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激闘を制し、見事に怪獣を倒した3機のロボットから、栗山兄妹が地上へと降り立った。
剛太と勝雄が、珍しく神妙な顔をしている。
「どう?」
陽葵が胸を張った。
「ああ…」
「うー」
兄たちが唸る。
「確かに今日は…陽葵の作戦が上手くいったな…」
「怪獣の弱点をすぐに見抜いたもんな…」
「3人で協力したから、早く倒せたでしょ?」
「「そうだな…」」
渋々、2人が頷く。
「弾薬も節約できて赤字回避だし、街の被害も最小限で済むの。だから、これからも私の指示に従ってね、お兄ちゃんたち! そうすればセイロン・マックスさんにもクビにされないから!」
「むぐぐ…」
「ぐぅぅ…」
剛太と勝雄は何も言い返せない。
「陽葵ちゃん」
怜司が声をかける。
「司令官就任、おめでとう」
爽やかに微笑む。
「怜司くん、ありがとう」
陽葵が微笑み返した。
「さらに忙しくなるから…ますます僕とは付き合えなくなるね」
「怜司くん…」
寂しそうな顔をする怜司に、陽葵も表情を曇らせる。
「ごめんね…怜司くんが嫌いってわけじゃないの…むしろ…その…」
陽葵の頬が、ポッと赤くなった。
「おい!」
「誰だ、こいつは!?」
剛太と勝雄の眼が三角になる。
陽葵が慌てて、兄たちに怜司を紹介した。
「付き合うなんて、まだ早い!」
「陽葵は子供だぞ!」
「子供に地球防衛させないでよ…」
陽葵が呆れる。
「とにかく今は…」
怜司を見つめた。
「家がもう少し落ち着くまで待って欲しいの」
「分かったよ」
怜司が頷く。
まだ納得いかずに騒ぐ兄たちを止める陽葵を残し、怜司は老執事、春彦の傍まで戻った。
振り返り、いま一度、栗山兄妹を見つめる。
「本当に仲が良いな。僕は一人っ子だから羨ましいよ」
怜司の口元が綻ぶ。
「坊ちゃま」
春彦が呼びかけた。
「ん?」
「僭越ながら…よろしいのですか?」
「ああ…」
怜司がクスッと笑った。
「セイロン・マックスの正体?」
「はい」
「僕は…彼女のお兄さんたちの会社を救いたくて買収したんじゃない」
「………」
「陽葵ちゃんに告白を断られたのが…現実とは、とても思えなかった」
「………」
「自分で言うのもおかしいけど、僕はかなりのイケメンだし、お金だって…名前を伏せて代理に経営させてる会社も、ひとつやふたつじゃない…それなのに、あっさりフラれたんだよ?」
「………」
「驚きの後に湧いてきたのは…怒りさ。まるで子供だね。くそっ、くそ! どうしてだよ! 陽葵ちゃんが欲しいっ、陽葵ちゃんが欲しいっ、どうしても欲しい!」
「坊ちゃま…」
春彦が悲しげな顔をする。
「㈱栗山を買収したのは、陽葵ちゃんから地球防衛を奪えば…僕を受け入れてもらえるんじゃないかってね」
「………」
「でも『今日から私が司令官だ!』って宣言する彼女を見たら…間違いに気付いた。僕はあの陽葵ちゃんが好きなんだ」
「坊ちゃま」
春彦の表情が晴れ、うんうんと何度も頷く。
「全力で陽葵ちゃんを応援して、いつか振り向いてもらうよ」
そう言った怜司の前に、陽葵が走ってきた。
「ごめんね、怜司くん。お兄ちゃんたちがしつこくて」
両手を握り合わせ、モジモジする。
「大丈夫、気にしてないよ」
「そう? それなら良かった」
陽葵がホッと胸を撫で下ろす。
「帰るの?」
「うん。お兄さんたちも、まだこっちをにらんでるしね」
「ええ!? もうっ、最悪ー」
陽葵の頬がプクッと膨らんだ。
「あははは!」
それを見た怜司が心底、楽しげに笑う。
怒っていた陽葵も、つられて笑いだす。
何やら良い雰囲気の2人の様子を剛太と勝雄はものすごい顔でにらみ、春彦はニコニコと嬉しそうに見守るのであった。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝です\(^o^)/
ご許可いただいた、たまりんさんもホントにありがとうございます(*^^*)