第十八章 アイシテル
本当なら、今すぐ床に降り立って、晴夜くんに私の存在を知らせたい。
でも、晴夜くんを怖がらせたくなんかない……。
ああ、晴夜くんが私の身体に、手に触れてる。
結局、私は晴夜くんの手に触れることしか許されなかった。
我が儘な願いは、その長い腕でその広い胸にうずめられること、そして、その整った唇に触れること……。
なんて、考えただけで恥ずかしくなる。
晴夜くんにも失礼だ。
……でもね、そのくらい晴夜くんのことが大好きなの……。
しばらくすると晴夜くんは、ポケットからあるものを取り出した。
あ……。
私が小さいときに、晴夜くんの誕生日にあげたおもちゃの指輪だ…。
それはおもちゃでも、本物のように光り輝くダイアモンドの指輪だった。
晴夜くん、ずっと持っててくれたんだ。
晴夜くんはそのまま私の硬直の解けかけた指にはめた。
――左の薬指。
「お前が俺の嫁だなんて、贅沢なんかじゃねぇ。むしろ、俺の嫁がお前であることのほうが贅沢だ」
そして、ゆっくりと私の手を戻した。
「俺がお前のとこに逝ったら、そん時はお前、俺の嫁になれよ。……だから、それまで俺のこと、嫌いになんじゃねぇよ」
うん、ずっと待ってるから、と私は大きく頷いた。
婚約……って思ってもいいのかな。
そんなことを考えていると、晴夜くんは、私の顔にのっていた白い布を取った。
真っ白い寝顔が露わになる。
死んでいるとは思えない、穏やかな顔。
静かに瞳を閉じ、口元は微かに微笑んでいる。
晴夜くんはそんな私の額を優しく撫でた。
半透明な私の額にも、晴夜くんの手の平の温もりが伝わる。
そして晴夜くんは立ち上がり、青白い私の唇に自分の唇を落とした。
えっ……。
自分の唇に当たる柔らかいものの正体を理解するのに時間がかかった。
そっとそれが離れたとき、やっとそれが晴夜くんの唇だと了解した。
「誓いのキス…」
そう呟いて、晴夜くんは私の顔に布をかけ直した。
夢、叶った……。
顔が熱くなる感じがした。
心はかなりパニックになっていたけど、私は大声で叫んだ。
晴夜くんに届くように、
ありがとう
と。
その声が届いたのか届かなかったのかはわからないけど、晴夜くんはニコッと笑った。
「今度こそ、約束破んなよ」
静かにドアが閉まる音が響いた。
外は心地好い風だけが吹き渡っていて、空は青々と澄んでいた。
晴夜くんは私の手紙を大事そうにバックにしまうと、いつものように颯爽と歩いていった。
いつまでもその後ろ姿を眺めていたかったけど、私はそろそろ階段を上らなきゃいけなかった。
晴夜くんと約束したから……。
いつか晴夜くんと逢う日まで、待ち続けると。
ずっと愛し続けると……。
花火は一瞬で散るわけじゃない。
人の心の中で永遠に咲き続けている。
《End》
最後までお付き合いいただき、ありがとうございますm(__)m
駄作でありきたりで、本当に申し訳ないです<(__)>
本当は、Fireworkが正しい花火の英語ですが、花を強調したかったので、タイトルはFIRE FLOWERにしました。
評価してくださった方々、お気に入り登録してくださった方々、本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします八(´∀`*)