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刀とチートと時々魔法  作者: sitis
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老人を苛める若者の鏡です

初めての強敵…?迫力でません、すいません。

「お主らがここに来る事は分かっておった」


 急に語り出すじいさん。ちょうどいい、隙だらけだ!


「おっと、そう焦るでない。若いのう」


 渾身の居合い斬り(村雨流剣術・居合いの型一番『光輝』)を放とうとしたが、このじじいに止められる。

 そう、『放とうとしただけ』だ。まだ放っていなかった。どころか、予備動作すらしていない。分かる要素などどこにも無かった。


「その腰の変わった剣を抜いて攻撃しようとしたのじゃろう?残念じゃが、わしは人の心が読めるのじゃよ」

「うそっ!」


 過剰な反応をしたのはフィレス。対して俺は……まるで信じていなかった。


「他にも分かるぞ。例えばおなごよ、お主はこの少年のことが好……」

「わ、わーっ!わーっ!」

「いや、フィレス。こんなの信じるなよ……」


 フィレスの素直さが裏目に出た形だ。彼女は非常に、騙されやすい。昨晩俺が「俺、実は眠ることができないんだ」と言うと、「じゃあボクも起きとくよ!」といってくれた。素直で優しいのは美点なので、直そうとも思わない。


「じじい、嘘もほどほどにしとけ。あんたそんな能力持ってねえだろ」

「なんじゃ、つまらんのう……。して、何故そう思う?」


 あくまでとぼける気のじじい(脳内呼称はとっくに下がった)にため息をつき、本人も分かっているであろうネタばらしをする。


「話し方はいいんだけどな。『抜いて攻撃』って意味が広すぎるぜ。俺は『抜きながら攻撃』しようとしたが、『抜いてから攻撃』でも意味が通じる。腰から剣ぶら下げてりゃ、そりゃ抜いて攻撃するだろうよ」

「なるほど……他には?」

「俺の心が読めるんだろ?なら『変わった剣』でなく『刀』や『日本刀』って言うはずだ。『抜いて攻撃』も『居合い斬り』とか『光輝』とか言ってくれないとな」


 以上、解説終了。

 じじいはやけに腹のたつ拍手をして、俺に笑いかけた。


「合格じゃ。して、お主は何がほしい?」

「何が……ってまさか、あんたがミールか?」

「いかにも。喜べ少年、合格じゃ。お主には何でもやろう。ただし……」


 ぎろりとフィレスを睨む。


「このおなごは駄目じゃ。この程度も見破れぬなら、不合格。少年、お主は何でも持っていってよい。ただし、このおなごと引き換えじゃ。その場合は……まあ、妾かのう」

「おやおや、好色家なじいさんだな」


 くつくつと笑いながら余裕を持って答えてやる。


「却下だ」

「む?なら、この宝は諦めるというのかの?」

「ンなわけ無いだろ。じじい、あんた、いい体してんじゃねえか。よほど戦って来てんだろうな」


 油断なく腰の刀に手をかけ、とどめの挑発。


「あんたもやるなら、めんどくせえ交渉なんか無しだ。どうせフィレスが欲しいんだろ?勝者総取りでいこうぜ」


 そう言ったとたん、ミールじいさんは飛びかかってきた。俺はそれを、ただのすり足で避ける。


「おっと、武器も無しかい?随分と余裕だな」

「これが一番強いのじゃよ」


 先刻打ち損ねた『光輝』を放つ。これはただの居合い斬りだ。シンプルゆえに使いやすい。

 ーーーが、そんな光輝を。


「ふんっ!」


 気合い一発、ミールじいさんは手刀で止めた。

 刃を。

 素手で。


「そんなのアリかよ!?」

「ただの肉体強化の術じゃよ!まあ、少々程度が高いがーーーなっ!」


 受け止めた刀を持ち、投げるミール。刀を放した瞬間俺はフルボッコにされるので、俺は刀と共に壁に叩きつけられることを選択した。


「ぐっ!」

「なんじゃ、あっけないのう。その程度か?」


 余裕で近づいてくるミール。そこに一発。


「『イビル・ハンド』!」


 フィレスの十八番、詠唱破棄の火魔法。『イフリート』ほどではないものの、近くに居るだけですごい熱さの圧縮された業火が、魔神の手の形をしてミールに近づく。が……。


「甘いわっ!」


 ミールが地面に敷いてあるカーペッドを体に巻き付ける。と、それに当たった瞬間、炎はすぐに消えてしまった。


「かーっかっか!このカーペッドは触れた全ての魔法を無効化するのじゃ!お主の炎なんか、風呂より温いわ!」

「う~……」


 いかん、フィレスの魔法も効かない、俺の斬撃も効かないでは、俺たちには成す術が無い。

 逃げる、か……?……それしかないか。

 フィレスに目で合図して、一気に駆け出す。三十六計逃げるに如かずだ!


「わしとしては逃げ回ってくれた方が楽しいのは認めるが……。もっと抵抗して暴れまわってからじゃろう、普通」


 回り込まれた。


「さあ、どう料理したものか……。これだけ素材がいいと、逆に迷ってしまうわい……」


 ミールがぞくっとするような声で言ってくる。これはあれだ。小学生の時、下校途中に会ったあの変質者と同じ感じだ。

 どうする……?やぶれかぶれの特攻も効かないだろう。ならば……。

 ん?

 唐突に、俺の中にアイデアが浮かぶ。これは……これしかないんじゃないか……?


「フィレス、何でもいい。魔法を撃ってみてくれ」

「え……?うん……。『ファイアーボール』!」


 打ち出すのはオーソドックスな火の玉。思った通りミールはカーペッドを体に巻き付け、それを防御しようとする!


「村雨流剣術・突きの技八番『刹那』!」


 破壊力は群を抜いて高い『刹那』。刺さった刀を動かすたび、ぬめぬめとした気持ち悪い血が出て、なんだか心地いい肉を割く感触が味わえる。

 俺たちは、勝ったのだった。

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