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第7話

 そこに、やって来たのは、騎兵隊では無かった。否、一見すれば、人間ですら無い。

 『それ』は、一声咆哮を上げると、蹴破られた扉から駆け込む。

「What’s black leopard?(黒豹だと?)」

 閑静な住宅街に、突如として現れた? 『それ』……『黒豹』にも怯むことなく自動小銃を乱射する黒装束共。

 だが、『黒豹』は、黒装束共の自動小銃が、火を噴くよりも速かった。

 最後尾の黒装束が、振り返るより早く移動し、射撃体勢に入る直前には、喉笛に深々と牙を、喰い込ませる『黒豹』。その黒装束は、悲鳴を上げる暇さえ無く、立つ力さえ失う。

 しかし、僚友の惨死……もとい、瀕死の重傷にも、些かの躊躇も無く、引き金を引く黒装束共だった。無論、僚友諸共にだ。それが、トドメになる事もいとわずに……

「Fire!(撃て!)」

 等と指揮官が、指示しなくとも、訓練通り身体が動く黒装束共。

 が、『黒豹』は、黒装束共より素早い。だが、それは野獣の動きではない。

 『黒豹』の身体が、溶ける。まるで泥か何かの如し。

「What’s human?(人間だと?)」

 そして、何時の間にか、人型になっていた。それも、黒いスキンタイト・ボディースーツに身を包み、頭部すら覆面で隠し、長身でかなりグラマーな女性だ。

 既に、両手を使って、黒装束の死骸を盾にする事すらしていた『彼女』だった。更に、死骸から『あれ』を奪って、安全ピンを引き抜いた。

「Watch out!(閃光弾! 気を付けろ!)」

 指揮官が、目を隠すように指示したが、手遅れだった。

 先程とは違い、なんの心構えも無く、至近距離で閃光弾の光を、低光量増幅ゴーグル越しに喰らえば、ひとたまりも無い。黒装束共は、全員目を抑えて呻いていた。

 『彼女』が、合図するまでも無く、メイド達が、無力化した黒装束共を、拘束する。

 またも、『彼女』は、サマノ家を奥へと進む。そして、この家の主の寝室に辿り着いた。

 既に、扉は破壊され、黒装束は中に侵入を果たしていた。

「Missing?(いないぞ?)」

「Where?(何処だ?)」

 そこにターゲットが、いない事に困惑している黒装束共だった。無論、その隙をスルーする事など無い。閃光弾の安全ピンを抜き、部屋に転がした『彼女』だった。

「Oh!」

 全員が、目を抑える。射撃どころではない。が、1人だけ闇雲に、発砲した。

「Catch!(喰らえ!)」

 しかし、姿勢を低くしつつ出入口の陰に隠れて、5.56x45mmNATO弾を、やり過ごす『彼女』。更に、敵から奪い取った銃弾をお見舞いする。

「Oh!」

 銃を持った肩と肘に銃弾を喰らった黒装束は、たまらず銃を落とした。

 そこに駆け込む『彼女』……否、既に手にした物は、捨てた『黒豹』へと変じていた。とどめとばかりに、喉笛をかむ。今度は、絶命する前に、無力化できた。

 一方、こちらは、黒装束共の指揮車両。某国製の軍用トラックだ。コンテナは、防弾仕様で、破壊するには、対戦車ライフル以上の火力が必要な代物だ。

 ちなみに、ここにいる黒装束共は、低光量増幅ゴーグルを着けていない。

 通信兵らしい黒装束が、機械的に、同じセリフを繰り返す。要は、「報告しろ」「応答しろ」と言う意味の英語だ。そこに……

「ようやく追いつきました。私は、『黒豹』に変ずる『能力』など無い物で。」

 巫女装束姿の幼馴染が、監視カメラに写った。

「Go!(者共、出会え!)」

「おい! 意味は、正しくとも、言葉使いが、間違ってるだろ!」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。

 仕方なく? 指揮官と運転手以外の黒装束共が、全員車から降りる。無論、全員自動小銃を構え、幼馴染に照準を合わせる。

「まったく、昨今の職業軍人は、なっていませんね。まさか、現役JKに銃口を向けるどころか。あまつさえ、躊躇なく殺害する。嘆かわしいですわ。かしこみぃもぉぉぉ……」

「Fire!(撃て!)」

 指揮官の号令一下、発砲する黒装束共。

「…………す。」

 瞬時に、幼馴染の前に、水の壁が生まれた。

「What’s!」

「驚くほどの事もありません。私の守護神は、水の神。鉄砲の弾など効きません。更に!」

 左腕を横薙ぎに振るう幼馴染。

「No!(馬鹿な、銃が真っ二つに!)」

「量と圧力を調整しつつ放てば、鋼鉄製の重火器を切り裂く刃にもあります。」

 銃身を切り裂かれた自動小銃を、かなぐり捨てて逃げ出す黒装束共。急ぎ、トラックに乗り込む。しかし、トラックは、一向に発進しない。

「逃がしません事よ。」

 よく見れば、トラックのタイヤは、回っている。但し、降り積もった雪の上で、空回りしているかの如しだ。

「既に、タイヤの下に、水の壁を配置しました。カーペットの様にね。しかし、困りましたわ。英語の降伏勧告ってどうしましょう。いっそ、このままバラバラに解体しましょうか。」

 小首を傾げる幼馴染。どうやら、本当に分からないらしい。

「Freeze! ぢゃ。」

 声は、空から降って来た。

 遅れて、声の主も降りて来る。金属製の強化外骨格を身にまとい、対戦車ライフルを構えた人物だ。ちなみに、飛行原理は、企業秘密らしい。

 その後、流暢な英語で命令するものの……

「Catch!(喰らえ)」

 運転席から扉の窓を開け、そこから身を乗り出し、対戦車バズーカを構える黒装束。

「かしこみぃもぉす。」

 対戦車バズーカを構えた黒装束の頭部が、水に包まれた。

「Guuuuuvooh!」

 もがく黒装束。要は溺れているのだ。射撃どころでは無い。そこで、バズーカ砲を奪い取ってから、『水』を解除する。こうして、黒装束共は、全員捕虜になった。

「随分、五月蠅かったが、片付いたようだな。」

 いつの間にか、登場したサマノの一言で、状況終了。


 * * * 



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