第57話
話は、少し遡る。
「では、交換条件を出しましょう。サマノ君。それは、米国内に潜伏している中国の工作員と、『救世主』の情報よ。」
「それに応じると言う事は、情報の真偽を確認する必要が、あります。よって、『取引』として使う情報は、全て開示して下さい。即刻。」
「分かりました。まず、『救世主』に関してです。名前は、九号。年齢は、16歳……。」
『本宮先生』の台詞を途中で、遮るサマノだった。
「九号? それは軍用コードネームですよね。本名が分かるなら、そちらも説明して下さい。」
「いいえ、サマノ君。本名です。九号は、生まれてすぐ、両親死別。その後、引き取られた施設で、名付けられました。ですから、九号こそが、本名です。」
「分かりました。続けて下さい。『本宮先生』。」
「はい。では、九号は、『超人兵士』です。これは、専用の、『改造手術』と拒絶反応軽減用『薬物投与』で、作られた『後天性超能力者』です。」
「何処かで、聞いたような話だ。」
「ちなみに、九号は、処置の影響で、消化器官不全になっています。今、九号は点滴以外の栄養補給が、不可能です。」
「極端だな。副作用は、お構いなしか。」
「独裁国家にありがちな話、そう解釈して下さい。そして、ここからが、本題です。つまり、九号の『能力』です。それは、2つあります。」
「ほぉ。」
「九号の『能力』は、『幽体離脱』と、『憑依』です。これは、『意識』を肉体から切り離して、物理法則を無視して自在に移動し、他の生物に『入り込み操作する事』です。」
「おいおい……それで、自殺でもされたら、ひとたまりも無い。そうだろう。」
「勿論可能です。但し、『憑依』した肉体の基の意識との、せめぎあいになります。よって、対象が睡眠中を狙います.また、1度に、『憑依』可能な肉体は1つまです。」
「だろうな。『憑依』と言うからには、そうだろう。他に制限は無いのか。距離とか。」
「はい。九号の制限は、先程のと『射程50メートル』と言う2点ですね。また、九号の肉体が、傷つけられ、心停止すれば、意識の方も消失する……はずです。私からは以上です。」
暫し、黙考するサマノ。ややあって……
「だが、これだけでは、不足だな。どうしても、僕に大統領の回復を依頼するなら、もう1つ、情報を提供して欲しい。それは……。」
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明日00:00公開
58話~60話




