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邪に堕ちし神達の番 〜復讐の焔は、世界をも焼き尽くす。〜  作者: ぷん
一章 異世界召喚篇 〜追放と絶望を添えて〜
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第十三話 決着

『さぁ…最終ラウンドと行こうか。』


尋常ならざる圧が身体に伸し掛かる。

姿は歪なれど、奴が纏うその膨大な神気と龍気は間違いなく神龍鎧装だ。

コレこそが奴の切り札なのだろう…奴は最終ラウンドと言った。

お互いに満身創痍って事だ。


「ああ、来い!」

『行くぞ、人間!』


刹那ーー奴の姿が掻き消える。

直後、ヒュドラは俺の間合いを一気に詰め、異常に発達した巨大な右腕で俺の顔面を撃ち抜いた。

辛うじて反応したが、顔の大半を失いその肉片が飛び散る。

体勢を立て直す暇もなく、奴の巨大な剣と化した腕が俺の身体を深く斬り裂いた。


俺も負けじと、反撃の一撃を繰り出すが容易く避けられてしまう。

全く動きが見えなかった、死ぬ度に強くなっている筈なのにまだ差が縮まらない。


『終わりか?』

「言ってろ。」


受けた傷が再生し、何度目かの身体能力が重ねがけされる。

体勢を立て直し、大地を蹴り奴に向かう。

単調な攻撃では奴には通じない、なら俺がやるべきは…


『ぬぅ!』


一撃目の蹴りはフェイント。

ヒュドラは、殺意の籠ったフェイントに引っ掛かってしまう。

その隙を突いてリュートは自身の本気の一撃を何重にも重なった胸の装甲目掛けて放つ。


「絶技ーー『破塊』」


強烈な一撃が、ヒュドラの胸に直撃する。

鈍い音を立てて、ヒュドラの身体は後ろに飛ぶ。

そして次の瞬間ーーヒュドラは、自身の身体に凄まじい衝撃を受け夥しい程の血を流す。

何重にも重ねられた装甲が幾重か割れ、膝をつく。


『今のは…』

「神龍鎧装、絶技『破塊』は、触れた相手のありとあらゆる器官を破裂させる技だ。

本来なら、即死なんだがな…」


流石は、神の位に立つ毒龍。

あの技を受けても尚、死ななかった。

再生能力は落ちているものの、やはり神核を潰さなければ倒せないのか。

おそらく、奴の核は他の装甲よりも何倍も堅い胸の部分か。

狙うのは、そこだな。


『舐めるなよ、人間風情が!』


ドン!と、ヒュドラが大きく大地を蹴る。

そして、先程よりも夙く鋭い一撃を繰り出す。


「絶技ーー『撃堕槍』!」


全てを穿つ槍となった拳がヒュドラの放った巨腕と真正面から激突する。

荒々しい轟音が轟く。

地面がひび割れ、凄まじい衝撃波が巻き起こる。


「がァァァァァァァァァァァァア!!」

『ヌゥワァァァァア!!』


互いの咆哮が響く。


そして、凄まじい殴打の応酬が繰り広げられる。

防御を捨てた意地と意地のぶつかり合いは、壮絶を極める。

腕が千切れ、顔が潰れても尚、リュートは止まらない。

幾重にも重なった装甲が崩れても尚、ヒュドラは止まらない。


『ぐぬぅ!』

「ッ!?」


最後に、互いの渾身の一撃が交差し2人は同時に吹き飛ばされる。

リュートは壁に衝突し、身体が潰れ圧死する。

ヒュドラは、己の剣腕を地面に突き刺し衝突を免れる。


リュートは再びこの世に生をなす。

だが、傷は治れど受けたダメージは蓄積する。

身体は悲鳴を上げ続けている。

そして、その蘇生も無限ではない。


『死ね!ーー『神の裁剣』!』


ヒュドラが己の剣腕を横に薙ぐ。

その衝撃により発生した巨大な斬撃がリュートに向けて襲い掛かる。

音速を超えて放たれた斬撃は、無慈悲にもリュートの身体を縦に両断する。


『何度でも蘇るのならば、何度でも殺すまでだ!ーー『神の裁剣』!』


その叫びと共に降り注ぐは、無限の斬撃。

一分一秒の隙間なく、止む事なく、降り注ぐ。

身体を切り刻まれ、命を絶たれても尚、リュートは諦めない。


「我、神よも虚へと変える者なりて

ーー邪龍魔法!

