プロローグの更に前
初投稿の琥珀彦です。よろしくお願いします。
その街は円環状の守護壁に囲まれている。
壁は海に面した南側で途絶え、港を抱く入江になっており沖には二対の高い塔がその先端から光を放ち建っていた。
壁に囲まれた中央には巨大な紫水晶の群晶が置かれ、中でも一際高い結晶が天を突くほどにそびえ輝いている。
水晶の間からは清水がほとばしり広い噴水の水面に落ちていて、噴水の周囲はさらに広い広場になっており人々が賑やかに行き交っている。
噴水広場から広い道路が三筋北に向かって伸びており露天の並ぶ中央の通りを挟むように岸に並木と緑地帯が備わった水路が二本流れ水面に花を浮かべている。
三筋の通りの北の端には中央の物より少し小ぶりながら広場と美しい噴水があり、西には市役所、東には大きな図書館が建っていて市役所と図書館の間の通りを少し北に行くと植物園があった。
街の中心部の通りはだいたいは碁盤の目のように規則正しく設けられているが細い通りはその限りでは無いようだった。
街を上から眺めると植物園の東西は森になっており泉が湧いているのかそれぞれ小さな湖を抱いている。
湖からはそれぞれ小川が街の東西の農地に水を運んで海まで流れている。
もう一度中央の噴水広場に目を戻す。
広場から東西南それぞれの方向に広い通りが延びており、南は港に東西は防壁に開いた門に繋がっている。
西門を出ると柔らかい曲線を描く低い丘と小さな森をところどころに置いた草原が広がり西に向かって街道が伸びている。
東門を出ると北の山脈から流れ出たそれなりに大きな河があり、その河の橋を渡ると深い森が続いていた。
街の北側はところどころに大きな岩や高山の花畑のような植物の群落のある荒野が広がり、更に遠く幾重にも重なった高い山脈が東西に連なっているのが見える。
ここは紫水晶の尖塔に守られた美しい街。
中立自由独立都市・アメジスティア。