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FIRE FLOWER  作者: 碓氷優姫
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第七章 ツヨイヒト

花火は途切れることなく夜の街を昼間にしていった。

そんな大きなものから見ると、私たち人間なんてちっぽけなものだとつくづく感じる。

「花火って、人間と似てるよね…」

「…は…?」

私は心で感じとったことを晴夜くんに伝えたかった。

理由などなく……。

「花火ほど人間は綺麗なものじゃないけど、一瞬で儚く消えてくのが似てると思うの。暗い闇の中で、手探りで花を咲かせる。それはそれぞれ違ってて、同じものなんてひとつもなくて…。ひとつの命が散れば、また違う命が咲く。すぐに消えて見えなくなる花火は、私と似てるんだ…」

「……」

晴夜くんは黙ったままだった。

「私も、もっと身体が丈夫で強くて、みんなと同じように生活ができるんだったら…」

私は目の前に座っている仲の良さそうな夫婦に視線を落とした。

「……ううん、なんでもない。今日は我が儘聞いてくれてありがとう」

チラリと晴夜くんを見ると、黙ったまま真っ直ぐ花火を見つめていた。

私は微笑んで、視線を花火に向けた。

私が見たかった花火…。

晴夜くんが隣に座ってて、一緒に同じ光景を見る……。

その夢が今叶ってる。

「綺麗だね…」


「お前は十分強い」


「えっ…?」

私は驚いて、晴夜くんを見つめた。

「……なんでもねぇ…」

「…ありがと」

晴夜くんに変な目で見られたけど、気にしなかった。

なんだか今すごく、生きてるって実感してる。

今までは遠慮してたけど、もっと晴夜くんに甘えてみてもいいのかなって思ってる。

そして、素直に恋をしてもいいのかなって…。


最後の花火が打ち上がった。

私は無意識のうちに涙を流していた。

何もかもが終わってしまうような恐怖が私を襲ったのだ。

私は不安になって晴夜くんの方を見た。

泣いている私を見て不思議そうな顔をしている晴夜くんと目が合って、思わず目を伏せてしまった。

「お前って、ホント変だよな」

晴夜くんは今まで見たことがない程の笑顔で笑った。

私の中の恐怖は一瞬にして消え去ってしまった。

「晴夜くん程じゃないけどねっ」

私は思いっきりの笑顔をつくってみた。

きっと上手くはなかっただろうけど。

「バカ、俺はちげーよ」

「ううん、すっごい変だよ」

「あ、言ったな」

「うん、言った」

…信じられない。

晴夜くんが私の前で笑ってる…。


『俺、おとなしい女とか好きじゃねーんだよ』


あの言葉はいつも無視してたけど、受け止めて自分を変えてみると、世界がこんなにも大きく変わるなんて知らなかった。


私、少し晴夜くんに近づけたのかな…?

《第七章・終》

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