エド
メアリのやつあの世で会ったら逆さづりにして地獄の窯の中で煮てやる。
エドは体にこびりついた狼たちの血をぬぐいながら思った。封印が解けたと思ったらこんなちんちくりんの世話をしなきゃいけないだなんて。ため息をつきながらこちらをポカンとした顔で見る少年に話しかけた。
「お前が俺を呼んだのか?」
コクリ
「あなたは誰ですか・・・?」
恐る恐るアルフレッドが尋ねた。
「エド。 昔は名の通った精霊だった。で、お前は?」
「アルフレッド・ウィリアム・チェスター。・・・もうチェスターじゃないけど・・・」
少年、もといアルフレッドがうつむきながら答えた。
「俺はエド。メアリを知ってるか? メアリ・アレクサンドラ・チェスター」
「おばあ様を知ってるの?」
ちっ、と舌打ちをしながらエドは言った。
「精々あの性根腐ったくそ女に感謝するんだな。 あいつの魔法でお前は助かったんだよ。」
「すごい! やっぱりおばあ様は魔法が使えたんだ!」
「そのおかげで俺はクリスタルに何年も封印されて今度はお前が死ぬまで子守だ。」
「ご、ごめんなさい・・・」
気圧されたようにアルフレッドが謝るとエドはため息をつきながら言った。
「で、なんで公爵家のお坊ちゃまが狼のおやつになろうとしてたんだ?」
うつむいていたアルフレッドの顔がさらに曇った。
「僕は役立たずだから・・・ 父上が養子を迎え入れたんだ。魔法も剣もできる公爵家にふさわしい養子を。 何にもできない僕はいらないんだよ。転移魔法で飛ばされたんだ」
「なるほど。 で、お前は助かった。 今後どうするつもりだ?」
「どこかの辺境でひっそり暮らすよ。魔法も剣もだめだしね。」
エドはにやりと笑いながら言った。
「ずいぶんとお人よしだな。 お前を捨てた父親とその養子とやらに復讐したりはしないのか?」
「言っただろ、僕は魔法も剣もからっしきだ。」
泣き笑いのような顔でアルフレッドが答える。
「できると言ったら?」
「え?」
エドの真っ赤な目がアルフレッドを射抜く。
「もし、お前が魔法も剣も人並み以上に使えるとしたらあいつらに復讐するかと言っているんだ。」
数秒の沈黙の後アルフレッドは言った。
「しないよ・・・できない。父上は父上だ。たった一人の父親だから。」
「メアリの孫らしいな。」
エドはかすかに微笑みながら言った。
「アルフレッド、長いからアルでいいか。 アル、お前は冒険者になれ。」
「無理だっていてるじゃないか。僕は役立たずなんだから・・・」
「お前はメアリと同じタイプだ。お前は魔法も剣も使える。




