第26話
「森成利、大学一年生です。」
サマノの対面に座ったのは、女顔の青年だった。脱毛済みの顎や頬が、光を反射する。
今日は、弁護士の紹介で、やって来たNPO法人運営者候補の面接日だ。
「初めまして。本日は、いくつか質問をさせて頂きます。」
「はい。」
「事前に提出して頂いた『履歴書』にある内容に間違いは、ありませんね。」
「はい。ありません。」
「では、あなたは、ボランティア団体の副会長を、務めています。で、副会長の仕事内容、職責、就任までの過程を教えて下さい。」
「では、仕事内容から。これは、会長が、不在の場合の代行。それに、雑用係です。」
「それは、会長から命じられた雑用、そう言う事ですね。」
「そうです。」
「続けて。」
「職責……と言われても、権限も何もありません。言わば、『お飾り』ですね。」
「成程、では続けて下さい。」
「就任までの過程ですね。実は、会長は、叔父さんです。つまり、縁故ですね。その縁で、お手伝いをしている内に、任命された。そんな感じです。」
「珍しい。『縁故』で採用された。等と言えば、心証が悪くなる。それを直球で言うとはね。」
等と言う無駄口を叩かないサマノだった。
「では、最初は、それこそ雑用係として、お手伝いしていた。ですね。」
「はい。」
「それが、何時の間にやら、役職が着く。その『きっかけ』は、何でしょう。」
「会長が、次第に多忙になっていった為です。会長不在では、メンバーをまとめる事が、難しい。そこで、『会長を代行してまとめる役割』として、任命されました。」
「ですが、さっきは『お飾り』と言ってませんでしたか。」
「はい。副会長が、何か失敗したとしても、最終的な責任は、会長が取る。そう言う条件で、引き受けました。ですから、『責任』等無い、『お飾り』と言ったのです。」
「……中々、賢しいな。この分だと、『副会長』と言う肩書も、将来の就職の為だろう。」
等と言う無駄口を叩かないサマノだった。
「では、会長の多忙の理由とは?」
「会長が、目指したのは、町内美化。特に、放置ゴミ対策ですね。自動販売機の脇にうず高く積み上げられていた空き缶に我慢できなかった。そうです。更に……」
「更に?」
「地元の方々が、協力してくれました。組織として、形成されていったのです。が……」
「が?」
「2つ問題が、発生しました。1つ、不法投棄されるゴミの種類や、量が増えていきました。これは放置自転車などです。」
無言で、先を促すサマノ。
「2つ、空き缶拾いを生業とするホームレスが、進出してきました。彼らにして見れば、自分達の食い扶持を、奪って行っている。そう見えたのでしょう。」
「つまり、回収したゴミの、処分ルートの確保や、ホームレス達との折衝が、会長を多忙にした理由。ですね。」
「はい。」
「最後に、僕が立ち上げようとしている『組織』は、非常に多忙です。今までの団体活動や、学業にも影響があるかもしれません。それらは、自己責任でお願いします。構いませんね。」
「はい。」
この後、特に質問も無くなっていた事を確認した。お互いに。
よって、ここでお開きとした。
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