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FIRE FLOWER  作者: 碓氷優姫
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第二章 プレゼント

「晴夜くん、おはよ…」

私が家から出ると、もう既に晴夜くんは待っていた。

「おう。…つーかおせーんだよ」

いつものように私をギロリと睨んで歩きだす。

「ごめん…」

あれ?と思った。

なんだか晴夜くん、いつもより足取りが軽い。

この雰囲気はもしかして…。

「ねぇ、晴夜くん。」

私は少し小さな声で話しかけた。

「あ?」

晴夜くんは前を向いたまま返事をする。

「もしかして、何か欲しいんでしょ?漫画の新刊とか?」

「は?何いきなり。てかお前には関係ねぇよ」

私はクスッと笑った。

このいつもにはないふわふわした空気は、晴夜くんが何か欲しがってるって証拠。

それに今日は晴夜くんがいつも読んでる漫画の新刊の発売日だ。

「いいよ、遠慮しなくて。私、買ってあげるよ」

「んあーもう、なんでわかったんだよ!…ったく、自分で買うから気にすんな」

「ちょうど今日、本屋さん行こうと思ってたから買ってくるよ。新しいペンケース買おうと思っててさ」

「あっそ」

晴夜くんは振り向きもせずに言った。


校門につくと男子数名が晴夜くんを取り囲み、声をかけた。

「おっはよ、せーや!」

やけにテンションが高い彼らは、晴夜くんと仲が良いグループの奴らだ。

私は彼らをちらっと見てから、少し離れて歩いた。

「可愛いカノジョ連れちゃって。コノヤロー」

ひとりが私を見てから晴夜くんをバシッと殴った。

「ちげーよ。俺、おとなしい女とか好きじゃねーんだよ」

晴夜くんはまっすぐ前を向いたまま言った。

晴夜くんの発言はいつものことなので、今更気にならない。

今日もいつもと同じ生活が始まる――


放課後になるのははやいものだ。

下駄箱を見ると、もう晴夜くんは帰っていた。

今日はバスケ部はオフらしい。

ひとりでトボトボと歩いていると、本屋の前で晴夜くんと会った。

「あ、晴夜くんっ」

晴夜くんは私を見て片手を挙げた。

「おう、めぐ」

「あの漫画の新刊買いに来たの?」

「まあな」

晴夜くんの後に続いて私も店に入った。

入り口から真っ直ぐ進んだところにコミックコーナーがある。

新刊だから表に出されたそれを手に取る晴夜くん。

私は横の文房具コーナーに近づき、陳列されたペンケースを眺めた。

かわいいデザインのものがたくさんあって悩む。

うーん、と考え込んでいると、お会計を済ませた晴夜くんが近づいてきた。

「帰るぞ」

「待って…、どれにするか迷っちゃって…」

「ったくどんくせえな。これでいいだろ」

晴夜くんは淡いブルーに金色の星が散りばめられたデザインのペンケースを手に取り、レジへ持っていくと自分の財布からお金を出した。

「え、待って…!自分で買うから!」

「欲しかったっつってたろ。買ってやる」

「でも悪いよ」

「いーつってんだろ。それに…」

晴夜くんは横を向いた。

「今日はお前の誕生日だろーが」

あっ、と思ったときにはもう顔が熱くなっていた。

そういえば今日、私の誕生日だった。

それにしても、晴夜くんが覚えててくれてるなんて…。

「おいてくぞ」

「あ、待ってっ」

お会計が終わると、晴夜くんはスタスタと歩いて店を出た。

漫画の新刊の入った袋を満足そうに持って。

私は晴夜くんが買ってくれたペンケースが入った袋をチラリと覗いた。

晴夜くんが選んでくれた、私にとって特別なプレゼント。

「晴夜くん、ありがとう」

それを大事にかかえて、私は晴夜くんの隣を歩いた。


《第二章・終》

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