フィレスの心情
さて、一騒動あったものの、拠点は手にいれた。ならば、することは一つ。すなわち、当初の目的である、リンダ征服。
ここで一つ問題が生じる。それは、虐殺でなく征服であること。
虐殺ならただ殺せばいいが、征服だから、後々民になる者をみだりに殺す訳にはいかないのだ。要するに、屈服させる必要がある。となると、禁止事項がある。
まず、不意打ち。不意打ちで『自分の注意力が足りなかった』とかどこの武士だって話だ。納得いかないこともあるだろう。
そして、罠。理由としては不意打ちと同じだ。
しかし、正々堂々と民を探して倒して、とするのはあまりに面倒だ。
という訳で、こんな張り紙をしてみた。
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最近移住してきたヒカルです!私は腕に自信があるので、賭けをしましょう!私たちのパーティと戦って、勝った人には私たち全員を好きにする権利をプレゼント!是非挑戦してね!
※眠りを妨げたら、この世のものとは思えない拷問をします
ヒカル(14、男)フィレス(14、女)シャーロット(12、女)
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こんな感じ。これで脳筋の馬鹿は釣れる。
準備も完了、あとは客が来るのを待つだけだ。
「……本当にあんなので来るの?」
「来るさ。俺たちを好きに出来る権利ってのはでかいぞ。美少女二人に若い男一人。奴隷にすればなんでもできる。覚悟しとけよ」
「うう……。まあ、覚悟はしてるけど……」
「フィレス。心配しなくても負けないの」
シャールがフィレスの頭に手を置いて慰める。身長差があってつま先立ちになっているのはご愛嬌。
「そうだぞ、フィレス。この勝負、俺たちに負けは無い」
「そ、そうなの?」
「そうさ。俺たちは船を持ってるんだ。いざとなりゃ島から逃げればいい」
「なるほ……待って、負けるってことはボクたち動けないんじゃ……」
「……その時はその時だ」
「ほらー!」
わんわん(犬みたいだな、中にチョーとか言う人が入ってる)と泣きじゃくるフィレス。まったく、うるさくてしょうがないな……。
「やかましい。フィレス、俺たちが負けるわけないだろ。ミールとかいうおっさんも俺たちは倒したんだぞ。まして、今はシャールもいるんだ。負ける要素が見当たらん」
「そうなの。知らないかもしれないけど、私も結構なものを召喚できるの。家が壊れるかもしれないけど、死ぬよりマシなの」
「疑うわけじゃないけどさ……。ねえ、ヒカル。ちょっとこっちに来て」
言われるがままに近づいていく俺。フィレスの目の前まで来たとき、俺は彼女に抱きつかれた。
「○△□×♪★☆!!?!!!?」
「……お、落ち着いて、ヒカル。」
あまりの俺の動揺に、フィレスは少し引いていた。いや、だって!
「……あのね、ヒカル。ボク、ヒカルのこと好きだよ?強くて、格好よくて、色々考えてて、何より、こんなボクをパーティに入れてくれた。感謝してる」
「お、おお……」
落ち着け、この雰囲気だ。好きというのは、友達としてとかそんな感じだ。恋愛感情じゃない。
「だから、ね?ヒカルと一緒なら何でも出来る気がする。でも、ヒカルが居ないと、なにも出来ない気もする。なんだろう。ブースターっていうか……。違うな、鍵。ヒカルはボクにとっての鍵だよ。」
「鍵……」
「そう、鍵。君が居ないと、ボクの力は出てこない。反対に、君がいてくれれば、ボクは何でもできる。だから……何より、離れるのが怖い」
心底嫌そうな顔でフィレスは言う。それだけ、離れるのが嫌で。それだけ、俺を必要としてくれているんだろう。
俺は、それを素直に嬉しく思った。
「もしボクたちが負けたら、ヒカルがボクを捨てて逃げ出すかもしれない、なんて思ったりしてね」
「そんなことしない!」
「わかってるよ。でも……なんだろうね。被害妄想が止まらないんだよ。ヒカルが、居ないと……っく、ボクは……!」
挙げ句の果てに、泣き出してしまった。それだけ、俺を失うのが怖いらしい。
「……安心させてやろうか?」
「……でき、るの?」
「ああ、できるさ」
顔を上げたフィレスに、静かに口付ける。初めての味はレモンの味、なんて言うけど、触れた瞬間に、フィレスの味だと感じた。
フィレスは最初驚いていたが、すぐに諦めたのか、からだの力を抜いた。それを見て俺は口を離す。
そんなこと言われたら。
嬉しすぎて止まらない。
「俺も、お前のことが好きだ。きっと、お前とは違う意味で。だから、付き合って欲しい」
そう宣言すると、フィレスは驚いて……。
首を、振った。
縦に。
「……こちらこそ、よろしく……」
「こ、コンゴトモ、ヨロシク……」
「それは違う気がするよ」
「そ、そうか?はは、は……」
動揺しているため、笑いがひきつる。そしてしばらく沈黙。気まずい、沈黙。
それを打破してくれたのは、後ろから聞こえた声だった。
「……まあ、おめでとうと言わせてもらうの。でも本来の目的を忘れないで欲しいの」
そう言うシャールの後ろには。
「ーーーお客さんが、来たの」
忍び装束の男が、立っていた。
シャールは空気を読んで黙っておりました。




