私はヒロイン。真の聖女を追放し、王子様と添い遂げるの。なにか文句ある?
設定。
マリウス。王子。顔かなりよし。体力あり 頭ごめん。意外と素直。一応、聖女がいなくなると困ることはわかっている。でも、イシュタルにぞっこんなため、言われた通りにしている。
ライ。騎士団長の息子。顔よし。体力バカ。頭硬い。マリウスを守るためなら何でもする忠誠心の塊。イシュタルに、王子のため、と言われて追放に加担する。イシュタルは、美人だか、頭がいいから敬遠している。
リフ。宰相の息子。顔よし。体力普通。頭よし。王子に借りがあるのでついていくスタンス。とはいえ普通に考えるちからはある。イシュタルに、王国の危機のためと説明も受けたため協力している。イシュタルに、何か得体の知れないものを感じ敬遠している。
エスト。公爵令嬢。聖女。顔芸術品。体力そうなの。頭よい。けど鈍い。聖女の仕事、王子妃候補の教育。学校の教育。魔道具づくり(販売は家の者がやっている)。全てを高いレベルで完遂する最強聖女。マリウスとは婚約者だが、忙しいのであまり会わない。会っても疲れているのでぼーっとしてたり、不機嫌だったり、不満を言ったりしているので王子もあまり良く思ってない。なるべくなら、人との付き合いは少なくして自分の仕事を優先する
「エスト公爵令嬢、貴様がイシュタル候爵令嬢をいじめ抜いた。そのような心掛けでは国母になるなど言語道断。ここで婚約を破棄する。更に罪を償いこの国から出ていけ」
ここは王国の卒業パーティーの会場。そこて王太子のマリウスは、婚約者のエストに婚約破棄をいいわたした。
「わかりました。しかし、不義理はあなたの方ですよ。それに私たちの婚約は国王の勅令ですよ。宜しいのですか? 」
「かまわない。出ていけ」
「はい。わかりました」
エストは堂々と出ていく。元々王子との仲は良くない。むしろ嬉々としてパーティー会場を出ていった。
「……イシュタル、此れでいいのか?」
少し不安げにマリウスが尋ねる。後ろの腹心二人、ライとレフも不安そうだ。
イシュタル侯爵令嬢。マリウスの最近の彼女である。この、追放劇も彼女が仕組んだものなのだ。
その様子を見て、イシュタルは、自信ありげに答えた。
「なに言ってるんてすか。覚悟の上でしょう」
王子はうろたえる。
「し、しかし、エストは聖女なのだろう。大地の豊穣を司っている。収穫量が減る」
少なくとも王からこの婚約の意味を聞いている王子。さらに。騎士団長の子息
のライも愚痴った。
「この国全体をおおう聖なる結界も聖女がいなければ直に効力をうしなう。そしたら魔物が山のように襲ってくる」
宰相の息子レフも焦った様子で答えた。
「聖女でなくとも、彼女の持つ商会は魔道具の生産で群を抜いている。勝ち目はない。それに、外国に奪われたりしたら王国の経済に大きな痛手だ」
イシュタルは、にこやかにこたえる。
「はい、よくできました。確かにその通り。聖女のエストがいなくなり、農業に、軍事に大ダメージ。エストの商会も王国に協力しないでしょうからその損失金はかなりのものでしょうね」
「そう、王国はかなり弱体化する。国としては問題だ」
王子の台詞にイシュタルは答えた。
「そうね、でも、たった一人がいなくなるだけでガタガタになるなんて、おかしいわ。いびつなのよ。だから分かるでしょう? 彼女を国から追い出すのが必須なこと」
「確かにそうだ。しかし、エストにはこの国への忠誠心が高かった。その為に何ら問題はなかった」
「でも、色々な仕事で手一杯。余裕がなかった。それが証拠にちょっと煽られてすぐ逃げたじゃない。対抗しようとも思ってないわよ。唯々諾々と従わずに、自分の待遇をよくしようとすれば良かったのに。ただ、言われた通りにしてるだけ。まあ、優等生よね。でも、それじゃだめでしょ」
イシュタルは呆れて言った。さらに続ける。
「だけど、エストが自己主張したら、それはそれで困るわ。彼女の能力では、誰も対応できない。どんなことを要求されても答えねば困ったことになる。へたしたら、彼女がこの国を牛耳るかもしれない。それよりは、彼女がいなくなってもなんとかする体制を整えるべきだわ。幸いまだ間に合う。国力が落ちても、それはしかたないわ。それに、少なくともどうなるか、予測できているから十分ではないかもしれないけど、対応できるわ」
「しかし、彼女を野放しにするのか? どの国に行くかわかったもんじゃない」
