其ノ二
「戻りました」
「戻って来たのじゃ~」
呼び出された筈の姫神様が、重金先輩に付き添われて戻って来たのは、それから数日後の事。
途中で合流したのでしょうか?特に何も連絡無かった筈ですが。
元気の無い様子の姫神様の様子に、これは相当こってり絞られたのかとお茶とお菓子を差し出しましたが、いつもなら現金なくらいあっさり機嫌が直るのに、今日に限っては落ち込んだままでした。
何か向うで嫌な事でも言われたのでしょうか?
そこへ顔を出した勇者様が少し驚き、次いで訝しげに言いました。
「邪神、貴方何で神力が無くなっているんです?」
ええっ!?
姫神様に元気が無かったのは、暴走するほど満ち溢れる神力が今はほとんど空っぽになってしまっているから、だそうです。
かったるそうな姫神様を抱きかかえると、すり、と甘えられました。
……隣から妙な圧力を感じるのですか……?
大人しくしている姫神様の代わりに、自主的に説明役を買って出てくれた重金先輩によれば、この神力剥奪こそが今回の一件に対する神々からの罰なのだそうです。
以前から感情に任せて神力を暴走させる事の多かった姫神様に対しての制裁措置と言いますか…。
己の行為を省みず、どうにかしようという気概も無い。
ならば、今までの封印だけでは罰として生ぬるい!という意見が多数あったらしいのです。
聖別された玉と姫神様を繋げ、常に神力をその玉に吸収させるような措置が取られているとの事で、完全に力が無くなってしまった訳では無いとの事ですが……。
「このまま行けば消滅ですね」
「勇者様!!」
あっさり言い放った勇者様を、思わず睨み付けてしまいました。
だってそんな、まるでどうでも良い他人事の様に言うものですから。
「だってそうでしょう?ただでさえうっすい信仰心なんです。あるだけましなその信仰心を失ってしまえば、神として存続できなくなるのは確実。神力の無いこの状態でそんな事になれば、アヤカシになることすら出来ずに消えてしまうでしょうね」
「そんな……」
「でも、事実だわ」
「重金先輩……」
先輩にまでそう言われてしまっては、何も言い返すことなど出来ません。
やるせない思いを抱えたまま膝に乗せた姫神様を優しく撫でると、しばらくしてすーすーという音が聞こえてきました。
「あら、眠ってしまわれた様ね」
「いつも無駄に元気な邪神がこうも大人しいと、妙な気分ですね」
「元気だけが取り柄の様な方ですから」
2人とも言っている事は微妙に褒めていない気がしますが、それでもその言葉には、何処となく“痛々しい”という感情が見え隠れしている気がしました。




