序章
『間に合ってるんで結構です。』
「そんなこと言わずにさ~」
ああもう。しつこいな。嫌そうな顔されたらすぐに引くのが美徳でしょ?
「ほんと可愛いねキミ。こっちに来てオレらと一緒に遊ぼうよ」
と派手に着飾った男は私の手を引こうとする。しかしそれをするっとかわす。
『すみません。人を待っているので貴方がたと遊んでいる時間がないんです。』
そう言って足早に一本先の道を曲がる。
…追っては来ないよな。ホッとする。でも待ち合わせ場所と違うところにきてしまった。連絡しておこう。
ごめん。一本奥の道にいる。来てもらえると嬉しい。
そう打って待ち合わせ時間まであと10分を指した時計を確認する。
まだ少し時間があるな。ゲームでもやろうかなと最近ハマっているパズルゲームのアプリケーションを開く。
「ねえねえ。」
ああ隣に立ってる子可哀想。この辺ナンパ多いな~。
「ちょっと~?キミ?」
うおっ。このドラゴン防御力たけえ。なんでだよ。鱗か。
「ねえ!!」
近くで叫ばれる。五月蠅い!
『あーあ。ゲームオーバーになっちゃったじゃん。スタミナ無駄になったー。』
ナンパしてる奴の方を向き、ここぞとばかりに因縁をつける。別に怯えている隣の子を助けようとしたわけではない。断じてない。
「あん?てめえじゃね…。ごめんね~、こいつがうるさくて。」
と二人組のうちの一人が突然笑顔になる。そして隣の女の子も胸をなでおろしている。いや、私は自分からナンパされに行ったわけじゃない。逃げられると思うなよ。
『ああ私に話しかけていたわけではないですものね。すみませんお邪魔してしまって。』
私は再び画面に目線を落とす。
「いやーそんなことないって。これから食事でもどう?四人で一緒に行かない?」
『三人で行ったらどうです?私、人と待ち合わせしているので。』
「へえ~、だれ待ってるの?」
はい、きました。これ聞かれたら誰を待っていてもこう答えましょう。
『彼女です。ではさようなら』
軽く頭を下げる。時間を確認。ん?過ぎてる。早足でその場を離れる。リカが遅れるなんて初?いや、場所把握されてないだけだな。
ごめんと頭の中で謝っていると、少し遠くから声が聞こえる。
「おい!危ないぞ!逃げろ!」
その言葉を聞いた直後、私の身体に激痛が走った。