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魔法少年は今日も少女に逆らえない  作者: 半目ミケ
第一幕 魔法少女の誕生
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キミを忘れない

 雑踏を聞きながら、知らない道を歩く。

 初めて訪れる街。行き交うたくさんの人。


 その中に僕は、あの子の面影を探している。



 公園のベンチで、雑貨屋さんで買った地図を見ながら、作っておいたサンドイッチを食べる。

 ペンで、通った道と立ち寄ったお店の部分に印をつける。

 この街はあまり大きくないみたいだ。

 そうなると、唯一のお店だったり、そもそもないお店だったりが多い。

 それと、この地図自体には大きなお店しか載ってないから、実際に歩いてみないとわからない。


 これが逆に大きな街だったら、同じお店の出張店があることもあって、結構大変。

 ただ、その場合は地図にしっかりと情報が載ってることが多いから、意外となんとかなったりする。

 でも、歩くのが大変なのには変わらないから、気持ち的には狭い街の方がいい。


 サンドイッチを食べ終わったら、手を拭いて、バッグに地図を仕舞う。

 さて、また歩き始めよう。



 世界中を巡る旅を始めて、いろいろな街を見てきた。

 それぞれの街に特色があったり、逆に特徴がないのが特徴になっていたり。

 でも、森の中にあった小さな村に住んでいた僕にとって、知らないことや、いろいろな発見があるところで。

 だから、この旅を始めてもう長いけど、飽きることはなかった。


 その中でも今日訪れたこの街は……なんだろう、懐かしい感じがする。

 レンガで整備されていない土の道だからかな。

 それとも、街のどこにも木が生えていて、自然を感じるからかな。


 道端に立ち並ぶ木は薄紫の花を咲かせている。

 その花びらが舞い降りてきて、手の平を見せれば、そこに乗る。


 ハートの形をしたそれは、確かサクラと言うんだっけ。

 僕はあまり詳しいわけじゃないけど、あの子が、そんな話をしていたのを思い出す。


 この花が咲き乱れるのは、春という季節。

 その季節には、他の花もたくさん咲いて、生命の芽吹きが感じられる。

 そのサクラの木の下にもまた、小さな花が咲いていた。

 なんて名前かはわからない。

 ただ、小さくて、かわいらしくて。

 それがまるで、あの子のようで……。


 一陣の風が吹いて、僕の手の平に乗っていた花びらをさらっていく。

 自然とそれを目で追うと、路地の片隅に小さな花が咲いているのを見つけた。

 僕の足はその方向へと進んでいく。


 どうしてだろう。


 その先になにか……僕が求めているものがある予感がしたんだ。




 標のない旅を続けて、知らない道を歩いて。

 もう、幾つの街を渡り歩いたんだろう。


 まだ、僕の旅は終わらない。

 どれだけ長い時間が経っても、まだ、終わらない。

 終わらせたくない。


 約束したんだ。

 もう、ずっと昔に。

 決めたんだ。

 キミと別れたあの日から。


 だから僕は、今も探している。

 花の名前をしたあの少女のことを。

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