表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/34

其の二

 そして本日、結婚式です。

 まさかこの歳で十二単を着る羽目になるとは……。


 いえこの正装、実は3貴神からの贈り物なのですよ。

 レンタル衣装で済ませるつもりが、いろんな意味で有名な元邪神、現引きこもり系ロリ姫神の「専属おかん巫女」と「保護者というかもうこれパパで良いんじゃね勇者」の結婚式ですから、関係各所が勝手に張り切ってくれて……。


 いえ有難いんですが、正直分不相応な気がしてなりません。

 衣装は桐箪笥ごと送り付けられて来て、しかもその箪笥ごと輝いている始末。

 天上界仕様ですね分かります。


 一方元職場、いえ今度から一応復職扱いな地上の役所も、それはもう張り切ってくれました。余計な事を……。

 公式動画を作ったり、各主要メディアも巻き込んでのお式だそうです。


 以前あった姫神様の大社への巡礼騒動、忘れた訳では無いですよね?

 観光誘致の為なら何でもやる、というその姿勢と情熱は、元職員として痛いほど良く分かりますが。


「ああ、疲れました。二度とこんな重いもの着たくないです」

 いくらMade in takamagaharaで、羽衣の様に軽く浮く素材をふんだんに使用しているとはいえ、重い物は重いのです。


「お疲れ様です、真帆路さん。体調はどうですか?どこかおかしなところは?」

 十二単に最後まで懸念を示していたのは、何を隠そうこの勇者様ご本人でした。

 「お腹に負担がかかるから」と、それはもう熱弁をふるってくれたのですが、他に言を尽くすべき場所はあったと思いますよ……?


「大丈夫です。今のところ特に気分が悪くなったとかはありません」

「ようやっとつわりが収まった所なんですから、無理しないで下さいね」

「あはは」

 貴方がそれを言いますか。


「そんなに心配しなくても、何かあったらちゃんと言うようにしますから」

「そうしてください」

 若干乾いた笑いが出ましたが、それ以外の本心は心の中に仕舞って置く事にします。


 心配しなくても大丈夫だという様に、にこりと微笑むと、優しい微笑みが帰って来ました。

 勇者様が嬉しそうならまあいいか、と思ってしまうあたり、この状況に慣れ切っているのかもしれません。

 

「まほーーーーーー!!!」

「姫神」

「姫神様」

 私と勇者様が落ち着いてほのぼのした所で、後ろから姫神様にタックルされてしまいました。

 

「すっごく、すっごく綺麗だったのじゃ!わらわもいつか大人になって、あんな風に奇麗な衣装を着るのじゃ~~~!!!」

 見上げて来た姫神様のその瞳は、とっても輝いていました。 

 勇者様が呆れた顔でひっぺがします。といっても抱き付かれただけなんですけど。


「姫神、真帆路さんは今とても大事な時期なんですから、そうやって乱暴な態度取っていると……」

「わあ!ごめんなのじゃ!だいじょうぶかや?ややこはぶじかや!?接触禁止なんて嫌なのじゃ~!!」

 こうしていると何だか家族みたいですね。

 ほっこりしてしまいます。


「あら、重金先輩はどうしました?」

 新たな巫女が正式に就任するまでの間、重金先輩が調整を図ってくれるとの事で、姫神様の元にずっとそばにいたのですが……。


「まほの花嫁衣装を見たら、いてもたってもいられ無くてのう……」

「つまり撒いたんですね?あの方がいなくては、貴女今地上でまともに人の形も取れないじゃないですか。何て事を……」

 勇者様が額に手をやって溜息を吐きました。

 ……衣装も相まっていちいちカッコいいのですが、どうにかなりませんか……って、言っている内容、ちょっと不味くないですか?


