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前編


「……ろ。起きろって言ってるだろ、華!!」

「……ん。ふぁあ。おはよう、枢馬(くるま)


AM6時30分。地球が1億と5003回回った日……冗談です、何回だなんて分かりません。まあ、細かいところはどうでもいいです。とにかく、朝、枢私を起こしに来た。

枢馬は私の幼なじみで丁度私の隣の家に住んでいる。幼稚園からもだいたい同じ組になったりしている、所謂腐れ縁というやつ。それよりも前からも一緒にいた。そんな感じで物心ついたときからずっと一緒だった。



そもそもなぜ、家族でもない枢馬が私の部屋まで起こしに来ているのか。それは私達が小学校1年生の頃まで遡る_____。






小学校の入学式を終えて次の日、入学式では両親と行ったため、子どもだけで学校に行くのは初めてだった。華と枢馬の二人は当然のように一緒に行く約束をし、枢馬は7時には待っていた。

だがしかし、待てども華はやって来ない。30分後、さすがに遅すぎると枢馬は華の家まで迎えに行った。そしたら、こともあろうに華はまだ寝ていたのだ。華の両親は、たまたまその日は仕事や用事があり忙しく、朝食を用意し華を起こしてそのまま仕事に行ってしまった。


一度起こされたはずの華だったが、そのまま二度寝してしまい、枢馬が来た頃にはぐっすり夢の中。それを見た枢馬は、慌てて華を起こし準備させた。

着替えて顔を洗い、ご飯を食べでて準備が整った頃にはどれだけ急いでいても8時になっていた。余裕をもって予定をたてていたのだが、さすがに遅刻。一番迷惑を被ったのが、華に巻き込まれて遅刻した枢馬だった。華をおいて行かずに待っていたのは枢馬の優しい性格からだ。






その日からずっと学校に行く日には必ず枢馬が迎えに来ている。もちろん、遅刻なんて事にはならない。


「いい加減さぁ、枢馬が起こしに来るのやめない?」

「華がしっかり自分で起きられればな」


そう言って聞く耳持たず、枢馬は下へおりていった。


「はぁ」


今日はついに中学校の入学式。せっかく小学校から中学校に入るのだから、心機一転して変わりたい。だいたい、この年にもなって幼なじみに起こされるって変だし恥ずかしい。明日は早めに自分で起きようと心に決めて、制服に着替える。

初めて着るこの制服は、これから成長する身体に合わせて少し大きく、着なれていない感じがなんだかムズムズしている。だがしかし、これからようやく中学校に入るんだという実感がようやく出て、なんだかうれしい。


「やっと起きて来たのか、遅いぞ」

「べつにいつもと同じくらいだよ、枢馬。おはよう、お母さん」

「おはよう、華。いつまでも枢馬君に起こされているようじゃ、まだまだ子どもね」

「明日からはちゃんと自分で起きるよ」

「なら頑張ってね」

「はーい」


お父さんは既に仕事に行っていていない。だから今いるのは私とお母さん、そして枢馬だけだ。枢馬は飲み物を飲みながら席についている。私はその前に座って朝食を食べる。

枢馬はすでに自分の家で食べているし、お母さんもお父さんと一緒に食べている筈がだから、一人で食べている。唯一目の前にいる枢馬がいるといえるくらいだろうか。

お母さんは洗濯機が終わったという音で、そちらの方へ行く。リビングに残ったのは当然、私と枢馬だけだ。




「ねぇ」

「何だ?」

「明日はちゃんと起きるからこなくてもいいよ」

「それは明日本当に起きれたらな」

「……」

「……」

「いい加減毎朝早くに来るのも大変でしょ」

「もう慣れたし、遅刻するよりはずっといいからな」

「……」

「……」


いったいいつまで根に持つつもりだ。そう思いつつも、正論にぐうの音も出ない。私はもう何も言わなかった。とりあえずは明日だ。再び心に決めて早めに朝食を片付ける。




「いってきます」

「いってらっしゃい、華。枢馬君、華をよろしくね」

「はい」


お母さんに見送られて私と枢馬は中学校への道を歩く。小学生の頃と同じで隣に歩いているが、確かに変わった二人の関係。あの頃はお互いに子どもで、まだ仲良く手を繋いで歩いていた。初めの方では、通学路を間違えもした。枢馬は違うと言っていたのだが、頑固な私は無理矢理私が合っていると思った方へ連れていった。だがしかし、結局は間違っていたなんてこともあったりした。幸いすぐに間違いに気づいて戻ったため遅刻はしなかったが。

今はもうこの辺りで道に迷ったりはしない。中学に入ったから、これから友達と今までよりより遠くへ、例えば電車やバスに乗って遊びに行ったり、あるいは学校帰りにどこかのお店に寄ったりなんてこともいいと思う。今までのように休日でもいつでも枢馬と一緒ではなく、新しく女の子の友達をつくって遊びたい。


少しずつ、でも確かに変わっていく関係に悪い気はしなかった。ただただこれから先の楽しみに胸が踊っていた。






学校に着けば、さっそくクラス分けの書かれている掲示板があった。周りにも同じ新入生であろう子達がたくさんいた。私と枢馬もその中に混じって掲示板を見る。クラスはAからDまでの4クラス。どきどきしながらもそれを見ると、Bクラスに私の名前があった。


「あった!!枢馬はどこだった?」

「華と同じクラスだな」

「え!?嘘!?」

「こんなことで嘘ついたってどうするんだよ。ちゃんとよく見ろよ」


少し飽きれぎみに言う枢馬の言うとおりに見てみれば、確かにあった。少し、というよりかなり驚いた。これで小学校から7年間同じクラスになるのだ。幼稚園も合わせればもっとになる。さすがにもう無理だと思っていた。


「何だよ。いやなのか」

「いやいや、そんなんじゃないよ。ただ小学校のクラスより増えてるし、まさか同じクラスになれるなんて思ってなかったから」


いやだなんてそんなわけないので慌てて否定しておく。


「あっそ」


もうどうでもいいというような感じで下駄箱の方へと歩いていった。私はそれに慌てつつ、ついていった。心無しか、後ろから見た枢馬の耳が真っ赤になっていた気がした。




教室に着くと、ちらほらと人が集まり出していた。小学校からの友達と仲良く話す者や、かたや誰とも話さずに一人席に座っている者もいた。


「同じクラスだな、華、枢馬」


そう言ってきたのは、小学校からよく遊んでいた、琢磨。枢馬と違って小学校からの付き合いになるが、枢馬と同じくらい仲のいいつもりだ。


「琢磨も同じクラスだったのか。偶然だな」

「だなーまたよろしく!」

「はいはい。って、それどころじゃなかった!」


いけない、いけない。女の子の友達作るんだった。二人とずっと話してる暇なんてないよ。早くしないと後じゃ話しかけずらくなる。こういう時は勢いでいくのが一番だと思うの。

誰に話しかけるべきかそれが問題だ。何人かで話し合っている子達に混ざるのがいい?一度輪に入ればいっきに何人も友達ができる。それとも、一人でいる子?一人だけなら話しかけやすそうだな。


この時の私はなんだか獲物を狙う狼という感じで目がぎらついていたらしい。これは、後から枢馬に聞いた話だ。勿論、私にそんな自覚はない。



「ねぇ、私華って言うの。よろしく」

「え!?え、えと……恵です。よろしく、お願いします……」


結局私が話しかけたのは一人でいる子だった。優しそうないいこだと思ったから。初めはいきなり話しかけた私に驚いた様子だった恵ちゃんだったけど、たどたどしいながらも返事を返してくれた。


「よろしくっ、恵ちゃん」



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