第11話
「姦通罪ではないか!」
「姦通罪……既ニ廃止サレテイマス。現在デハ、不倫ト呼ビデス。」
「分かっておるわぁっ! ただ、これ程までに、我が子をないがしろにする親が、いるものかと思うと、冷静ではおれん!」
「ヨウヘイおじ様から聞いてはいましたが……聞きしに勝るとは、この事ですわね。」
「実ハ、母親ハ、我ガ子ヲ、放置シテイマシタ。『救世主』様ハ、家デ食パンヲ水道水デ、流シ込ンデイマシタ。」
「ちょ……それって、『育児放棄』じゃない!」
「話ヲマトメマショウ。」
「異議無しぢゃ。」
「ええ。」
「つまり、『救世主』様は、小学4年生から、今まで7年間、イジメに遭ってきました。」
「更に、学校側もイジメの、隠蔽に腐心するばかり。解決には、動かなんだ。」
「父親ハ、海外単身赴任。母親ハ、不倫ニ熱中スル余リノ『育児放棄』。」
沈黙が、重くのしかかった。あまりにも、情報が重かった為であろう。
「そう言えば、1つ気になる事が、あるぞよ。ショコラーデ。」
「何デス。」
「『守護霊』ぢゃ。『守護霊』は、何をしておった。」
「『守護霊』ハ、『守護騎士』デハアリマセン。本来ナラ輪廻転生ノ円環ニ、戻ルベキ所ヲ、『見守ル』ダケナラト、大目ニ見テ貰ッテイルニ過ギマセン。」
「誰が、大目に見ておるのぢゃ。」
「『森羅万象の理』デス。チナミニ、『殺人』ナドノ寿命トハ無関係ナ理不尽ナ『死』ガ迫ッタ場合、『守護霊』ガ、身ヲ呈シテ『庇ウ』事モ可能デス。」
「つまり、イジメの様な単なる暴力だと、そうはいかない。もし、銃や刃物を抜いたら、『守護霊』が、庇う事も可能。……よね。」
「ハイ。」
「仕方ないのぉ……ならば、是非に及ばず! こ奴らを、ひっ捕らえて、市中引き回しの上、磔獄門! さらし首とする!」
「わらわちゃん、落ち着いて。」
「わたわは、極めて冷静ぞ。要は、こ奴らが、『救世主』殿に『人間は邪悪なり』と言う情報を植え付けたのぢゃ。ならば! こ奴らを除去するが肝要!」
「おひおひ……そりゃ、『酔って無い』と主張する酔っ払いと、何1つ変わらねぇよ。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「わらわちゃん、私刑で何十人死刑にするおもつり? ここは、日本(法治国家)ですよ。」
「分かっておるわぁっ! ぢゃが、これだけ『救世主』殿を傷つけた罪を、放置するが国家の営みといえるか!」
「疑『救世主』派の筆頭とは、思えない発言。それに、疑問でしたわ。そもそも、疑『救世主』派の中心は、ヨーロッパ。その中でも財力で最大勢力を持つのが、ロートシルト家ですわね。」
「今、その話をするかや。構わぬ、疑問とやらを口にするがよい。」
「では、遠慮なく。何故、わらわちゃん程の大物が、自ら乗り込んできたのか。」
「何ぢゃ、左様な事、決まっておろう。『救世主』殿が、『本物』とは分からぬ。故に、全ての可能性を、含めて考慮し決断するが、上に立つ者の務めぢゃ。」
「それは、考えられ得る全ての『救世主』候補に、『護衛』を付けた訳ですわね。」
等と言う無駄口を叩かない幼馴染だった。
「1ツ気ニナル事ガ、在リマス。『救世主』様ノ、オ言葉ニデス。」
「何かしら。」
「わらわにも聞かせよ。」
「ハイ。デハ、『救世主』様ハ、人ノ心ヲ『樽一杯ノワイン』ニ、準エテイマシタ。」
2人共、頷いた。
「ツマリ、邪悪ナ心トハ、『樽一杯ノ汚水』。善良ナ心トハ、『樽一杯ノワイン』デス。」
2人共、「勿論、分かってる。」と言う意味で、頷いた。
「チナミニ、日本ニハ『心ヲ入レ替エテ真人間ニナル』ト言ウ慣用句ガ、在リマス。」
2人共、「勿論、知ってる。」と言う意味で、頷いた。
「つまり、『救世主』殿に、危害を加えた連中を極刑に処す必要無し。心を入れ替えさせれば、『救世主』殿も納得するぢゃろう。そう言う事かや。」
「ハイ。デスガ、樽一杯ノワインデアレバ、中身ヲ交換スルダケデ済ミマス。デハ、何ヲ以テ『心ヲ入レ替エテ真人間ニナッタ』ト言ウ証拠ニ、ナリマショウ。」
「何を、勿体着けているのかしら。あなたが、その答えを、胸の内に秘めている事くらい、分かっていますわ。」
「同感ぢゃ。申せ、そなたの答えを。」
「ハイ。デハ、彼ラニ『適正ナ罰』ヲ与エマス。具体的ニハ……。」
ポロポの提案を、基に議論は固まった。
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