挑戦者
久々の戦闘回。
「お初にお目にかかる。拙者、カインと申すもの。ヒカル殿と戦いに参ったのだが……」
カインと名乗った忍者は俺たちの方をみる。そこには、キスをした直後の男女。
「……出直すべきだろうか」
「「いやっ!いいからやりましょう!」」
今まで生きてきてここまで恥ずかしかったのは初めてだ。
「……別に二人が好きあっていようと、私にはなんの問題も無いの。でも、人目は憚ってほしいの」
「ごめんなさい」
「す、すまん……」
珍しくシャールが怒っている。まあ、仲間の告白シーンをまざまざと見せつけられたら不機嫌にもなるだろう。……マジごめん、シャール。
「い、今時の子どもはかなり進んでおるのだな……。拙者など、まだおなごの一人も捕まえられず……くっ!」
(おい、泣き出したぞ)
(どうする?この人こそ日を改めるべきなんじゃない?)
(……私にはちょっと気持ちが分かるの)
忍頭巾のせいで顔が見えず、年齢はわからんが、カインとやらも苦労しているのだろう。
「……こほん。失礼、取り乱した。ともかく、戦いに来たのだ。少々今は訳あって戦闘意欲が増しておる。さあ早くやろう、特にヒカル」
「殿が消えた!」
よほど腹に据えかねたのだろう。理不尽に思えるが、まあしょうがない。八つ当たりを受けるのも彼女持ちの宿命か。
「では、御免!」
カインが俺の懐まで迫ってきた。俺は慌てず膝蹴りを食らわせて……。
痛みに悶えた。
「うおっ!?痛ええええ!!!」
痛いのも当然、そこにあったのは丸太だったのだ。
「か、変わり身……!」
「なんだ、知っておるのか!まあ、拙者の術はそんなものでは無いがな!」
「後ろかっ!」
声の聞こえた方へ刀を振る。が、空振り。どころか、人の影さえ無い。
誰も居ない事を確認した瞬間、俺は反射的に右へ跳んだ。
「ぐうっ……!?」
「は、避けるか!なかなかいい勘をしておるな……!なら、これでどーーー」
「『タイタン』!」
俺だけでは役者不足と思ったのか、フィレスも参戦する。つまり、それほどの相手ということ!
巨大な炎の腕が、カインを焼き尽くす……と思いきや。
「ほう、やるではないか!」
「う、嘘……!ボクの炎を……」
斬った!
俺でさえできない、実体の無いものを斬るという芸当!さてはこいつーーー
「お主らが思っていることは分かるぞ!拙者を固有能力持ちだと思っておるのだろう!しかし違う!炎を斬ったのはこの刀、神魔剣の能力だ!ところでおなごーーーフィレスという方かーーーお主は固有能力を持っておるな!この熱量、それに形!よく鍛練しておるではないか!」
「う、ううう~!」
炎を斬った相手に誉められて、フィレスが唸っている。気持ちは分かるぞ、俺もまさにそんな気持ちだ。
「なら、斬りきれないくらいの量で対抗すればいいの!行くの、ゾンビ達!」
醜悪な臭いを発して大量のゾンビがカインに向かっていく!ーーーが、なんとなく、分かっていた。
それじゃ、駄目なんだ。
「小癪な!」
ゾンビに囲まれたカインは、身体中から手裏剣を飛ばすことで迎撃した。そんなことまでできるのかよ……!
「面倒だ、眠っておけ。……そうか、最初からこうしておけばもっと早く済んでいたのだな」
カインが煙玉を投げると、フィレスとシャールは眠ってしまった。多分、魔法か薬品かが入っていたのだろう。
「……ん?お主はまだ起きておるのか」
「まあな。ちょっと面白い体質で。そんなことより」
刀を両手に握る。本来刀というのはこうやって扱うものだ。もっとも、俺は好きではないのだが。
「……なーんか、ミールの時もそうだったけど、俺たちの攻撃が全部無効化されてて、ちょっと腹立つ……なっ!」
大上段に刀を構え、真っ向から向かっていく。
「食らえ!村雨流剣術・上段の技奥義『天』!」
「食らうのはお主だ!」
俺の奥義と、カインの名前の無い斬撃。それはどちらの勝利なのかというとーーー相討ちだった。
「ぐあっ!」
「な……!」
俺は、左腕を失った。くっつくことはこの先あるのか、分からない。しかし、その大きな損失と引き換えに、俺はある偉業を成し遂げた。
「貴様、一族に伝わる秘伝の刀を……!」
「本当は、俺が欲しかったんだけどな」
そう、神魔剣を、折ったのだ。『天』はそのための技。相手を倒すための、間接的な技。もっとも、原理は一度の振り下ろしで何度も斬撃を与えるというものなので、相手に直接使ってもいいのだが。
「……さ、続きをやろうか。剣は左手で扱うものなんだが、そのくらいのハンデはやろう」
「……そこまでの傷を負いながら、まだ笑うか!……化け物め」
「……なるほど、悪くない異名だな、それ。是非広めてくれよ」
少しの言葉を交わした後、交わすのは刀。しかし、戦いも長くは続かないのだった。




