第5話
「じゃ、次は、私の番ね。」
「別に誰でもいい。正確に的確に明確に、説明するならな。」
「じゃ、1-3、『預言』をめぐる対応よ。実は、『預言』に対しては、国内でも解釈が、分れているのよ。しかも、問題なのは、『同じ解釈をする人同士で派閥を作った』事ね。」
「人間に限らずある程度知能が高くなった生物は、群れる習性があるからな。」
等と言う無駄口を叩かないサマノだった。
「お願いします。」
ここで、またホワイトボードに、何やら書き込むメイド。
1-3-1、真『預言者』派 別な『預言者』を信じる
1-3-2、信『預言者』派 『預言者』の全てを信じる
1-3-3、疑『救世主』派 『預言』の内容、取り分け『救世主』が誰かに疑い
1-3-4、否『救世主』派 『預言』の内容、取り分け『救世主』の存在を否定
1-3-5、否『預言者』派 そもそも破滅など世迷言
「紆余曲折を経て、今存在する派閥は、こうなります。」
「成程、ありえる解釈だな。だが、1つ疑問が残るな。」
「何かしら、『救世主』様。」
「さっきの話では、『預言』を信じているのは、日本政府だった。だが、ここには、外国人もいる。何処からか情報漏洩があった。そう考えないと、辻褄が合わない。」
「はい、その通りです。ちなみに、漏洩したのは、否『救世主』派です。彼等が、伝手を使って国連に情報提供した所、大激震が走りました。」
「だろうな。否『救世主』派ってのは、『預言』は信じる。が、『救世主』の存在を否定している。だから、人類が自らの力で成し遂げなければならない。そう言う連中だ、だろ。」
「はい。」
「だが、日本1国では、力が足りない。そこで、思い余って、国家機密のはずの情報を、国連に渡した。大激震になるのは、自明の理だ。むしろ、よく真に受けてくれたもんだ。」
「はい。ですから、国連では、派閥が増えました。」
「そりゃ、多分あれだな。元々日本には、信『預言者』派、疑『救世主』派、否『救世主』派だけだった。それも、信『預言者』派が、圧倒的多数で、他は少数だった、だな。」
「……はい。よくお分かりで……。」
「そうと考えれば、辻褄が合う。もし、真『預言者』派が、元々日本国内にいたら、どの『預言者』を信じるかで、内戦になりかねない。よって、いないとするのが、妥当だ。」
「…………はい。そうです。では、否『預言者』派は?」
「大体、『預言』なんて、真に受けないのが、普通の反応だ。だから、最初は、否『預言者』派になる。が、『預言』の的中率を見る内に、考え方を改める。そんな所、だろ。」
「………………はい。よくお分かりで……。」
「そうそう、派閥の世界分布を、教えて欲しい。但し、否『預言者』派は、不必要だ。既に、分かってる。」
「は? 何故です。」
「それは、途上国だろ。だからだ。」
「……何故……それを……。」
「途上国だって滅亡したくない。だが、何をするにしろ、金が無い、人が無い、物が無い。だから表面上は、『世迷言』と断言する。これで、何もしない出来ない事への批判を躱すのさ。」
沈黙が、重かった。それ故に、正鵠を射る発言だと証明していた。
「大方、何処かの『救世主』が、『破滅』を回避した頃合いを見計らう。その取り巻きを、持ち上げ、媚びへつらって、体面を保とうとするだろうな。ん? 説明の続きはどうした。」
「………………はい。では、世界の潮流でしたわね。」
「そうだな。」
「はい。まず、真『預言者』派は、4か国、露中南北朝鮮です。いずれも、『預言者』の個人情報を『国家機密』とした上での話です。」
「ああ、そりゃ、『後出しジャンケン』だな。要は、『我が国の救世主が、世界を救った。我が国を崇めよ。』とか言う気だろう。全てが、終わった後でな。」
「欧米、イスラエルと、ファイブアイズ加盟国は、疑『救世主』派ですね。」
「それは、嘘だな。特に、米国は、真『預言者』派だろう。そして、『預言者』の存在を秘匿している。無論、別な『救世主』の候補も秘匿しているさ。」
「何故、そうだと思います?」
「あの国は、常に1番でないと気が済まない。故に、日本の後ろから付いて行く事は、『屈辱』と感じるだろう。」
全員が、沈黙した所で、更に追い打ちをかけるサマノ。
「どうやら、説明は終わったようだな。なら、今日は解散だ。全員帰りなさい。」
「お待ち下さい。」
「未だ、大事な点が、残っておる。」
「ハイ。私モ伺ッテイマセン。」
「それもそうか。それは君達が、何処の派閥に属しているのか、説明されてないな。それの事だな。」
「いいえ、『救世主』様には、特殊な『能力』が、あります。」
「して、その『能力』とは、如何なるものぞ。」
「ハイ。私モ伺ッテイマセン。」
「何故?」
「ヨウヘイおじ様から、話しは聞いています。サマノ家の男子には、時々『能力者』が、誕生する事があるそうです。『救世主』様もその筈です。」
「いいや、違う。何故『人類なんて邪悪な生物を助ける必要がある』。そう質問した。」
「いえいえ、それだけでは、ありません。人類は、『清濁併せ持つ』生き物です。『邪悪』一辺倒ではなく、『善良』さも持ち合わせています。」
「時に、樽一杯のワインに、一滴の汚水を入れたら、どうなる。」
「樽一杯ノ、ワイン、一滴ノ汚水デハ、ナイノデスカ。」
「分かっておるわ。樽一杯の汚水ぢゃ。」
「何故デス?」
「ワインと言う物は、それだけ『衛生観念』『品質保証』が、厳しく求められるのぢゃ。」
「だからと言って、皆殺しにするのは、行き過ぎでしょう。」
「今までさんざっぱら悪事を働いておいて、いざ自分の力じゃどうしようも無くなって初めて『救世主』にすがる。『蟲』が良過ぎるな。」
「それを言うなら、『虫が良過ぎる』だろう。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「否、人類の邪悪さは、『蟲』と呼ぶに相応しい。それが、サマノの意思だ。」
などと言う無意味な指摘に事実を被せる者などこの世界に存在しない。
「ですが、それでは『救世主』様も『破滅』に巻き込まれるのでは?」
「僕の命に、それだけの価値が、あるとは思えない。『破滅』とやらが、諸共に滅ぼしてくれるさ。だが、全人類に先立って、『自殺』するつもりもないし、殺されたいとも思わない。」
「考えを改める事は、ありませんか。『救世主』様。」
「君達には、不可能だ。」
こうして、本日の会合は、終わった。
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