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魔王城に住み着いたねこ ごましおちゃんシリーズ

魔王城のごましお 婚約破棄ですわ!

魔王城に住み着いたネコ、ごましおシリーズ第3弾です。ぜひ、前作と合わせて読んでみてくださいね!


「婚約は破棄させていただきますわ!!」


 王宮に姫の絶叫が響き渡る。



「何故だ? 良い縁談だと思うがな」


 姫の猛抗議に不思議そうに首をかしげる国王。


「お父さま!? 何故私が魔王と結婚しなければならないのです? 普通は勇者さまがお相手ではないのですか?」


「勇者はマナと結婚するらしいぞ? それに魔王を推薦したのは他でもない勇者だ」 


「キーッ、聖女ならともかく、あのまな板に負けるなんて屈辱ですわ!!」


「まあまあ、とりあえず一度会ってみなさいな。やって……会ってみないと相性とかわからないものよ?」

「お母さま!? 今、聞き捨てならないことをおっしゃいませんでしたか!?」

「ふふっ、何のことかしら?」




「まったく、なんで私がわざわざ出向かなくちゃならないのよ!! 私が欲しいなら訪ねて来なさいよね!」


 ひとり魔王城へ向かう姫。


――――ピンポーン!――――


「…………姫ですわ!」



『これはこれは、ようこそいらっしゃいました! 申し訳ないのですが、魔王さまは、ただいま環境問題と戦っておられまして……』


 申し訳なさそうに頭を下げる執事。


「構いません。突然訪ねたこちらが悪いのです。待たせて頂いても良いかしら?」

『もちろんで御座います。どうぞ、ご案内いたします』



『紅茶とケーキで御座います』

「ありがとう。なんだかイメージと違うのね? 私、魔王城ってもっと怖くて暗い場所だと思っていたのよ」


『ふふっ、そうでございますね。以前よりはだいぶ明るくなりました。やはり魔王さまがネコ……いえ、なんでもございません。どうぞごゆっくり、おくつろぎ下さい』


「魔王がネコ? どういう意味かしらね……」



***



 しばらく経ってから、私は執事の言葉の意味を理解した。


「……貴方が魔王ね?」


『うにゃん?』


 くっ、可愛い。魔王なのに可愛い……これが魅了(チャーム)の力なの?


「と、とりあえず話し合いましょう……ってどこ座ってるのよ!? 貴方の席はあっち……ま、まあ、良いわ」


 膝に乗って来たので、仕方なく撫でる。まったく初対面でずいぶん馴れ馴れしいものだわ!!


「それで私が来たのは婚約破棄――――」

『ゴロゴロ……』


「ち、ちょっと聞いているの?」 

『ペロペロ……』

「いやっ!? くすぐったい……もう、そんなに私が好きなのかしら?」


『うにゃん!』


 駄目だ、話にならない、見た目に騙されてはいけない。


 でも……ビー玉のような瞳、もっふもふの毛並み。はぁ……カワユイですわ!




『すっかり遅くなってしまった。爺や、姫は?』

『はい、先程までいらっしゃったのですが、お帰りになりました』

『そうか……怒らせてしまったな。明日詫びに行くか』



――――ピンポーン!――――


『…………魔王だ』



「ふふっ、ようこそいらっしゃいましたわ。今日は人型なんですわね? こちらの御姿も素敵ですわ。さあ、お座りになって」

『人型? あ、ああ、では失礼する――――』


「魔王さま? 違います、魔王さまの席はこちらですわ!」


 自らの膝をぽんぽんする姫。


『なっ!? いや、さすがにそこには……』

「何言っているのですか? さあ早く!」


 これはもしや、怒らせたことへの意趣返しなのかと途方に暮れる魔王だが、断ることなどできない。


 姫の華奢な膝に負担をかけないように、空気椅子状態で耐える魔王だが、頭やあごの下を撫でられてあえなく撃沈。姫の上に思い切り乗ってしまう。


「や、やはり重いですわね……わ、私が膝に乗っても?」

『へ!? あ、ああ……構わない』



 後日、誤解は解けるのだが、それでも結局二人は結婚した。


 二人は仲睦まじく、生涯を通して人と魔族の懸け橋となったと伝えられている。



 魔王城の玄関には、一枚の肖像画が飾られている。


 仲良く並んだ魔王と姫、そしてその膝の上には、二人を結びつけた白黒のネコ、ごましおが描かれている。


 もっとも、当の本人は、そんな絵になど興味はないと、今日も魔王城の玄関で、ぐっすり丸くなっている。


 一番日当たりが良いから。ひだまりが心地いいからね。

 


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i566029
(作/秋の桜子さま)
― 新着の感想 ―
[良い点] とてもごましおちゃんが可愛いお話で素敵でした! 姫様と魔王様の縁結びをしていて、ごましおちゃんはキューピッドでもあったんですね。 [気になる点] 頭やあごの下を撫でられ撃沈した魔王様の、…
[一言] ナチュラルにみんな幸せにしてて笑うw こういう話大好き! 勇者はマナと結婚したんですね……ちょっと意外。 何はともあれ、魔王と姫が幸せそうでなによりです。 二人一緒に環境問題と頑張って戦っ…
[良い点] さすがねこ様、もふもふの生態をご存知でらっしゃる。 私も、あ奴に翻弄されてます。
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