王子のぼやきに、イシュタルは、笑顔で答える。
「それは大丈夫、隣の帝国にいくわ。あそこの第二皇子と仲が良かったもの。多分、家ごと向こうにいくんじやないですか?」
王子は怒鳴った。
「帝国の国力がさらに上がるじゃないか!!」
「つまり、帝国は、自ら弱点を作るということね」
イシュタルは、はあ、とため息をつく。
「国力を必ず上げる人材よ。かなりの防備を行うわ。まあ、監視も兼ねてね。帝国の最重要人物。守備の重点が増えるわ。混乱もするでしょう。そうなれば自由もある程度制限される。聖女としての能力はともかく、商会経営者としては能力下がるわね。鳴り物入りではいってきたけど、大したことないと印象付けできるわ」
え? といったかんじで王子たち三人は顔を見合わせる。
「普通、こう言うふうに引き抜かれた場合、100%の成果でやっと普通。それ以上の成果でないと評価されないのよ。それにこっちからも手を打つわ」
「どうするんだ?」
イシュタルは笑う。
「彼女の知り合いや召し使い、腹心なんかを帝国に送り出すのよ。私たちが支援してね」
「帝国に優秀な人材を送るのか? 彼女の知り合いは、かなりの能力を持つぞ」
「それでいいのよ」
イシュタルは、満面の笑みを浮かべる。
「たとえ王国に疎まれたとはいえ、優秀な人材を、その王国が支援して帝国に送り出すのよ。何かあると思うわよ。もし、それをクリアしても、今度は聖女の勢力が増える。そしたら帝国の、特にトップの辺りは気が気じゃないわね。勢力図か変わるわ。そうなると帝国国内の状況が不安定になる。周辺国に手なんか出せないわね」
リフは手を打った。
「そうか、その間に態勢を立て直せばいいのか」
イシュタルは、じと眼で彼らを見据える。
「ばかじやない? 相手もそれくらい読むわよ」
「「「え?」」」
三人は、訳がわからないよ、というかおをする。
「つまり、これまでは概要。さらに細かい策が必要なの。それでも大きな成果は上がらないわ。小さな成果をコツコツと上げなければダメよ」
ここでイシュタルは真面目な顔になった。
「まず、王子。これから農業生産量が下がるから、帝国に食料の輸入を図って。なるべく有利な条件で対応出来るように。無理なら外交できる人を送って。次にライ。国軍の強化と、その費用について調べて。基本的に防備を中心に。攻めることは今の時点では無理。でも、魔物が襲ってくるから、乗り切れば強兵が手に入るわよ。リフは、資金の調達。最悪の場合、帝国からの借金も考えて。そうすれば帝国もこちらを攻めたり、滅ぼそうとか考えないから」
リフは思いつめたかおをする。
「わかった、即、帝国に借金を……」
「ダメよ、それは最後の手段。帝国に首輪をつけられるわよ。なるべくなら、回避して」
「わ、わかった」
イシュタルは笑顔を見せる。
「大丈夫よ。あなたたちならできるわ。もし、何かあれば相談して。お願い」
「「わかった。すぐに手配する」」
そして、部下の二人はその場を去った。しかし、マリウスはのこる。彼は、力なく自信無げに呟く。
「俺に、できるかな」
イシュタルは、そんなマリウスを優しく優しく抱き締めた。
「大丈夫。やってみて。出来ないなら、あなたのお父様に頼むなり、私のお父様に頼むから。二人でやっていこ」
「ああ、イシュタル。わかった」
抱きしめあう二人。イシュタルは、マリウスの暖かさを感じながらおもった。
聖女さま、あなたにはわからないわね。人は育てるものよ。マリウス様は確かに能力ないけど、私好みに育てて見せるわ。第一、顔が好みなのよ。まあ、頭からっぽだけと、詰め込めばいいし、本来すなおだし。勿論、他の人も育てる。人と十分に関われないコミュ障の聖女になんか負けるか。
イシュタルの戦いはまだ始まったばかりだ。
イシュタル。侯爵令嬢。顔よし。体力あらまあ。頭よい。王子の婚約破棄に、頑張って各関係者に根回しして肯定してもらった才女。聖女には悪意は持っていない。むしろ大変ダよな、と、おもっていた。王子は学園生活時にこのアホ、と思い、色々眼をかけていたが、このままだと、国を滅ぼすやつと思い、教育していく覚悟を決めた。教育の中、素直な所やかわいいところあるやつ、と、思い、少しずつ惹かれていく。ダメ男に貢ぐ傾向あり。なお、このあと、10年計画で政治、経済、軍事の改善計画を出し、王子らと共に国を建て直していく。と、いいな。
バカなヒロインが多いよなと、思い書いた。王子たちももう少し頭使え。ハイスペックだろうが。