表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FIRE FLOWER  作者: 碓氷優姫
6/18

第六章 クリカエシ

「おばあちゃん、ありがとうございました」

「いいのよ、これくらい。楽しんで来なさいね」

「はいっ」

私と晴夜くんは、おばあちゃん家を後にした。

「晴夜くん、浴衣……どうかな…?」

車椅子を押している晴夜くんの方を振り返ってたずねた。

「…さっきの病院の服よりはいんじゃね?」

晴夜くんは真っ直ぐ前を見て言った。

「もう、素直じゃないんだから」

口をぷぃと尖らせるも、なんだかだらしなく緩んでしまう。

会場に着くと、私たちは一番見晴らしの良い席に座った。

見晴らしが良いにも関わらず、人があまりいなく静かで、まさに穴場だ。

「…腹減ってねぇか?」

不意に晴夜くんが口を開いた。

「うん、ちょっと」

実際はかなり空いてたけど、本当のことは言わなかった。

「……買ってきてやるよ。何がいい」

私は驚いた。

いつも他人をコキ遣う晴夜くんが、他人のために動くなんて…。

「うーん、じゃあ、晴夜くんとおんなじのが食べたい」

「食事制限されてねぇの?」

「うん、今のところは」

すると晴夜くんはくすっと笑って屋台の方へ下りて行った。

無意識のうちに晴夜くんの姿を目で追っていた。

人ゴミに紛れてても、晴夜くんは一目でわかる。

それ程私は晴夜くんが好きなのかなって思ってちょっと恥ずかしくなった。


頬に冷たいものが当たり、私は目を覚ました。

いつの間にか寝てしまっていたのだ。

「寝てんじゃねぇよ」

晴夜くんは私の前にオレンジジュースの缶を差し出したまま言った。

頬に当たったのはこれだった。

「ごめん…」

私は缶を受け取った。

私が大好きなオレンジジュース……。

晴夜くん、覚えててくれたんだ…。

そして晴夜くんは、私の膝の上に焼きそばの入ったパックを乗せた。

「ありがとう」

晴夜くんは焼きそばが大好物だった。

なんか勿体なくて食べれない。

美味しそうに焼きそばを食べる晴夜くんを見つめていると、それに気づかれて睨まれた。

「冷めないうちに喰えよ」

「う、うん」

私はゆっくり焼きそばを口に運んだ。

凄く美味しかった。

晴夜くんが買ってくれたんだと思うと、さらに美味しく感じた。

食べ終わった頃にアナウンスが流れ、一発目の花火が大きく優雅に、そして華麗に、深い星空の中で弾けた。


昇っては美しく花を咲かせ、一瞬のうちに散ってゆく――。


その繰り返しが人の心を掴む。

花火は、私たちまでキラキラと明るく照らし、爆音を轟かせて2人を震わせた。

《第六章・終》

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