洞窟の少女
意外といけた。
船の操作なんて初めてだったが、難なくこなすことができ、俺たちは今地図の印の場所にいる。そこはまあ予想通り島だった。
と言っても、ただの島じゃない。
でかい山があり、その側面に洞窟がある。以上だ。
「……どうする、行く?」
「まあ、ボクはヒカルの決定に従うけど、わざわざ印がしてあったってことは罠にしてもすごく大きいものなんじゃないかな?」
確かに。そのすごいのも見てみたいので、行ってみることにした。
と言っても、何の対策もせずに行くわけではない。
「行けっ!」
洞窟に思いきり石を投げる。
ーーーーーーーーーーコツン。
辛うじて石が向こう側に当たる音が聞こえた。
「よし、少なくともなんでもかんでもぶっ壊す類いの罠じゃなさそうだな」
「まあ、少し気は楽になった……かな?」
フィレスが微妙な表情で首を傾げる。まあ、小石だから反応しなかっただけっていう線も(というかそっちの方が可能性高く)あるからな。
「ま、行ってみよう。俺が踏んだところ以外は踏むなよ」
フィレスが攻撃されるより、帯刀した俺が攻撃された方が生き残る公算は高いだろう。なら、俺が行くのが妥当だ。決して未知の場所に行くのにワクワクしてる訳じゃない。
中を進むと、途中から急に明るくなった。魔法か、そういう光なのか。まあ何にせよ、少々不気味な事に変わりはない。
薄暗いというより薄明るいような状態の洞窟。しかしそれも途中にあった扉を開けると(実際は警戒して斬った)一変した。
扉の先には、少女が倒れていた。
「し、死ぬの……。いい加減食べるものが無いの。本も尽きたの……」
伏せって目の焦点が合ってない少女。その視線はフラフラとさまよった後、俺たちにぼんやりとではあるが焦点を結んだ。
「あ、お客さんなの……?……お客さん?」
単語を反芻すると、少女の目がぎらりと輝いた!
「悪く思わないでほしいの!わたしも餓死寸前で困ってるの!あなたたちを殺してその肉を喰らうの!」
言うと、ゴッ、と少女の前の床が輝いた。……なんかやばい気がする!
「落ち着け!飯ならやる!大量にあるから!」
「出るの、アークデーモン!」
輝く床から出てきたのは、禍々しいーーーいや、おぞましい姿をした魔物。上手く形容できないが、脳に直接「気持ち悪い」と働きかけてくるような色をしている。
形は強いて言うなら人に似ているが、翼のようなエラのようなものがあり、尻尾のような骨のようなものがあり、そして角のような触覚のようなものがある。およそ人と一緒にしたくない。
「き、気持ち悪い……」
隣ではフィレスもまた顔を青くしていた。……これ弱点あんのかな?
「ぜりゃっ!」
ズバッ!と大きな音を立てて真っ二つになるアークデーモンとやら。上半身と下半身が分かれ、断面からは見たくもないような何かがでろでろと出ている。
「どいてヒカルっ!『タイタン』!」
フィレスが魔法発動の鍵になる言葉を言う。以前の『イフリート』と同じようにすげえ魔神みたいなのが出てくるのかな、と期待していたのだが、しかしそうではなく、出てきたのは炎の手だった。
イフリートはその五本の指を一気に開き、既に瀕死のアークデーモンを思いきり握りつぶす!
立ち上る煙と火種ほどの小さな炎。立ち込める熱気の中、アークデーモン塵も残さず消え去っていた。
「嘘……!?ああ、私はもうここで死ぬの……もうだめなの……がくっ」
今もなお立ち上がれていない金髪の少女が本格的に意識をなくした。見ると、隣ではフィレスも倒れている。さっきまで必死で気付いていなかったが、なにやら酸素が薄い。
「フィレスの炎か!」
気づくや否や、俺はフィレスと少女を抱えて洞窟から出るのであった。




