嵐の後もまた静か…?
「ヒカル!こっちまとめるの完了したよー!」
「分かった!すぐ取りに行くから待ってろ!」
何はともあれアイテム回収。キラキラした宝石、装飾品としてしか意味を成さないであろう剣、ありえないほどふかふかなベッド。これらを全てアイテムボックスに入れる。
ちなみにこのアイテムボックス、無尽蔵に入る訳じゃなく、入るものも俺が手に持てる物まで。もっとも、俺は今身体能力が倍以上なので問題ないのだが。
「もうあらかた取ったかな?」
「そうだな。そろそろ行くか」
館は既にすっからかん。まあ、高価なものはもちろん、日用品も貰っていくから残りそうなものも無い。
沿岸部にあるこの家は、すぐ近くに海があり、そこに船が停めてある。俺たちは船を貰ってトンズラだ。
「ちなみに、俺たちって捕まったらどうなんの?」
「ミールってあれでも貴族だから死刑じゃないかな?まあでも、擁護の声があるだろうし、達磨の刑くらいじゃない?」
「達磨の刑とは?」
「両腕両脚をすぱーんと」
「鬼のような刑だな」
まあ、それならすぐに国外逃亡(大陸外逃亡?)したほうがいいだろう。俺だって初期設定のア○カのようにはなりたくない。
「じゃ、行こうか」
船にぴょん、と飛び乗る。そこで俺は気付いた。
「波が……無い……!?」
考えてみれば当然とも言える。違う世界なのだ。惑星とかいう概念が無いかもしれないし、そうでなくとも月は無いのだろう。
故郷とは違う海に少しだけ寂しさを感じるが、気のせいということにして錨を上げた。船の操作なんざ知らんが、まあ食料も水も大量にあるし、漂流しても大丈夫だろう。
「お、羅針盤もあるじゃないか。ならこっちに……こう舵をとって……」
順調に船の扱いをマスターしていく俺。と、操舵室に奇妙な、しかしあって当然なものを見つけた。
「地図……?」
そう、地図。しかも、ある一点には小さく印が付けられている。おそらく、ここに何かあるのだろう。
「おい、フィレス。これどうおも……」
振り返ると、そこにはフィレスが倒れていた。
口からはよく分からない液体、そこかしこにある涙の跡。
フィレスは、死んでいた。
「……よし、近いし、行ってみるか!」
「ちょっとヒカル……無視しないで……!」
訂正。グロッキーなだけだった。
「……いや、おかしいだろ。ノリノリだったじゃん」
「船なんか乗ったこと無かったんだよう……」
この世界の人間、三半規管は強そうなものだが。
「……まあいいや。フィレス。ちょっとこっち向け」
「……なに?」
蒼い顔を力を振り絞って向けるフィレス。普段の元気さも、美少女ぶりもない。うーん、これは読者様には見せられない感じだ。
「はい、どーん」
バシャァッ!
飲み水を柄杓ですくって体全体に叩きつける!
「つめたっ!?ちょっ、ヒカル!何するの!?……って、あれ?」
立ち上がって抗議するフィレス。しかし、彼女もスッキリしたことに気付いたようだ。引き換えに服はびちょびちょだが、気にしてはいけない。濡れた服から下着のようなものが透けてても……中に防具を着ていて見たいところは覆われていた。ちくしょう。
「次からは自分でやれよ」
言って、船の操作に戻る。後ろから「……ありがと、ヒカル」と控えめな声が聞こえてきた。
ちなみにこの治療法、股間さえ冷やせばいいのだが、あからさまにそこを狙うのも恥ずかしいので、体全体を濡らすことにした。
結局、フィレスから意見は得られなかったので、とりあえず行ってみることにする。まあ、罠があったとしてもフィレスが島ごと燃やし尽くしてくれるさ。
……海底だったらどうしよう。
一抹の不安を覚えながらも、俺は印の書かれた場所に行くのだった。




