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邪に堕ちし神達の番 〜復讐の焔は、世界をも焼き尽くす。〜  作者: ぷん
二章 地上、到達篇 〜悪意に満ちた異世界へ、込めて〜
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第二十一話 アネット小国

しばらく森を進んで行くと開けた道に辿り着いた。

この先の道は人の手によって舗装されているようだ。

道は、様々な方向に分かれている。


分かれ道の手前で、木の看板を見つける。


”アネット小国、前進"


そう刻まれた看板を発見。

この奥まで続く道を進むと、アネット小国か。

アルの話では、ブリテン帝国とエーレ神聖国の国境付近に位置する小国。

勇者同盟国と呼ばれるものに、属さない数少ない国で人口は他国と比べて少なく活気に満ちている訳でもないらしい。

それだけでなく、アネット小国は少し訳アリとも言っていた。


兎にも角にも、このペースなら今日中に辿り着けるようだ。

先を進む、ようやく人とすれ違い始めた。

服装などを見るに、旅人や商人といった所か?


「お?」

「見えてきたな。」

「そうですね。」

「そう言えば、アンタ顔を変えられるんだな。」


今の彼女は、先程とは全くの別人と言っていい程に容姿が変わっている。

これも、聖霊の加護によって成せる幻術らしい。


ふと、高い城壁が立ち塞がる。

なるほど、小国という割に防壁とかはしっかりしているのか。

簡素だが、街へと続く門も確認できた。

 門番が二人、立っている。

槍を持ち白銀の鎧を纏った、大男が2人。

 手には槍。

 腰には剣を携えている。


「…………」


異世界ぽくて、なんというかいいな。

アニメや漫画で見た非日常。


「さて、行くか。」

「はい。」

「ああ。」


門の方へ歩く。

怪しまれないよう、自然な感じで。

2人の門番と目が合う。


「止まれ。」


片方の鎧を着た大男に呼び止められる。


「む、ここらでは見ない顔だな。」


アルの話では、ここら辺は人の出入りが少ないらしい。

ま、辺りを見た感じそれほど発展している訳でもないから当然か。


「君達は服装から見るに、旅人か?」


思ったよりも、良心的だ。

こう言った類の門兵は、高圧的な者が多いイメージがあったからな。

ま、そっちの方がやり易い。


「ええ、丁度路銀が底をついてしまって…」

「なるほどな。」


門兵は、納得した様子で頷く。


「なら、此処へ来たのは例の噂を耳にしてきたわけか」


例の噂?

一体、何の話なのだろうか。

ここで会話の選択肢を間違えて、ボロを出す訳にはいくまい。

慎重に言葉を選ぶ。


「ええ、そうなのです。」

「それなら、こんな小さな国に訪れた理由も納得だね。ただまぁ、アンタがどれ程の実力者なのかは分からんが、時期が悪かったな。

「いえいえ、私達からすれば小さな国なんてとても信じられない程に発展していますよ。この立派な城壁ときたら驚きました。」

「おいおい、こんな規模で驚いてるのかい?アンタ達は、相当な辺境から来たんだな。」


2人の男門番がそう言って笑う。

うまく、騙せているようで安心した。


「ただまぁ、アンタがどれ程の実力者なのかは分からんが、運が悪かったな。

例の迷宮攻略には、かの()()()()()()()()()()()()が参加するからな…」

「へぇ…」


"勇者"という単語に、少し心がざわついた。

身体を呑み込むほどの憎悪と怒りが、今にも湧き出そうな程に…

アルは、俺の纏った雰囲気が変わった事に気付く。

ディナは、少し溜息を吐き俺の手を握る。

そこでようやく、自分が犯した失態に気付きハッとする。

 

しまった…つい、"勇者"と言う言葉に過剰に反応してしまった。

まだ、奴らかどうかも分からないのに。

門番たちには、悟られなかった。

アルは、少しホッとした様子だ。


「ま、俺達としてはこれから不便な思いをするとなると先がおもいやられるがねぇ…」

「?それは、どう言う意味でしょう?」

「悪いこっちの話さ、気にしないでくれ。」


不便な思いをする事になる、か。


 

