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FIRE FLOWER  作者: 碓氷優姫
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第十四章 キヅイテタ

いよいよ、晴夜くんの大会は明日に迫っていた。

私はと言えば……

高熱と嘔吐、身体中の神経麻痺、そして吐血……と最悪の状況が続いていた。

私、もう死ぬのかな。

ううん、死ねないよ……。

少なくとも、晴夜くんに会うまでは、死にたくない……。

私はもしものときのために、晴夜くん宛てに手紙を書くことにした。

だって、何も伝えられないままお別れしたくないから。

私はだるい身体を起こして机に向かった。

頭がガンガンする。

めまいがする。

吐き気が襲う。

手が震える。

字が掠れる……。

それでも私は手紙を書ききった。

誰にこの手紙を渡してもらおうか。

なるべく、この手紙が届く日は来てほしくないんだけどね……。

というか、来ないでほしい。

なんてことを考えていたとき。


ガラッ


静かにドアが開き、お母さんが顔をのぞかせた。

「めぐ、入ってもいいかしら……?」

「…いいよ」

お母さんはベッドの近くまで来てから深く頭をさげた。

「ごめんね……」

何度も謝る母を見て、私は言葉を失った。

「どうしてそんなに謝るの?」

私はお母さんには怒ってなかったのに……。

「ううん、めぐに辛い思いをさせたのは私たちだから……」

「それは……。確かに辛かった。私をかばってくれた晴夜くんを否定されて……。もう、会えなくなっちゃったなんて……。でも、よく考えたら、お父さんはそんなに私のことを思っててくれたのかなって考えたの。確かにあの言い方は酷かったよ。……でも……」

私は言葉を詰まらせた。

私のひとつの我が儘で、たくさんの人を傷つけて悩ませて、結局自分の胸を締め付けてるだけだった。

どう言えば、上手く伝わるのかがわからなかった。

「そのことは、本当に悪かったわ。……お父さんも凄く反省してた。……あのね、私が本当に謝りたいのは……」

私は心臓がドキンとなった。

どうしてそんな悲しそうな顔をするの……?

「あなたは、治療法のない難病に罹っていたの……」

なんだ、と私は思った。

「そんなこと、ずっと前から気づいてたよ。私の命が短いことだって……。だからもっと早く言っててもよかったんだよ」

お母さんは声を上げて泣き出した。

「……言えるはずなかった……。本当なら言いたくもなかった……。あなたが入院した時点で、……余命2ヶ月の宣告を受けていたなんて……」

「え……」

私は言葉を失った。

入院した日から2ヶ月といえば、ちょうど今頃……。


お母さんの話によると、今日私の様子を見に病院に来たら、ちょうどお医者さんと会い、お母さんの口からそのことを伝えるべきだと言われたのだという。

お母さんは私に、もっと楽しい思いをさせてあげたかったと思っていたのかな。

だからあんなに謝っていたのかな。

あの事件が悪循環になっていたんだ。


それよりも、もうじき死ぬと告げられたのに、こんなに冷静でいる自分が、逆に怖かった。

《第十四章・終》

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