   ーー『神虚の龍燐(カヴァーチャ)』」


神龍鎧装による防御でも足りないのなら、魔法で補えば良い。

一瞬だ、一瞬だけでも奴の攻撃を防げるのならば問題ない。

地を蹴り、駆ける。

その身に、数多の斬撃を受けながらも奔る。

纏った魔法が破られ、神龍鎧装をも断ち切られても奔った。


『なに!?』

「ようやく隙を見せたな!貫けーー『龍撃槍』!」

『ぐがぁぁあ!?』


その一撃は正に会心の1発。

まともな防御体制を取る事が叶わず、死角から放たれた渾身の一撃は見事にヒュドラの腹部を撃ち抜いた。

大気を震わす衝撃と共に、ヒュドラの身体は激しく後方に吹き飛ばされる。


リュートの追撃が息をする間も無く襲い掛かる。


「絶技ーー『神墜』」


ヒュドラを蹴り上げ、地を蹴る。

空中で右手に黒紫の焔を纏い、頭部を掴みそのまま勢いよく急降下する。

脚部に装着されたマフラーにエネルギーを爆発させ、加速する。

それは正に、一つの流星の様にして地に堕ちる。


辺り一体を覆い尽くす程の砂塵が舞う。


リュートは少し距離を取り、警戒しながら砂塵が舞う方をジッと見る。

やがて、砂塵が晴れ影が姿を表す。


『ぐっ、…が、おの、れぇぇえ、、、』


左腕があらぬ方向に曲がり、片足が千切れ、幾重にも重なった装甲は見る影もなく崩れ落ち、その胸部には一振りの短剣が突き刺さっていた。

神核が砕かれた、神としての力の大半を失った。

誰がどう見ても致命傷。

あと、数分もすればヒュドラは消え去るだろう。

されど、ヒュドラはその恐るべき執念と生命力で立ち上がる。


「っ…」


脚が震える、立つ事さえようやくだ。

これまで蓄積してきたダメージが、遂に限界を超えてきた。

少しでも気を抜けば、意識を失ってしまいそうだ。


お互いに満身創痍。


決着は近い。


『よも、や。我がここまで追い詰められるとは…戻れ我が分体よ!……な!」


ヒュドラは、分離させていた自身の分体を呼び戻そうとしたが反応がない。

慌てて振り返ると、そこには…


「残念だったな。貴様の分体達は既にこの通りだ。」


邪の龍によって無惨な姿となった、スチュパリデスとラドンの死骸があった。


有り得ぬ…アレは曲がりなりにも自分と同等の力を有した存在だった。

それを、あの弱体化し更には手負の邪龍神はたった一人で完封したと言うのか?

なるほど…もはや、打つ手は無しか。

ならば、やる事は一つ。


『見事だ人間、其方の名を聞こう。』

「俺の名はリュート。邪神龍ヴォーディガーンのただ一人の番にして、この世全てを呑み込む災厄の龍人だ。」

『ならば、リュートよ…コレで、最後だ。』


ヒュドラの雰囲気が変わる。


色濃い神気と紫電を纏った龍気が収束する。

大気が震えて、大地が割れる。

圧倒的な力の奔流が、ヒュドラを包み込む。


リュートもまた、同じく。


神龍鎧装に己の全ての魔力を注ぐ。

大地が雄叫びを上げ、大気が竜巻を起こす。

膨大な力の塊が、リュートの周りに収束する。


『我が生に於いて、最強にして最高の好敵手にこの一撃を捧げよう。

我が名は、神殺ノ毒龍(ヒュドラ)


ーー我は厄災 この世界に無限の苦痛と悲痛を堕とす龍

 ーー遍く毒は 大地を枯らし 大気を穢し 海をも溶かす

ーー恐れよ 慄け 泣き 叫べ そして讃えよ

 ーーさすれば その命 有りと有らゆる全てを 蹂躙しよう

ーーさぁ 己が命とその全てに別れを告げよ!