「ま、長話もここまでにしておこうか。おい、彼等は通して構わないよな?」

「ああ。例の迷宮探索で集まってきた傭兵や旅人は基本的に受け入れろと隊長から聞いている。」


俺は、彼等に頭を下げる。


「ありがとうございます。」


「最後にアンタらに忠告だ。くれぐれも、勇者国の人間とは揉めるなよ。」

「忠告ありがとうございます。気をつけます。」


その言葉の意味がどういう事かは分からないが、用心しておこう。

俺達は、門を潜る。


意外にも、身体検査や荷物検査はなかった。

それが普通って訳でもないだろう、大きな国ならあるかも知れない。

門を潜ると、すぐに街広場に辿り着いた。

小国と言う割には、発展している。

建物は石造りもあれば、古びた木造りもある。

 広場には、噴水。

時代や建物、風景から推測するに中世の文明に近しい。

街の真ん中には、奥まで真っ直ぐ続く石畳。

石は幾年も人の足によって踏み荒らさ、美しいとは言えない。

煤まみれだ。

よく目を澄ませば、建物もまた年季が入っている。

 人は適度に行き交っている。

通りが埋まるほどとは言えない。

それに何処か…活気がない。

何処となく、俯いて歩いているような…とにかく、不穏だ。


「活気がないのう。」

「だな。」

「……」


アネットに辿り着いてから、アルもまた元気がない。


まぁいい、今は何処か身体を休ませられる宿を探そう。



ーーー


暫く街を歩き、宿を探す。

結果的に、宿は5件あった。


内の3件は、恐らくそれなりに身分が良い者達が出入りする宿。

残り2件は、冒険者や傭兵などそれなりの者達の出入りが多い。

 俺達が泊まるべきは、そっち側。

宿の状態が悪ければ、向こう側に。

取り敢えずは、宿に赴いて宿泊費を聞いてみるか。


「ここは、一泊いくらだ?」

「銅貨3枚ですね。」


銅貨3枚、おおよそ一泊300円か。

破格だな。

アルの情報はやはり正しかったな。

ただおそらく、一番悪い部屋で銅貨3枚って所だろう。

 少し考える。

俺だけなら、古臭い部屋に泊まっても問題ないが…こっちは、絶世の美女と綺麗好きのわがまま女が居る。

汚い部屋に女性を泊まらせる訳には行かないだろう。

 宿泊費は十分払える金額……。

この宿は空いている部屋が、空き部屋しかない。

 俺は構わないが、アルは少し気まずい思いをするかも知れない。


俺達は次の宿へ来た。

 こちらの宿泊費は銅貨4枚。

例の迷宮探索とやらのせいで何処も空き部屋が少ないようだ。

だが、幸運な事に個室にまだ空きがあった。

 早い者勝ちらしいな。

時間も惜しいし、此処にするか。

2人にも、了承を得た。


「ん?」


宿の主人の顔色を伺う。

ふん、明らかに歓迎されてないな。

どうせ、金のない旅人と思われているんだろう。

だが幸いにも、金ならある。


「個室を2つ貸してくれ。出来れば、衣服や身体を洗えるいい部屋を頼む。

それで良いなら、コイツを払う。」


皮袋から銀貨を3枚、宿屋の主人に差し出す。

ソレを見た宿屋の主人は、眼を大きく見開く。

そして主人の空気が、豹変する。


「コレはコレは…了解いたしました!では早速ご案内いたします!豪華なお食事やこの宿でも最も良い部屋をお貸しします!」


金は力なり。

よほど、嬉しかったのだろうか主人は酷く張り切っている。


「あ、そういえばあなた様のお名前は――」

「リューだ。」


ここでも勿論、偽名を名乗る。

本名で名乗ればすぐに身バレする可能性もある。

身分証に類するものが必要な気配はない…あっちでは、何をするにも身分証が必要だったからな。

 適当な名前を考えるなら容易い。


 


「リュー様ですね! かしこまりました!」


 主人が宿帳にスラスラと名前を書き込む。


「こちらがあなた方のお部屋となります。これはお部屋の鍵です。どうぞごゆっくりお過ごし下さい!」


人ってのは単純だ。

金が絡めばもっと単純になる。

現に、ここの宿主は俺達を上客として扱っている。

ま、どうでも良いいがな。


     ▽



俺達は宿泊する部屋に入った。

かなり広い部屋だな。

窓の傍にベッドが一つ、壁側にダブルベッド。

コレは、宿側の配慮らしい。

他の家具も、それなり。

部屋はかなり清潔感がある。

そりゃそうか、一番高い部屋を取ってるからな。

荷物をクローゼットに置き鍵をかける。

廊下に人の気配がないのを確認し、2人と今後の事を話し合う。


「ようやく一息付けるな…」

「ええ、そうですね…」

「ディナに関しては、寝てるのかよ。」


大きいイビキを掻いて気持ち良さそうに寝てやがる。

緊張感があるのか、ないのか分からん。

ただまぁ、空気が和んだから良しとしよう。

俺は、神龍鎧装を解除し素顔を露わにする。


「それは…私を信頼して、でしょうか?」

「まぁな。それに俺はアンタの素顔を見てるし、これでフェアだ。」

「そう、ですか……」


ん?

彼女は、ずっと俺の顔を凝視する。

変なものでも付いてるのか?


「どうした?」

「い、いえ…なんというか、随分と子供っぽく…その、可愛らしいと言いますか…リュー殿は、お幾つなのですか?」

「ん?15歳だぞ。」


暫し、沈黙が流れる。


そして、その沈黙を破るかのようにして彼女の驚いた声が響き渡る。


「じゅ、15!?想像以上に、若かった…」

「そう言うアンタは…いや、女性に年齢を聞くのは失礼だな、忘れてくれ。」

「んん〜、とても15歳には見えない…女性の扱いがうまいのですね…」

「そうか?ま、そうなのかもな。ま、取り敢えず今日は寝よう。

今後の事は、明日にでも話し合えば良い。」

「そうですね。では、おやすみなさい。」

「ああ、おやすみ。」


おやすみ…か。

随分と久し振りにこんなやり取りをしたな…

さてと、俺も寝るか…


その日の睡眠は、とても心地よく不思議といい気分だった。


ドラゴンズドグマ2を買ったんですけど、楽しすぎて小説の存在を忘れてました。

ごめんなさい。

もう少しだけドグマ2をやり込んだら、集中します。

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