プランAはギルド員
タイトルの意味はそのうちわかります。
「さ、ヒカル。ここがギルドだよ」
流石にギルドへの道は間違えないらしく、まっすぐギルドに向かうことができた俺たち。
ーーーでけえ。
初めて目にするギルドの感想は、紛れもなくそれだった。
なんといっても、他の民家なんかの三倍は高い標高、学校の敷地よりでかいであろう面積。日本の高層ビルには劣るが、しかしこのでかい建物、この時代の文明でどうやって作ったんだろう。
まあ、魔法があるんだし、どうにでもなるか。と納得して、中に入ってみる。
「おお……」
「すごいでしょ?とりあえず、素材を売ってみようか」
さくさくと武器屋に進むフィレス。なるほど、中に色んな店があるから自ずとギルドの面積も増えていくんだな。
「すいませーん、これとこれと……」
フィレスは袋からオーガのドロップアイテムやチンピラから奪ったものなどを売り払う。俺の唯一の刃物、小刀も売られた。
……そういえば、アイテムボックスとかいう便利スキルがあったんだし、袋ごと入れてやればよかったな。
気づくと、フィレスは結構な金額を抱えていた。
「……フィレス。お前、なんで貧乏なんだ?」
「宿代で結構飛ぶから……。そもそも、オーガ二体と出会うことなんてほとんど無いし。普段はゴブリンばっかり狩ってるよ」
そりゃそうだ。あんなやつそこらに居たら、今ごろ人類なんて滅んでる。
「じゃあ、冒険者なんて儲からないんじゃないのか?」
「他の人たちは森とか洞窟に入って狩りができるからね……」
森→火事
洞窟→一酸化炭素中毒
なるほど。パーティを組めない訳だ。
「それより、武器買っていいよ!ここ品揃えもいいし、お金もあるし!」
「ん、そうか?なんかヒモみたいだが……そうだな、じゃあこれ」
数ある刃物から俺が選んだのは、一本の刀だった。
元々俺は刀術しか使えない。村雨流剣術というのは日本刀で戦う武術なのだ。こちらの剣とは勝手が違うだろう。
しかしこれ、モロ日本刀だけど、我が国から来た者が居たのだろうか。鞘から抜いたときのこの引き込まれる感じは、間違いなく業物なのだが。これにも異世界補正が付いてるなら木刀と同じく折れない刀になりそうだ。
「おう兄ちゃん、それがいいのかい?変わってるな。そりゃ一応売りに出してるが、使い方がよく分からんから50マーズでいいぜ」
おお、それはラッキーだ。他の大剣なんかは300マーズとか書いてあるのに。
気前のいいおやじに50マーズ払い、サービスとして紐をもらう。バスローブにくくりつけてみたが、格好がつかないので服も買った。ズボンだ。これで屈んだときに中身が見えるかも、なんて女子みたいな心配が必要なくなる。
「せっかくだし、依頼受けてみる?って言っても、割の良いのは無いね……」
フィレスの言う通り、貼り出されている依頼は、掲示板中すべて受けてもせいぜい宿に3泊できる程度。依頼は10枚ほどなので、とても割がいいとは思えない。
となると、やはり考えてきて良かったか……。
「フィレス。プランBを実行する。が、さしあたってお前に聞かなければならないことがある。お前、この街で暮らしていきたいとかあるか?」
真面目な顔をして訪ねる。フィレスも一瞬笑い飛ばそうとしたが、真面目な話だと分かると、ゆるゆると首を振った。
「親との思い出の家は、もう売り払っちゃった。今住んでるのは全然知らない人だよ。そんなの、見たくない。どこかに行くんなら、ボクも連れていってほしい」
「……そうか」
急にシリアスな雰囲気。俺が作ったのだが、なんか嫌なので話をできるだけ早く進めることにする。
「なら、準備するものがあるな。フィレス。世界地図とかあるか?」
「それなら、ギルドの壁に貼ってあるよ」
フィレスが指さす方向には、確かに世界地図があった。……って、なんかすげえ形だな。例えるなら……そう、ゼル○の伝説のトラ○フォースだ。三角が三つある形。
上の三角はリンダという名前らしい。二つ繋げるとドブネズミみたいな美しさを手に入れられそうだ。
ここはとにかく、治安が悪い。が、その分物価が安い。フィレス曰く、統治することができるような頭の良い人が生き残れる所じゃない、と。つまり、ここには国も街も集落すらも無いのだ。つまりここに行けば建国ができる。男のロマンだ。
左下の三角はシッカ。ここはリンダの逆。つまり治安が良いが、物価は高い。庶民には過ごしにくいものの、犯罪など滅多に起きない平和な大陸。もっとも、働いたときの給料もでかいんだけどね。だから住めない都市ではない。冒険者の出番は無さそうだが。
右下はロード。リンダとシッカの中間だそうだ。物価も普通、治安も普通。面白味は無いが、堅実な感じだ。ちなみに、ここドラッグはロードにある。
「よし、あとは乗り物か……。船か飛行船みたいなのはあるか?」
「船なら、ミールって貴族が持ってるよ。……でも、貸してくれるかなあ?凄くあくどい人で、のしあがるためには殺しも厭わないって話だよ。実際何人か暗殺されてるらしいし」
「おっ!それは……理想的だな」
あまりにお膳立て感があるので誰かの陰謀な気もしないでもないが、しかしこんな陰謀があるわけないので、素直に運が良いんだと思っておくことにする。
「よし、金のため、そして世間のため。そのミールって貴族、叩き潰してお金をくすねよう」