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第2話

「この動画を視聴している君、今、この時、私、サマノ・ヨウヘイは、既にこの世にいない。そして、この動画を視聴する者は、我が息子のみである。そう願う。」

 『父さんが呼んでいる』とは、そう言う事か。そう思いつつ、動画の続きを視聴。

「日本のノストラダムスとも呼ばれる『預言者』は、偉大な真実の『預言』をして来た。」

 知ってる。21世紀以降の大震災全て等、的中率100%だ。ちなみに、個人情報保護の観点から実名削除。『預言者』とは、コードネームである事も含めてな。

「『預言者』によれば、世界の破滅は近いと言う。しかし、恐れる事なし。我らには、『救世主』がいる。」

 不安を植え付けた上に、それを煽って、更に逃げ道を指し示す。典型的な、詐欺的手法だな。これで、壺や印鑑でも売りつければ、まさしく。

「お前……仮にも、父親の遺言に、詐欺呼ばわりか。」

 などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。

「そもそも、詐欺的手法の使い手は、『預言者』だ。父親ではない。」

 などと言う無意味な指摘に事実を被せる者などこの世界に存在しない。

「そして、ここから先が重要だ。『救世主』が、一体全体誰なのかとなる。これも、『預言』に在る。」

 だろうな……

「では、明かそう。『救世主』には、3つの特徴が、在る。まず、特徴その1、『救世主』は、未成年者である。」

 ああ……そう言う事か……

「『救世主』の特徴その2、『救世主』の肉体には、『しるし』が、在る。」

 つまり、情報漏洩元は、あいつか……

「『救世主』の特徴その3、『救世主』と、その男系一族にも、同じく『しるし』が、在る。以上だ。」

 確かに、これだけの条件を、全て兼ね備えている者。……そうはいないだろう。

 だが、重要なのは、そんな事では無い。

「既に日本政府は、『預言』を重要視すると共に、対『破滅』用に、莫大な予算を割り振った。国連もじき動き出す。もう、後には退けない。」

 無責任な……

「………………………………………………………………………………………………以上だ。」

 成程……全ての答えは、この動画にこそ、あったのか……


 * * * 


 完全防音の密室から出るには、指紋、静脈、網膜認証を全て通過する必要がある。

 勿論、全てが、サマノに合わせてある。当然、密室には、1人で入り、出る時も1人だ。

 そこには、弁護士バッヂを身に着けた背広姿の男が、待っていた。

「お待たせ。黒田先生。(父さんの)遺産に関してだったね。」

「はい。ですから、こちらで、お話ししましょう。但し、この後、順番待ちをされている方々が、おります。手短にすませましょう。」

「それは、まさか、『あの女』が、3年ぶりに来た訳ではないよな。」

「いいえ。」

「そうか、それなら良かった。ちゃっちゃと、始めて下さい。」


 * * * 


「……以上になります。」

 黒田弁護士の説明は、完結だったが、聞くと疲労が、重くのしかかる。

「意外だったな。」

「意外ですか? ちなみに、何が意外でしたか。」

「3つある。」

「3つ……ですか。」

「1つ、若いツバメと駆け落ちした挙句、離婚、親権放棄した元母親が、沈黙している事だな。遺産を請求したとしても、不思議も不可解も不自然もない。」

「大丈夫です。その様な事が無い様に、しっかり誓約書に署名捺印させましたから。それに、ヨウヘイ様の死を、知らなければ、何も言えませんな。」

「だな。次に、父さんの遺産が、多い。」

「それは、そうでしょう。私も、詳細までは、教えて頂けませんでしたが、かなり難しい仕事だそうでした。高給取りな上、元奥様からの慰謝料もありましたから。」

「その『慰謝料』は、僕の学費に消えたんだ。もう無い。最後に、国が、『特例で、相続税の全額免除』した事だ。」

「相続税の全額免除は、事実です。ヨウヘイ様は、『伝手を頼った』。そう、仰っていました。」

「ふーん、じゃ手続きは、任せるよ。黒田先生、今日から僕の後見人頼むよ。」

「分かりました。では、善は急げですので、私はこれで失礼します。」

 こうして、サマノに見送られた黒田弁護士だった。


 * * * 



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