第10話
「うむ、ご苦労。今後も引き続き張り付け。」
電話を切り、メイドに預けるゾフィー。
「たとえ、扉が、破壊されようとも、己の部屋で眠りたいそうぢゃ。」
「『救世主』様らしい、ですわ。」
「結局、何1ツ話ガ進ミマセン。『身辺警護ノ為』ト押シ切ッテノ同棲受諾……実質、コノ程度デス。」
「確かに、ここまで約1万4千文字使って、これだけじゃ読者も納得できるか。」
などと言う無意味な指摘をする者などこの世界に存在しない。
「時に幼馴染殿。『救世主』が、頑なな理由に心当たりは、ないのかや。」
「私は、『救世主』様とお隣同士だったのは、7年前までです。それ以降は、昨日まで存じ上げません。」
「そいえば、先程も左様な事を申しておったのぉ……して、ショコラーデ、さっきから何をしておる。」
「儀式ノ準備デス。」
「儀式? 何の術です。」
「『霊媒』デス。」
「例の『呪術』かや。」
「私ハ、『名前』サエ知ッテイレバ、任意ノ『霊魂』『精霊』ヲ『冥界』カラ『召喚』可能デス。ガ、コレカラ『召喚』スル『霊魂』ハ、名前ヲ知リマセン。」
「つまり、『霊媒』……とやらは、名を知る為の『呪術』。そう言う事かや。」
「実際ニハ、名前ヲ知ル術ヲ、準備トシテ実施シ、名前ヲ知ッタ事デ、引金型ノ術トシテ、本番タル『召喚』ヲ発動サセマス。今ハ一括リニ『霊媒』ト呼ビマス。」
「止めましょう。今は、彼女を準備に、集中させるべきです。」
「然りぢゃな。呼び止めてすまなんだ。作業終了時点で、教えてたもう。」
「構イマセン。」
暫し各人が、思い々々の手で、暇つぶしをしていく。そして……
「デキマシタ。」
「もうできましたか、流石。」
「おお、できたかや。して、早速発動してみせてもらえぬか。」
「分カリマシタ。」
『霊媒』を発動するポロポだった。
* * *
「おお、サマノぉ、シュクダイやったんだろ。ミセろよ。」
「宿題は、済んでる。で、君に見せてやる必要は無い。ましてや、宿題は、自分で終わらせる物だ。他人の宿題を見せて貰わないと、できないようじゃ、話しにならない。」
「うるせぇ!」
殴られるサマノ。
「キョーイクが、タリてねぇな。ツイてコイ!」
4人がかりで、サマノ1人を運び出す。更に……
校舎裏に場所を移す。
「フザけんな!」
罵声と共に、蹴られるサマノ。
「ナマイキなんだよ!」
またも蹴られる。4人がかりの暴行は、予冷が鳴るまで続いた。
「チコクすんなよ。サマノ。」
そう言い捨てて立ち去る連中だった。
* * *
「何ぢゃ! こ・れ・は!」
「私が、引っ越した後、こんな事になっていたなんて……。」
「日本ハ、トテモ善イ国デス。日本人1人々々ニ、『守護霊』ガ、存在シマス。デスカラ、ワザワザ『冥界』マデ『霊媒』スル必要ガ在リマセン。」
「しかも、『守護霊』は、『救世主』殿を常に見守っておる故、かような情報も聞き出せる。そういう訳かや。」
「ハイ。更ニ恐ルベキ情報モ入手シマシタ。」
「ほう、それは、教職員の事かや。」
「ハイ。残念ナガラ教師ガ、見テ見ヌフリヲ、シテマシタ。」
「最低ぇ。」
「更に、『救世主』殿には、何の落ち度もない。『間違っている事を、間違っている。』そう、申したまでの事。かような状況では、人間を邪悪と断じる事無理からぬ。」
「…………いやぁぁな、予感がしますの。親御さん、特に母親は何をしていたのかしら。」
「ハイ。ソチラノ『名前』モ、『守護霊』殿カラ教エテ頂キマシタ。」
* * *
場所は、東京某BAR、時刻は、18:58。
鈴の音をお供に、出入口が、開いた。
「いらっしゃい。」
バーテンダーの素っ気ないご挨拶は、BGMの様な物だ。
背広姿の若い男が、若作りの女の隣に腰かける。
「おそぉい。」
咎めると、甘えるの間を狙った微妙な声音。
「あれ、そんなに急いでた? それとも……」
「早く、逢いたいのよぉぅ。」
「そんなに持て余してるのかい。海外単身赴任中の夫を待つってのは。」
「そぉぅよぉぅ、今日は、ちゃんと慰めてよねぇ。あ、そだ。先週行ったホテル、雰囲気良かったわ。」
「今日も、だろ。……お会計、お願いいたします。」
男が、会計を済ませる。と、2人は、店を出る。
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