素直に賞賛するべきだと思う。

 あくまで今のところは、だが。



料理はまだ半分くらい残っている。

残りはゆっくりと3人で適当な雑談をしながら食べるとしよう。

 この酒場で食べたのは、異世界の料理を知るのと同時に情報を集めるためでもある。

朝の食事どきのためか客の数は多い。

こういう場所でこそ得られる情報はある。

いざとなれば、酒でも奢って同席する手もある。


丁度、食堂も酒場も賑やかになってきた。


ここからが、メインだな。

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