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第12話:電子の鳥Ⅴ


 西川燐那はデータに彩られた空を見上げ、鳳蝶の羽ばたきを見た。


仇敵を前にして覚醒したのだろう、視界の端で際限なく上昇する数値がその証明だ。

あの様子ならばきっと自分達の正体、それどころか【絶対リコレクション・記録】リグロウスによる記憶改竄ですらも気付いているのかもしれない。


鳳蝶悠奈という少女が死んだ日、そして双子が転生した日からずっと彼女達『未元の能力者』はその事実を隠し、微塵も明かそうとしなかった。

双子の師である真也ですら若干迷いながらも最終的には普段通り接することを選んでいた。

そして特に、旧友に大規模な記憶処理を依頼したのは他でもない燐那自身である。


────少女に日常を失ってほしくない、いつかの自分の様に。


そんな善意の為に彼女達を苦しめてしまったとしたら、空が爆轟に包まれるまで燐那は入り混じる後悔と感動をリピートしていた。



 そして現在、鳳蝶姉妹の放った電子の波は裏世界における一切を震撼させていた。

電脳世界と呼ばれるだけあってその影響は無比たるもの。

粒子移動による純粋な熱と電磁波は浮かんでいたデータ群の大半を消し飛ばし、一瞬にして夜闇を眩い真紅へと塗り替えてしまう。

攻撃を予測し防御プログラムを7重に展開しなければ、今頃データで構成されたM.E.T.I.Sの肢体は壊死(オーバーホール)していたかもしれない。


「……ッ!! 無事かしら、M.E.T.I.Sちゃん……?」

「うひゃ~! さっすが『未元の能力者』……いや、この世界の『電磁気そのもの』と言った方が良いのかな? 無断で連れて来た甲斐があるというものだよ」

「ええ、自慢の後輩だもの」


あれ程の発破を受ければ電子配列の塊であるあの鳥も無傷ではいられない。

確信に変わりつつある期待を胸に2人は天を仰いだ。


「…………」

「…………M.E.T.I.Sちゃん……」

「うん、燐那さん……私にも見えるよ」



 西川燐那の能力【絶対ビッグアルカナ・数値】ナンバーワン


触れた物体における体温や存在確率といった様々な数値を変化させる『未元の能力』。

またこの異能には愛娘にも遺伝した『数値を視覚する』という効果がある。



そんな彼女と元よりAIであるM.E.T.I.Sは嫌でも知ってしまった。

上空には依然として上昇を続ける数値が見えている。

電子の鳥は健在。それどころか────


その直後、黒煙を突き抜けて墜ちる影があった。

自らの力で減速し、そのまま地面へと激突したそれは───傷付いた日奈と夜奈の姿だった。

雷の直撃を受けたわけでも、先程の攻撃で自爆したわけでもない。

仰向けに倒れた姉妹の胸にはそれぞれ袈裟懸けに、鋭利な何かで切り裂かれた痕があった。


それが意味するもの───最悪の事態を、顔を上げた燐那は目の当たりにしてしまう。


煙が晴れ鮮明となりゆく空に、ぽっかりと空いた穴、そう形容出来る程の光が在った。

やがて視界が開けたとき、それが四肢を有する小さな人型だと気付く。

天使の如き様相で仮想の地上に降りたその幼児は空に浮かぶ鳥を指差し、そして口を開いた。



「ァ────メ、ぃてィス……君ガ『裏』ノ管理者M.E.T.I.Sダヨネ? 僕ハ────」



「────そう。そこまでするんだね、『電子の鳥』……」




申し訳ありません、本日はいつもより若干短めでお送りしました(-_-;)

何というか、区切りが良かったのです......。


それでは次回もお楽しみに!!

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