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第37話

「君達が愛したガルマは、死んだ。何故だぁっ!」

 米国副大統領の《今まさに人類は、破滅に向かっている。何故だぁっ!》は、「君達が愛したガルマは、死んだ。何故だぁっ!」と聞こえた様な気がしたが、きっと気のせいだろう。

 某総統とも無関係に相違ない。

 場所は、サン=フランシスコ市内の某コンサート会場。今まさに、副大統領の演説は、佳境に入っていた。勿論、演説は、英語で行われている。

《鍵となるのは、『融和』だ。『融和』こそが、国難を、世界を、救う唯一の鍵となるのだ。地球上には、今や70億人に達しようと言う人間が、住んでいる。》

 ここで、壇上を拳で叩いて音を響かせる。

《だが、人類はバラバラだ! 一向にまとまる危害が無い! こんな事では、難局を乗り切れない! 理由は、何だ。宗教、主義、果ては、利害などと言い出す始末。》

 副大統領の演説は、身振りが多い。またもオーバーアクションをしている。

《敢えて問おう。我々は何だ。》

 会場内から《アメリカ人》と言う言葉が、まばらに聞こえて来る。

「Yes! We are Ameican.」(その通り、アメリカ人だ。)

 壇上の副大統領が、答える。

《更に、敢えて問おう。アメリカ人とは何だ。》

《世界で最も偉大な民族だ!》

 誰かが、叫んだ。

 また、誰かが、叫んだ。

 それは、徐々に広がっていく。やがて……

「Greatest!(偉大だ)」

 と言うシュプレヒコールにまで、なっていった。

「Yes! We are greatest!」(その通り、我々は、偉大だ!)

 副大統領が、咆えると、会場内の咆哮は止み、代わりに拍手になった。

《しかぁし、現実はどうだ。世界は、バラバラな上、アメリカと、アメリカ人の偉大さを、一顧だにしない。何故だぁっ!》

 会場内が、ざわつく。答えが見つからないからだろう。

《答えは、簡単だ。今まで、我々は、問題を先送りにして来た。それは、彼等と手を取り合う事を、おざなりにしてきたからだ。》

 会場内が、ざわつく。理解が追い付かないからだろう。

《第16代大統領が、何と言った。『黒人もアメリカ国民だ。』その後、国を2つに割った.そう、南北戦争へ舵を切ったのだ。今こそ……》

 ここで。右拳を高々と、挙げる副大統領。

《今こそ、白人だけではない。肌の色で区別する事のない、手を取り合う世界を構築しなければならない!》

 ここで、どよめく会場。

《我々に、必要なのは何だ!》

 副大統領が、咆える。

《団結!》

 会場が、答える。

《我々に、不要なのは何だ!》

 副大統領が、咆える。

《差別!》

 会場が、答える。後には、拍手が舞い起こり、演説は、終了した。


 * * * 


《ふぃーっ……終わったぜ。》

 演説終了後、控室に戻った副大統領。某仮面をつけたバイク乗りとも無関係に相違ない。

《お疲れ様です。》

 応じるのは、秘書だ。

《ちっ、バーボンの一杯も、ヤリてぇぜ。》

 舌打ちする副大統領。

《副大統領、この後も予定が、ございます。》

 真面目な秘書は、炭酸入りミネラルウォーターをグラスに注ぎ、副大統領に差し出した。

《わぁってらぁ。》

 一息に、グラスの中身を空け、盛大なゲップを吐き出す副大統領。

《では、その予定は、全てキャンセルするがよい。》

《なっ……ナニモンだ。いつの間に……。》

 無理からぬことだろう。彼らの目には、サマノ、幼馴染、ポロポ、ゾフィーが、突如室内に現れた様にしか見えないのだから。

「ごめんあそばせ。」

「失礼シマス。」

 2人のスタンガンによる攻撃で、麻痺した副大統領と、秘書だった。


 * * * 



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