「ひっ、人聞きが悪いぞ勇者!あやつも忙しいじゃろうからと思うて、じゃな、わらわひとりでやってきたのじゃっ!それに、今日はハレの日で封印も緩んでおるし、ちょっとの間くらい気合でどうにかなるのじゃ!わらわだってやればできるのじゃぞ!?」

「はあ、動揺が隠し切れていませんよ、姫神」


 あらら、どうやら勇者様による説教タイムが始まってしまったようです。

 今からこんな調子では、エトワール様が正式に巫女を引き継いだら姫神様、ますます立場弱くなるんじゃないでしょうか……?

 私が気にする所じゃないのかもしれませんが。


「……大丈夫ですから落ち着いてください。勇者様も、何も脅かさなくても……」

「駄目ですよ、こういうのはきちんと教えておかないと。このうっかり姫神の事ですから、いつ何が起こるか始終心配する破目になってしまいます」

「うう~、だからごめんなのじゃ」

「ほらほら、姫神様もしょげないで下さい、いつものお元気はどこへ行ってしまったんですか?いつもなら「そんなことないのじゃ、わらわだってやればできるのじゃ」とか何とか、言い返しますよね?」

 しゃがんで視線を合わせますが、すっかりしょげてしまったみたいです。


「じゃが、勇者が……」

「勇者様は過保護なだけですよ」

「失礼な、心配し過ぎて何が悪いんです?他でも無い貴女と貴女のお腹に宿る命の為でしょうに。それと、何時になったら名前で呼んでくれるんですか?」

 しまった、ヤブ蛇というやつですか?

 どうやら余計な所まで刺激してしまった様です。


「えっと、それは……」

 しどろもどろになる私に、ずい、と身を乗り出して追撃をしてくる勇者様。


 うう、大人げないです、勇者様大人げない。

 脇から「あいかわらずじゃのう」などと呆れた様な声が聞こえてきた気がしますが、余計なお世話ですから!


「名実ともに夫婦になったのですから、今度こそ名前で呼んで頂かないと。でないと“おしおき”ですよ?ふふっ、“お仕置き”の間だけは貴女も素直に私の名前を呼んでくれますからね」

「!!!!!!ちびっこのいる前でする話じゃないでしょう!自重してください!」

 仮にも幼女の前で何という話を!?


 とんでもないと憤る私に、勇者様は余裕でとぼけ、

「何の話か分りましたか?姫神」

「さあてのう、わらわお子様だから分らんの~」

 まったく、仲良くなるのも考えものですね!!


「2人とも、いい加減にしないと」

 我慢の限界を迎えた私が、お説教の最終兵器を繰り出そうとしますが、

「「晩御飯抜き!!」じゃな!」

 勇者様と姫神様が、目配せし合って同時にハモりました。

 そして、何がおかしいのか2人して笑い転げます。


「もう!」

 子鬼や邪神を従える最終兵器「晩御飯抜き」

 そんなにおかしいですか?




2013.7.24 設定調整等の為、一部変更。



姫神「もう終わりとはつまらんのう。そうじゃ、座談会とやらはやらんのか?」

暑さにめげました。


代わりに主要人物の紹介でも。


崎守真帆路 巫女

四捨五入して三十路の公務員。ちなみに上か下かは御想像にお任せします。ぅゎ後ろ怖い。

都内の短大に行っていた割にはあまりはっちゃけなかった『イモねーちゃん』。元彼さんと距離が出来たのもその辺りが原因。


姫神(ヒルコ水蛭子、蛭子神、蛭子命:wikiより) 邪神

みかけは幼女、中身は2000歳越えのロリババryハイ、スミマセン。

世事には疎いが、恋バナ関係は別に疎くない。というか、仕えていた巫女ちゃん達の年齢がもろ“そういう”年代だったので、結構相談とか受けていた模様。あんまり当てにはされていなかったようだが……。 


勇者 佐々木大地(テラ)=クロード

変態。「ちょっと!?」

……じゃあ、変?「人でさえないんですか!?」

キラキラしてる勇者。「ま、まあそれなら……、って真帆路さんも何か言って下さいよ。フォローくらいあってもいいでしょう?」

「……いえその、どこをどうフォローすればいいのか……」(真顔)

「……ひどいですよ…」


オチがついた所でおしまい!



 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