第二話
学園に着き、教室に入ると夏休み明け特有の気の抜けた雰囲気のなかに
もう一つ何か違った雰囲気があった。
クラスメイト達と挨拶を交わしながら自分の席に行き鞄を置いた。
そして、親友の一人が声を掛けてきた。
「なぁ、転校生が来るっていう噂知ってるか?」
と話題を振ってきたこいつの名前は、石川英隆。
新聞部に所属していて情報を集めるのが趣味らしく、
会うたびに何かしらの話題を仕入れている親友の一人。
桜綾学園美少女ランキングも英隆が制作したらしい。
「いや、知らないな」
と素直に答えていると鞄を置いてきた沙織が何の話?と話に入ってきた。
英隆が沙織にさっきと同じ説明をして
「それで、教室がざわざわしてたんだね、納得だよ」
もう一つの雰囲気の正体はそれかと思いながら教室を見回す。
すると男子達のテンションの方が高いことに気付く。
「どうして男子のテンションが高めなんだ?」
と英隆に聞くと、それはだなと勿体ぶって
「転校生は美少女という噂だからな」
なるほどと納得しつつも、いつも思うことだがこいつは一体何処でこういう情報を
仕入れているのか疑問なんだが、聞かない方がいいんだろうなぁと自己完結した。
「あとはその転校生がこのクラスに来るからというのも原因の一つだろう」
英隆が指を指している方向を見ると1学期には見なかった机があった。
そして、聞こえてくる男子達の会話。
「美少女転校生キター!これで勝つる!」
「このクラス、女子のレベルさらに高くなるのか、胸熱」
「美少女転校生を攻略してやんよ!」
このクラスの男子ってこんなだったかなぁと不安になったが気にしないことにした。
「裕理君は一緒に叫ばないの?」
「俺はそんなに興味はないよ」
え~、本当かなぁとニヤニヤして見てくる沙織。
沙織の中で俺は一体どんなキャラなんだとツッコミたくなったが、したら負けな気がしたから止めた。
確かに、気にならないわけじゃない。
が、結局はその程度だった。
そこでチャイムが鳴り、同時に先生が入ってきて
「ほらほら、HR始めるから席着いて」
それからはいつも通りに名前を呼んで出席確認をしていく。
確認が終わると今日のもちきりの話題であろう話が始まった。
「え~と、うちのクラスに転校生が来るっていうのは…知っているみたいね」
そして、先生は英隆を見て
「またあんたか、石川」
そこで胸を誇らしげに張る英隆。
まるで情報を届けるのが俺の仕事ですからと言わんばかりに。
「まぁいいけどね、話す手間が省けるし」
時々、あの先生不真面目になるなぁという感想を抱くのも1学期ぶりかと思いながら先生の話を聞く。
「で、その転校生は帰りのHRで紹介するから今から体育館で始業式、分かった?」
クラス全員がブーイングしながらも体育館に向かう準備をする。
気持ちは分からんでもないが、このクラスこんなに仲良かったか?
いや、一致団結するのはいいことだろう、うん。
何はともあれ、まずは始業式。
沙織と英隆と一緒に体育館へ向かった。