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刀とチートと時々魔法  作者: sitis
18/32

フィレスの心情

 さて、一騒動あったものの、拠点は手にいれた。ならば、することは一つ。すなわち、当初の目的である、リンダ征服。

 ここで一つ問題が生じる。それは、虐殺でなく征服であること。

 虐殺ならただ殺せばいいが、征服だから、後々民になる者をみだりに殺す訳にはいかないのだ。要するに、屈服させる必要がある。となると、禁止事項がある。

 まず、不意打ち。不意打ちで『自分の注意力が足りなかった』とかどこの武士だって話だ。納得いかないこともあるだろう。

 そして、罠。理由としては不意打ちと同じだ。

 しかし、正々堂々と民を探して倒して、とするのはあまりに面倒だ。

 という訳で、こんな張り紙をしてみた。


~~~~~

最近移住してきたヒカルです!私は腕に自信があるので、賭けをしましょう!私たちのパーティと戦って、勝った人には私たち全員を好きにする権利をプレゼント!是非挑戦してね!

※眠りを妨げたら、この世のものとは思えない拷問をします

ヒカル(14、男)フィレス(14、女)シャーロット(12、女)

~~~~~


 こんな感じ。これで脳筋の馬鹿は釣れる。

 準備も完了、あとは客が来るのを待つだけだ。


「……本当にあんなので来るの?」

「来るさ。俺たちを好きに出来る権利ってのはでかいぞ。美少女二人に若い男一人。奴隷にすればなんでもできる。覚悟しとけよ」

「うう……。まあ、覚悟はしてるけど……」

「フィレス。心配しなくても負けないの」


 シャールがフィレスの頭に手を置いて慰める。身長差があってつま先立ちになっているのはご愛嬌。


「そうだぞ、フィレス。この勝負、俺たちに負けは無い」

「そ、そうなの?」

「そうさ。俺たちは船を持ってるんだ。いざとなりゃ島から逃げればいい」

「なるほ……待って、負けるってことはボクたち動けないんじゃ……」

「……その時はその時だ」

「ほらー!」


 わんわん(犬みたいだな、中にチョーとか言う人が入ってる)と泣きじゃくるフィレス。まったく、うるさくてしょうがないな……。


「やかましい。フィレス、俺たちが負けるわけないだろ。ミールとかいうおっさんも俺たちは倒したんだぞ。まして、今はシャールもいるんだ。負ける要素が見当たらん」

「そうなの。知らないかもしれないけど、私も結構なものを召喚できるの。家が壊れるかもしれないけど、死ぬよりマシなの」

「疑うわけじゃないけどさ……。ねえ、ヒカル。ちょっとこっちに来て」


 言われるがままに近づいていく俺。フィレスの目の前まで来たとき、俺は彼女に抱きつかれた。


「○△□×♪★☆!!?!!!?」

「……お、落ち着いて、ヒカル。」


 あまりの俺の動揺に、フィレスは少し引いていた。いや、だって!


「……あのね、ヒカル。ボク、ヒカルのこと好きだよ?強くて、格好よくて、色々考えてて、何より、こんなボクをパーティに入れてくれた。感謝してる」

「お、おお……」


 落ち着け、この雰囲気だ。好きというのは、友達としてとかそんな感じだ。恋愛感情じゃない。


「だから、ね?ヒカルと一緒なら何でも出来る気がする。でも、ヒカルが居ないと、なにも出来ない気もする。なんだろう。ブースターっていうか……。違うな、鍵。ヒカルはボクにとっての鍵だよ。」

「鍵……」

「そう、鍵。君が居ないと、ボクの力は出てこない。反対に、君がいてくれれば、ボクは何でもできる。だから……何より、離れるのが怖い」


 心底嫌そうな顔でフィレスは言う。それだけ、離れるのが嫌で。それだけ、俺を必要としてくれているんだろう。

 俺は、それを素直に嬉しく思った。


「もしボクたちが負けたら、ヒカルがボクを捨てて逃げ出すかもしれない、なんて思ったりしてね」

「そんなことしない!」

「わかってるよ。でも……なんだろうね。被害妄想が止まらないんだよ。ヒカルが、居ないと……っく、ボクは……!」


 挙げ句の果てに、泣き出してしまった。それだけ、俺を失うのが怖いらしい。


「……安心させてやろうか?」

「……でき、るの?」

「ああ、できるさ」


 顔を上げたフィレスに、静かに口付ける。初めての味はレモンの味、なんて言うけど、触れた瞬間に、フィレスの味だと感じた。

 フィレスは最初驚いていたが、すぐに諦めたのか、からだの力を抜いた。それを見て俺は口を離す。

 そんなこと言われたら。

 嬉しすぎて止まらない。


「俺も、お前のことが好きだ。きっと、お前とは違う意味で。だから、付き合って欲しい」


 そう宣言すると、フィレスは驚いて……。

 首を、振った。

 縦に。


「……こちらこそ、よろしく……」

「こ、コンゴトモ、ヨロシク……」

「それは違う気がするよ」

「そ、そうか?はは、は……」


 動揺しているため、笑いがひきつる。そしてしばらく沈黙。気まずい、沈黙。

 それを打破してくれたのは、後ろから聞こえた声だった。


「……まあ、おめでとうと言わせてもらうの。でも本来の目的を忘れないで欲しいの」


 そう言うシャールの後ろには。


「ーーーお客さんが、来たの」


 忍び装束の男が、立っていた。

 シャールは空気を読んで黙っておりました。

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