 ーー声高く嘆くが良い! この一撃を以って 汝が命は無へと帰す』


「ーー原初たる神龍は 邪に堕ち無へと失墜し その名は消えた

ーーかつての誇り かつての誉れ かつての己は 永久に忘却した

ーーされど 嘲笑う歌声 降り注ぐ神罰 終わらぬ苦痛は消えず

ーー我が憎悪 我が執念 我が怨念はこの身を灼き尽くす

ーー幾千幾万の時を経て 我が悠久の望みは叶うだろう

ーー我が名を忘れ 我が身を捨て去りし 地に脚を踏み入れた時 世界は再び我が威光を知るだろう

ーー我が名は、怨嗟ノ死龍(ペイルライダー) 

ーー汝の屈辱 汝の無念 汝の執念を礎に此処に顕現する龍である。

ーーさぁ 深き絶望と終わらぬ苦痛の中で その身に我が名を刻め



『ーー『毒龍地獄世界(ドラゴブレス)』!!!』

「ーー『龍名、怨嗟ノ死龍(ペイルライダー)』」


同時、互いの全てを掛けた最高の一撃が放たれる。


有りと有らゆる悉くを溶かしながら迫り来る黒紫の波動砲と全てを蹂躙し灼き尽くす漆黒の焔砲が衝突する。


凄まじい衝撃音。

此処が、地上で有れば被害は計り知れないだろう。

現に、圧倒的な力のぶつかり合いによって遺跡は崩壊を始める。

力は拮抗し、一歩も譲らない。


刹那。

ヒュドラの身体が、次第に崩壊を始める。

神核を神殺しの短剣によって砕かれ、その力が徐々に弱まる。

拮抗していた力のぶつかり合いに、終わりが見え始める。

一歩、また一歩と迫り来る死。


『ぬ、ぬぅォォォォォオオオオオオオ!!!』

「あァァァァァァァァァァァァア!!!』


リュートは更に、魔力を爆発させる。

限界を超え、神龍鎧装の維持もままならなくなる。

鎧は徐々に崩壊し、目や鼻、腕や足の血管が破裂し血が噴く。

それでも尚、彼は止まらない。


そして遂に…リュートの一撃はヒュドラの一撃を飲み込み、ヒュドラ自身をも呑み込んだ。

神々をも灼き尽くす焔が、ヒュドラの身体を包み込む。


『み、ごと…』


やがて、ヒュドラは跡形も無く消し炭となった。


「はぁっ、はあっ…」


勝った…だが、勝利の余韻に浸る暇はないようだ。

意識が段々と薄れ行く、身体は遂に限界を迎えた。

足元も覚束ず、立つ事すら忘れて力無く倒れ行く。

最後に目にしたのは、ディナが俺の身体を大切そうに抱き締め涙する姿。


そして


「良くやった。」


そう聞こえた、気がした。






ーー


目が醒める。


「おはようリュート。」

「おはよう、ディナ。」


彼女に支えられて立ち上がる。


改めて、俺たちはヒュドラに勝ったのだと安堵する。

強かった…龍ノ番が無ければ俺は何も成せずに死んでいた。

だが、コレで終わりじゃない。


ようやく出発点に立ったのだ。


ステータスを確認する。


====================================


リュート・イズモ (15)

種族:半龍半人

性別:男

レベル:7

攻撃力:450000(+α)

耐久: 300000(+α)

敏捷:250000(+α)

魔力:450000/450000

幸運:100000

固有スキル;【邪神龍の権能】・【復讐者】・【邪神の眷属】

保有スキル:【神速】・【対魔力・神】・【龍神の寵愛】・【神龍鎧装】・【龍圧】・【龍ノ番】・【神龍眼】・【邪龍ノ怨恨】・【龍気爆発】・【気配察知】・【邪龍ノ呪】・【邪龍魔法】・【毒統者】NEW

称号:【龍神の番】・【龍殺し】NEW


====================================


3レベルも上がった。

地上ではどれ程の強さかわからないが、油断も慢心もしない。

まだまだ、強くなれる。


そして、思い掛け無い収穫もあった。


ヒュドラの神性を奪った短剣は、その力を失ったが今度はヒュドラの毒を取り込んだ毒剣へと姿を変えた。

これは使えると思ったので、戦利品として持っておこう。

新たに得たスキルとの相性も良さそうだしな。


そして、アルケイデスの遺品もしっかりと持った。


「取り敢えず地上に出よう。」

「そうだな。ようやくだ。」

「ああ。」


戦利品を手に、地上へと続く扉に手を掛ける。


俺達を出迎えたのは、待ち望んだ温かな太陽の光だった。

そして空は、俺の暗い心とは裏腹に青く澄んでいた。

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