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中編


「うん。……華ちゃん」


少し照れたように笑う恵ちゃんの笑顔はとっても可愛かった。


「順応早えー。さすが、華。奥手そうな子なのにもう仲良くなってるよ」

「基本何も考えずにその場の思い付きで行動してるからな。あの子もそんなに身構えずに接することができるんだろ」

「それ褒めてんの?」

「あたりまえだろ」



そうこうしている間にも二人はすっかり仲良くなったようで、初めあったぎこちなさもいつの間にかなくなっている。二人とも楽しそうだ。

いつまでも見ているだけのつもりはないため、二人に近づいていった。

途中で華が枢馬達に気づき目が合う。その瞬間、なぜだか目を反らされた。なんだか、笑いを堪えているようにも見える。どうにもいやな予感がするが、あまり気にせずに進む。


「恵ちゃん、さっき話した枢馬だよ。あと琢磨」

「枢馬だ。よろしく」

「俺は琢磨だよ、よろしく。恵ちゃんかわいいね」

「恵です。どうぞよろしくお願いします」


枢馬から差し出した手で握手する。

だがしかし、気になることがあった。先程からどうも視線が合わない。いや、恵の方から意図的に避けられているようにも見える。困惑しながらもどうにもできずにいた。


「はははははっ!!はは……ひぃー、ひぃー」


だが突然、大人しくしていたはずの華がいきなり笑いだした。呼吸もままならないような様子でひぃー、ひぃー、と変な声も出している。うずくまってお腹を抱えだして、しばらくが経った。


「どうしたんだよ、華」


ようやく華の笑いが止まったあたりで、枢馬が声をかける。


「いや、ごめ……。ちょっといたずらしただけのつもりだったんだけど……はははっ」


そう言って再び笑いこける華にこれ以上は話は聞けないと、恵の方に聞くことにした。


「華になんか聞いた?」

「え、えと…その……」


何か言うのを躊躇っている様子に、華があることないこと吹き込んでいるのはすぐに分かった。問題はどんな話を捏ち上げたのかだ。


「どうせ華の作り話だから。どんな話だったの?」

「え!?そそうなんですか!?私、てっきりその……。えと、あの……」


そんなに言いづらい事なのか、なかなか話してくれない。だがしかし、枢馬には他人に言えないようなやましいことはないはずだ。意を決したようにようやく話す、恵。


「あの、枢馬君には実は可愛らしい趣味があるんだって」

「ん!?」

「お部屋の中にはとっても可愛らしいお人形がたくさんあったり、プリ〇ュ〇が好きなんでしょ?小学校の頃には仮装もたくさんしたって」

「「うはははは!!」」



ピキッ。


「「ん!?」」


何かが割れたような音が聞こえた気がした、華と琢磨。だが実際には、どこも何も割れてはおらず、二人が聞いた幻聴に過ぎない。


ガツンッ!!

そんな音が出るはずがないのに、衝撃はそれくらいの威力があった。

それは、枢馬が華と琢磨の頭を殴った音だった。もちろん、パーではなくグーで。


「「っ!!痛っ!!」」

「二人とも大丈夫ですか!?」


そして、この中で一番驚いていたのが恵だ。華と琢磨は、まあ、長い付き合いでそうなることは予想できていた。それでも思い切り笑ったのだから自業自得だ。


「え、えと……。人の趣味はそれぞれだと思います。だから……いいと思います」

「「っぷ。……」」


恵の大きな勘違いにまたもや噴き出しそうになったが、枢馬にギロリと睨まれたので、さすがに二発目を食らうのは勘弁(かんべん)と思った二人は抑える。そして反射的に背筋を伸ばし、指先までまっすぐに膝にあて直立不動となったとなった二人は、同じように自分達はなにもしていないというように目を反らす。


「恵ちゃん」

「はい」

「かなり誤解があるようだけど、そんな趣味は持ってないよ」

「え!?じゃあ、部屋にお人形があったとか」

「ないよ」

「プリ〇ュ〇は」

「ないよ」

「え~~!?」

「そんなに驚かないで」


本当の本当に恵は作り話という名の嘘を信じきっていたのだ。微塵も疑わずに。それにはさすがに罪悪感を感じた華だったが、反応はおもしろかったなと思っていた。


「華ちゃん……」

「ははは。ごめんね、恵ちゃん。まさか本当にここまで信じるなんて思ってなくて。でも、いい反応だったよ」


グッジョブというように、恵に向かって親指を立てる華。そんな事をやっていたら枢馬に肘で小突かれた。今度は力が入っておらず痛みはない。


「反省しろ。せっかく友達になったのに嫌われても知らないぞ」

「え!?ごめん、恵ちゃん。嫌いにならないで!」

「これくらいで嫌いになったりしないよ。ふふふ」

「案外、華も騙されやすいんだな」

「ちょっと、それって私を騙したの!?」

「まさか、本当に信じるとはな」

「もうっ!そんなに根に持たなくてもいいじゃない。ごめんってば」

「ちょっとした異種返しだ。もうこれに懲りたらやめるんだな」

「分・か・り・ま・し・た!!」

「ふふふ。華ちゃんと枢馬君は仲がいいんだね」

「恵ちゃんも悪い冗談はやめて。もう」



付き合いは長いから、その分気安い相手だと思っている。ただそれだけだ。

そんな華に対し、枢馬は_____。






数ヶ月後___。


この頃になるとそれぞれが決まったような何人かでいることが多い。とはいえ、狭い教室の中ではそれだけということにはならずほぼ全員と友達というような仲には自然となるものだ。

だがしかし、やっぱり決まった何人かで一緒にいることの方が圧倒的に多い。恵ちゃんと一番に友達になれてよかったなぁ。


前から決めていた通り、学校帰りや休日にいろいろな場所に行った。ご飯を食べたり、お店で服や小物を見たり。そこには枢馬や琢磨が一緒に来るというオプションもあったが。

あと、本屋さんにも行ったりした。恵ちゃんが性格のままというか、本がとっても好き何だって。また今度には二人で行けるといいな。




そしてもう一つ。

そろそろ中学生初めてのテストの時期だった。


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