第18話
学校も終わり、帰宅した4名。自室で、勉強中のサマノ。
3人娘は、夕食の準備中だった。と言うより、メイド達が作った日本食を、監督する幼馴染とポロポ、それにゾフィーを加えて、今日の反省会をしていた。
「あの鉄面皮め、加害者が、用務員に転落しただけで、気を良くしおったぞ。」
「確カニ、『守護霊』モ同ジ意見デシタ。」
「私も同感だけど、わらわちゃん、どうして分かる訳。」
「知れた事。それは、『ドーパミン』の分泌状況を観測すれば、よいのぢゃ。」
「『ドーパミン』。ソレハ確カ『多幸感』ヲ産ミ出ス脳内麻薬物質デハ、アリマセンカ。」
「神経伝達物質ぢゃ。が、まあよかろう。人間の大脳温度を、外部から観測する装置で、計測した所、『ある部分』の突出した温度上昇が、分かったのぢゃ。」
「それって、『ドーパミン』を分泌する部位の血流が増えたからよね。それで、活性化したと言う訳ね。それで、分泌量が増えたって言う事ね。」
「そんな所ぢゃ。して、幼馴染は、如何にして、その事実に辿り着いた。」
「分かるわよ。7年前までお隣さんで、一緒にお風呂にも入った事まであったのよ。簡単ね。」
「何ハトモアレ、全会一致デ、『成功』シタト結論付ケラレマシタ。ココカラハ、次ノ段階ニ進ミマショウ。」
「あの、ポロポ様、味見をお願いします。」
メイドから、味噌汁の味見を、頼まれ、一舐めするポロポ。
「グッド。」
「何だ、その某ギャンブラーみたいな言い方は!」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「はい、ありがとうございます。」
勿論、幼馴染も、料理のチェックをする。例え、箸休めに過ぎない料理でも、生姜焼きのタレでも、キャベツの千切りでも、手を抜か無い。それが、成功の一歩だ。
「して、如何にする。幼馴染、ショコラーデ。」
「ヤルしかないわね。」
「同感デス。」
「となると、今後一層の人手不足が、危惧される。皆の衆には、尚一層の奮起を期待するぞよ。それに、幼馴染にショコラーデ、お主らもぢゃ。」
「そりゃそうよ。」
「当然デス。」
* * *
夕食の席、ほうれん草のおひたしを味わっているサマノ。
「『救世主』様、お願い……いえ、提案があります。」
「私モデス。」
「わらわもぢゃ。」
「食事が冷める。難しい話しなら、食後にして欲しい。」
「いいえ、食事中が、良いのです。」
「話すのは、構わない。が、即時答えるとは限らない。」
今度は、ひじきだ。
「一昨日、『救世主』様ハ、言イマシタ『人類ナンテ邪悪ナ生物ヲ助ケル必要ガアル』。」
「そうだ。」
「それは、『邪悪な行い』と言う意味であろう。」
「それは、『最低限』だ。本来なら、『邪悪な考えなど、思考の片隅にも無い』が、正しい。が、『最低限』すら出来てない。それが、事実であり現実であり真実だ。」
根菜がふんだんに入った味噌汁を呑む。
「だから、提案よ。せめて、『最低限』くらい達成しましょう。」
「それは、法の執行官が、やっている。僕の仕事じゃない。」
お新香を味わう。
「当然デス。『救世主』様ハ、『使命』デ、世界ヲ救ウ。『仕事』デハアリマセン。」
「ぢゃから、『救世主』様よ。『人類』から『邪悪』を抜き取る。その『策』もある。如何な物か知りたかろう。」
「人類は、未だに成功していない。今後も、出来ないだろうな。」
「大丈夫、『最低限』なら出来るわ。『救世主』様。」
「但シ、『救世主』様ノ全面協力、監修ガ、不可欠デス。」
「それは、何か、僕が『人類から邪悪を取り除く努力をしなかった』そう言いたいのか。」
豚の生姜焼きを一口食む。
「なに、『救世主』様が、何をしようと、人類が善良になる事など無かろう。気に病むでない。ぢゃが、『表面的』に『最低限』なら可能であろう。」
白いご飯を、たっぷりほおばる。ゆっくり、時間をかけて咀嚼。
「『救世主』……さ……」
全員の発言を右手で制した。既に箸は、置かれていた。腕組みをしつつ、沈思黙考する。
ややあって、口腔内のご飯を完全に、飲み下した。
「聞かせて欲しい。君達の企みを。但し、1つ僕の質問に即時正確に答えて欲しい。」
「分かりました。『救世主』様。」
3人娘は、破顔した。
* * *
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