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FIRE FLOWER  作者: 碓氷優姫
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第十六章 コノオモイ

私、死んだんだ…。

そう思うと、不思議な孤独感がじわじわと込み上げてきた。


……晴夜くんとの約束、守れなかった……


どうしてなの……?

せっかく晴夜くんに近づけたのに。

晴夜くんに触れられたのに。

まだ好きって直接伝えてないのに……。

結局会えないまま私の人生は終わってしまった……。


真っ白だった視界がだんだんと色を含み始めた。

どれ程時間が経ったかはわからない。

けれど、嘆く家族や近所の人々の声がずっと聞こえていたのに、今はないということはかなりの時間が経過したのだろう。

はっきりとした視界に現れたのは、私が安置されたベッドのわきで立ち尽くす晴夜くんの姿だった。

ちょうど部屋の真上から見下ろす形で私にはその光景が見えている。

顔には白い布が掛けられ、真っ白い布団で身体中を覆われ、頭上ではろうそくがぼんやりと部屋中を不気味に照らしていた。

晴夜くんの右手には、私がお母さんに託した手紙が握られていた。



この手紙が貴方に渡っているということは、私は既にこの世にいないのでしょうね。

約束守れなくてごめんなさい。

でも、これが私の限界です。

死にたくなんかなかった。

だって、晴夜くんのことがずっと前から好きだったから。

できれば直接伝えたかったのに、ずっとそばにいたかったのに……神様がそれを赦してくれなかったみたい。

でも、晴夜くんにとっては足枷だった私がいなくなってよかったのかな……。

……なんて、本当は悲しんでほしいって思ってるの。

だって、私のこと忘れてほしくなんかないんだもん。

だから忘れられないようにずっと生きていたかったのに、身体が言うことを聞いてくれないの……。

ずっと病気を抱えてたって、晴夜くんがいるならがんばろうって思えた。

いつの間にか晴夜くんが私にとって一番大切な存在になってたの。

だから晴夜くんに会えない時は、本当に寂しくて辛くて……。

私、なにか悪いことしたのかな。

神様に嫌われるようなことしたのかな……。

した覚えがないのに、私の人生はどうしてこんなにも苦痛だらけだったの……?

晴夜くんのお嫁さんになりたいって、贅沢な夢を持ってたから……?

わからないよ……。

好きな人のことを一途に想うことがいけないなんて……。


今まで綴った想いは、貴方に理解してもらわなくてもいい。

ただ、届いただけで十分です。

もう身体の痺れが酷くて字も書けなくなってきてしまいました。

なのでもう終わりにします。

読んでくれてありがとう。

そして今までありがとう。

これからも貴方のことだけを想いつづけてもいいですか?


晴夜くんへ

萌愛より



以上が私の手紙の内容だ。

恥ずかしいけど、本当の素直な気持ちを全部書いた。

この想い、届いてくれたかな……。

《第十六章・終》

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