第23話
「と、こんな所ぢゃ。」
「それが、僕をイジメた『元加害者』の収容内容か。雑魚寝状態に、シャワー、トイレ共用、エアコンも最小限。…………………………これで問題ない。」
3人娘の貌が、安堵の色に染まる。ちなみに、現在は特別学級開始4日目に当たる。
「だが、彼等には、共通する欠点がある。それは、『他者の痛みを、慮れない』事だ。要は、自分が痛い思いをした事が無い。『痛い』とは何か知らないんだ。」
「で、……では、如何致しましょう。『救世主』様。」
「彼等には、3段階の教育が、必要になる。」
「『3段階』デスカ。」
「まず、『痛み』とは何か、教える。」
「それなら、既にやっておる。先程、『問題ない』と申されましたな。『救世主』様。」
「勿論だ。だが、『予想外』は、常に起こりえる。『元加害者』の様子を観察し、『痛み』の『理解度』に応じた学習要綱の見直しは、適宜行う事。」
3人娘の貌が、安堵の色に染まる。
「次に、『他者の痛み』とは何か、教える。これは、『イジメ現場の動画』を繰り返し視聴させる事が、有効だろう。」
「成程、『被害者』が、『痛みに苦しむ』シーンを見せつける。そう言う事かや。」
「その通りだ。」
「流石、『救世主』様は、知恵者ですね。」
「我等ニハ、思イモ寄ラナイ事ヲ、考エル。ソコニ、尊崇ノ念ヲ抱キマス。」
「『尊崇』? 『そんすう』じゃないの。」
「否、幼馴染よ、その言葉は、『そんすう』とも、『そんそう』とも、読むのぢゃ。」
「あら、そん、そうだったの。」
「話を続けてもいいかな。」
「申シ訳ゴザイマセン。オ続ケ下サイ。『救世主』様。」
「最後に、『過去の罪』と、『罪悪感』を、結びつけさせる。これは、『過去の罪』に関して、質問を繰り返すのが、有効だろう。」
「成程、『加害者』が、『過去の罪』と向き合う手助けになる訳かや。『救世主』様。」
「その通りだ。ここまで、到達すれば、同じ過ちを繰り返さないだろう。」
「流石、『救世主』様。」
「完璧デス。」
「いいや、まだ足りない。」
「ん? 足りぬかや。『救世主』様。」
「君達は、『全人類の邪悪に対応する。手始めにこの国だ。』そう言った。」
「その通りですわ。」
「然り。」
「ハイ。」
「ならば、今後、イジメに対策し続けれる事になる。すると、『加害者』を収容する場所が、必要だ。つまり、こう言う施設を複数用意する必要がある。」
「一理あるのぉ。して、如何にする。」
「では、どう致しましょう。」
「見当モツキマセン。」
「まず、NPO法人化だ。」
3人娘の頭上に「?」が、浮かぶ。無理からぬことだ。
「NPO法人……つまり、『非営利活動法人』として、『組織化』する。今後は、『組織』が、『加害者』の『収容施設』を、始めとする『運営』を一手に担う。」
「一気にスケールが、大きくなりましたわ。『救世主』様。」
「スケールガ、大キ過ギテ、着イテ行クダケデ、精一杯デス。」
「確かに、『全人類』とは言うたが、人任せにするとは、如何なものかのぉ。『救世主』様。」
「それはだな、僕には2つの目的がある。1つ、『加害者が心を入れ替えて真人間になる』事だ。2つ、『被害者と被害者家族の救済』だ。」
「1つ目は、以前から申しておったのぉ。」
「2ツ目ハ、何故デショウ。」
「1つ目は、言うまでも無い。人間の『邪悪』を抜き取る事だ。2つ目は、イジメには『加害者』と『被害者』『被害者家族』がいる。よって、『加害者』だけ対応しても片手落ちだ。」
「つまり、『自殺』や、『引きこもり』対策ね。『救世主』様。」
首肯するサマノだった。
「更に、これだけの事を成すには、数人では人材不足だ。メイド達は、数こそいるが、護衛や家事など忙しい。」
「お気遣い、痛み入る。『救世主』様。」
「しかも、外国人がこの国の民に寄り添う事ができるか、と言う問題もある。日本人を集める必要がある。これは、黒田弁護士に頼る。」
「言ワレテ見レバ確カニソウカモ……デス。」
「更に、人員を紹介してもらう必要がある。何しろ、こちらは、NPO法人経営ノウハウなど持ち合わせが無いからな。これも、黒田弁護士に頼る。」
「仮に、NPO法人にしたとして、その後は、どう致しますか。『救世主』様。」
「まずは、警備保障会社の買収だ。TOBではない。2割程度の保有で、経営方針に意見できるだろう。それで、十分だ。」
「ほぉ、買収かや。して、何をする。」
「学校に、売り込む。商品は、録音機器と監視カメラによる監視だ。これには、イジメの監視も含む。セット価格で販売する事。」
「ああ、そう言う事ね。そうやって、イジメを監視できる訳ね。『救世主』様。」
「それは、あれかや。不審者監視のみの金額で、イジメ監視もまとめてやるのぢゃな。『救世主』様。」
「その通り。昨今の『働き方改革』のお陰で、教職員や、用務員の夜間宿直にも規制がかかりつつある。外部委託は、最高のコストダウンだと、営業トークをすれば、売れる。」
「実際ニ、イジメヲ発見シタラ、ドウシマス。『救世主』様。」
「学校側に、報告する。勿論、動画ファイルを添付する事も忘れない。更に、NPO法人も、紹介する。『彼等に任せれば、万全な上に無料です』と言う触れ込みでな。」
「もし、学校が拒否した場合、如何にする。『救世主』様。」
「被害者家族に弁護士を紹介し、司法の手に委ねる。学校側に、そう揺さぶりをかける。」
こうして、今後の方針も決まった。
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