ゲーム世界なのにモブが軽視されるなろう界隈
ファンタジーを書く上で一番気にするのは何だろうか。可愛いヒロイン、主人公、敵役、個々の考えは色々あるだろう。私の場合はモブが最も重要だと思っている。
実際にRPGなどをプレイしていて、モブの会話に耳を傾けた事はあるだろうか。イベントやゲームの進行に必要なメタ情報を除けば、モブは周囲の事柄に対して強い関心を持っている。
状況で例えるならば、戦時や飢餓や事故などの苦しい状況であれば、悲しみに暮れていたり、良くない状況を揶揄して小粋な皮肉の一つを言ってみたりする者もいる。逆に傭兵や商人のような立場であれば、むしろ人の不幸で金を得るチャンスだと喜んだりするのだ。
土地柄で例えるならば、貧富の差が激しい国という設定一つであっても色々ある。不便な立地にはスラム街が形成されていき、そこに住む者達は皆みすぼらしい恰好をしているし、治安が悪く、全体的によそ者に対する当たりがきつかったりする。
街の景観を損ねるという理由で衛兵に路地裏に追い込まれているような事もあるかもしれないし、餓死者の死体がそこいらに転がっているのかもしれない。そして、そんな窓際に追いやられたモブ達は追い込んだ側に対し、「あ~税ばかりとりたてるクセに福祉の一つも満足に還元しないクソ貴族はいい加減くたばってくれんかな~」くらいの恨み言や愚痴の一つを言ってのけるかもしれない。その場面を偶然主人公が通りすがる事もあるだろう。
すると、この台詞一つでスラム街の住民と腐敗した貴族との対立という空気がその国の中に生まれる。モブ達はゲームのファンタジー世界においては一人一人が生活しているのである。
名も無きモブ達は思考し、明日を生きようとするし、身内の事を心配したりもするのだ。
重要人物数人だけで回される台詞だけでは世界観は構成されないのである。なろうしゅが突拍子もなくブリ〇チのオサレな台詞をそのまま言っても単なる中二病のナルシズムにしか見えないし、いきなり丸太をその辺から引っこ抜いて振り回して吸血鬼のような何かを虐殺しても面白くもなんともないのだ。
世界観を上手く作り、主人公達の台詞や行動に説得力を作り出してくれるのは名も無きモブ達であり、彼らが生き生きしているゲームファンタジーでは、主人公が多少痛いセリフを言ったとしても説得力が出ている。
……まぁ、何が言いたいのかをまとめると、"モブが生きてない"ファンタジーは読んでてもつまらないと個人的に思う。モブ一人一人にもそれまでに生きてきた背景や思想があり、それに基づいたセリフを言うのである。その人生の重みは大抵のなろうしゅにも決して引けは取らないはずなのだが、多くのなろう小説では軽視され過ぎているように思える。
名作ゲームに登場するモブキャラの放つ何気ない台詞には"知性"を感じさせるものがあるので、時にはそういった創作物のモブキャラの台詞を読んでみるのも面白いかもしれない。
そう、例えばザエボス・ローゼンバッハさんや蘇芳色の鎧の上官さんのようにな!
しかしながら、小説という媒体とモブの相性はすこぶる悪い。重点的に描写するとテンポがブン……ブン……な進行を読者に強要してしまうし、一人一人に背景設定をするのも手間暇かかるのである。
漫画やゲームと違って、小説でそこに居る事を描写するのも結構大変な話だったりする。名前を割り振るつもりが無くてもどうしても名前を呼ばせる必要が出てきたりする。なんせ視覚情報がないのだから、キャラ分けできてなければ読者目線で全く見分けがつかないのだ。
上手くモブ書けるようになりてぇ~な~俺もな~