第15話
「見事だ。家の修理が、終わってる。」
「当たり前田の『何とやら』ぢゃ。セラミック製の補強材を運び込むに、ちと難儀したがのぉ。」
「まさか、対爆仕様にしたのか。」
「対戦車バズーカ程度なら、問題ない。それ位ぢゃ。」
「もう、わらわちゃんは、楽観的よねぇ。某国が、キレて『反応弾』でも使ったら、どうするのかしら。」
「確カニ、警戒シタ方ガ、ヨイデショウ。」
「3人共、それは『いずれ』の話だ。そんな事より、新しい扉のパスコードを教えなさい。」
「数字のパネルは、偽装ぢゃ。本命は網膜と、静脈認証ぞ。」
ようやく、家に入る一同だった。新しい扉は、エアロックでも開けるかの様な、音を立てた。
「内装は、壁紙で誤魔化したのか。」
「不服かや。」
「十分だ。」
「じゃ、私と、ポロポは、夕食作るから、抜け駆けしない事。」
「心得ておる。」
「僕は、部屋にいる。」
「じゃ、後で呼ぶわ。」
* * *
夕食のメニューは、白米のご飯、葱とワカメの味噌汁、野菜のぬか漬け、細切り昆布の煮物、筑前煮、焼き魚(鯖)だった。
「誰もが、納得する日本食だな。」
「日本人とは、変わっておるのぉ……そんなに、海藻が、好きかや。」
反論しようとする日本人を、何時の間にか箸を置いた片手で制し、口を開くサマノ。
「アーデルハイド、勘違いするな。別に、日本人全員が海藻好きなのでも無く、健康の助けになる各主成分効能が、判明したのも、昭和の後期から平成になってからだ。」
「しかし、食卓に、海藻が2品載っておるのぉ。これ如何に。」
「いいか、日本の国土は狭い。特に耕作可能な面積がだ。つまり、海藻でも食べなければ、食料が足りなかった。それだけだ。」
沈黙が重かった。……
「それを……海藻食を、食文化にまで押し上げたのは、先人達の知恵と試行錯誤のなせる業だ。」
「ならば、1つ解せぬ事がある。」
「何かな。」
「何故、日本人は昆虫を食さぬ。世界的に見れば、昆虫食は、珍しい事でもない。何故ぢゃ。」
「……2つ理由がある。まず1つ、日本の地理的状況だ。」
「それは、山林より海の方が、広いと言う事かや。」
「そうだな。で、2つ目だ。海藻は、昆虫と違って、飛んで逃げない上、加工も容易いからだ。」
「左様か、まあ、わらわの好みには、合わぬが。」
そう言いつつ、味噌汁から箸でワカメを取り出し、口に運ぶゾフィーだった。
「シカシ、私ハ、日本食ノ本文ハ、発酵食品ニアルト思イマス。」
「君は、本当に納豆好きだな。」
「大好キデス。日本食ナラ、納豆カケゴ飯ト、卵カケゴ飯ハ、外セマセン。デスカラ……。」
じっと、サマノを見つめるポロポ。
「……分かった。僕が、納豆をかき混ぜるだけでいいのか。」
「アリガトウゴザイマス♪」
「おかわりは、要りませんか。」
「一杯だけ、もらうよ。」
差し出された、空の茶碗に、程々のご飯を盛り付ける幼馴染。
「はい。」
この様な風景が、彼等の日常となるのか。それは、未だ誰も知らない。
* * *
「では、見て貰いたい物がある。こちらに参られよ。『救世主』様。」
そして、4人揃って外にでる。
「私、見覚えあるわ。海水浴場で。」
「確かに、いわゆる簡易シャワーだな。」
「『救世主』様が、仰ッタ『入浴中家ニ入ルナ。』ニ、抵触スル事無ク私達ガ、入浴スル為ノ物デス。木下サンニ頼ミマシタ。」
「外務省の役人にしては、仕事が早いな。」
すると、褒めて欲しいのか、子犬の様にサマノを見上げるポロポ。そんなポロポの頭を、撫でてやるサマノだった。
「はした金ぢゃが、金を払ったのは、わらわぢゃ。」
「30万円くらいだった。某価格比較サイトによればな。……しつこい様だが、そんなに、マウントを取ろうとするな。」
「……。」
結局、家の中と外、交代でシャワーを浴びる事になった。
* * *
明日00:00公開
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