其の五
ご注意!!
いかがわしい表現入ります。
乱暴ダメ絶対。
また、触手注意報が触手警報に切り替わりました。
苦手な方はご注意ください。
「まったく、何だったんだ?一体」
「……」
濡れたジャケットを乱暴にベッドに放り投げ、不機嫌そうに言う稲葉さん。
どちらかと言えば優しそうな印象だったのが、このわずかの間に……言い方が悪いですがまるでチンピラみたいに見えてしまいます。
濡れてみっともない格好をロビーで晒す訳にはいかないからと言って、稲葉さんはさっさとホテルに部屋を取ってしまいました。
しかもここ、上の方の良い部屋ですよ?いわゆるお金持なのか、それとも本当は悪い人なのか…。
話を聞いた限りでは、勤めている会社ではそこそこの立場だという事でしたが…。
そもそもその会社名も、聞いた事無い会社だったので判断が付きません。
私は稲葉さんがどういう人なのか、ますます分からなくなってしまいました。
さすがに男性と2人で個室と言うのはどうかと思ったんですが、稲葉さんが手続きをしている間に料亭で事の次第を説明していたら、仲人さんや両親からも手伝ってあげた方がいいと言われたので、お邪魔する事にしました。
とは言っても、大した事は出来ないと思うのですが。
……少し気になったのは両親の様子。
実はさっきから顔色が良くない様な気がするんですよね。
それとなく聞いて見ても、大丈夫だ、気にするな、の一点張りで、取り付く島もありません。
それどころか、さっき稲葉さんと上へ上がるという話になった時も、視線が合わなかったんですよね……。
何か、あったのかな……?
「真帆路さん」
「えっ!?あっ、はい!」
あ、あれ?いきなり名前呼びですか!?
「ここまでついて来たって事は、同意したって事ですよね?」
え?同意?何の話でしょうか?
そう、思った時でした。
ぐい、と引き寄せられたかと思ったら、私は彼に引き倒されていました。
…………この部屋のベッドの上に。
これはいわゆる、押し倒されている、という状況では?
ま、まずいです、まずいって何が、とにかくヤバいです!やばいですよ!!
混乱しすぎて、抵抗しなければいけないという事さえ頭にありませんでした。
「………このまま、頂いてしまっても、良いんですよね?」
上はYシャツ1枚、下は……ああっ、ベルトカチャカチャ言わせないで下さい!!
「ま、待って下さい!!」
「待つ?どうして」
その浮かべた笑みに、どうしてか背筋がぞっとしました。
怖い、怖い、こわいこわいこわいこわい――――――!!
「ここまでのこのこついて来て、なんもせずに今さら帰るはねぇんじゃねえの?なァ天然なお嬢さん。あいにくと絶対逃がすなって命令だから、悪いけどやめらんねぇんだわ」
「な、な…」
何言ってるのか全然分かりません!
命令?逃がすな?拉致監禁が目的なら、“こんなこと”をする理由は無い筈です!
身を捩っても、この体勢と男女の力の差で、悔しいほどビクともしません。
目の前の“知らない”男の人は、片手で私の両手を纏めて頭の上で拘束し、空いた手で私の胸元のボタンを器用に開けながら、くつくつと楽しそうに笑っています。
「お目当ては“あんたのハジメテ”だそうだ。心配すんなって、これも仕事だからな。嫌でもきちんとイかせてやるからよ」
イヤイヤと必死で首を振る私の首筋に顔を埋め、そのままべろりと舐められ――――――
「まほに、さわるなああああああああああああああああ!!!!!!」
ばりぃいん、と窓ガラスが一斉に割れました。




