第一話
夏休みも終わり、残暑が少しきつい9月の初め。
今日からまた学園生活が始まる。
主人公、藤崎裕理は桜綾学園の三年生。
「結局、最後の夏休みも何もなかったなぁ…」
友だちと遊んだり、宿題したり、いたって平凡だった。
「もう少し、何か起きてもいいのになぁ」
贅沢な願いかもしれないけどそう思わずにはいられない程自分の学園生活は普通だった。
まぁそれでも充分楽しんでいるのだが、何処か物足りなかった。
はぁ…とため息をついていると、後ろから声を掛けられた。
「どうしたの?そんなため息なんかついちゃって」
あぁもうそんな時間だったかと振り返る。
「おはよう、沙織」
おはよーと返してきたこの子の名前は、織宮沙織。
俺の幼なじみで、学園では『桜綾学園美少女ランキング』ベスト3に入っていたりする。
人懐っこい性格と太陽のような笑顔、さらには家事全般得意という事が人気の理由なんだとか(友人談)。
「悩み事かな?相談に乗れるなら乗るよ?」
そんな女の子と幼なじみという事で羨ましがられたり妬まれたりする。
悩み事というと少し違うけどという前振りを置いて
「もう少し、何か起きて欲しいなぁと思っただけだよ」
そっかーと興味なさげに答えて
「じゃあさ、例えばどんな事が起きて欲しいの?」
なんて、ニヤけながら聞いてきた。
そういえば具体的に考えたことなんてなかったなと黙り込んでいると
「まぁ裕理君の事だからそんな所だと思ったよ」
「どういう意味だよ」
べっつにーと笑いながら先を歩いていく沙織。
いつもと変わらない朝の登校、話に付き合ってくれた幼なじみに感謝しつつ学園へと向かった。