第二話
「はーい。それでは自己紹介お願いしまーす!ではそこの女の子から」
ここは駅の裏の居酒屋。駅の裏にあるので、今のような日の暮れかかった時間帯は仕事帰りのサラリーマン達で溢れかえっている。また、ちょうどビル街の裏なので、買い物帰りの人やバカップル達の喧騒でもあふれかえっている。
「はーい、私の名前は_」
そして今このとき、居酒屋で合コンしている。
よりによって居酒屋。選んだものの神経を疑いたいところだが、女の子達は特に何にも言ってないから、居酒屋で合コンというものはありなのか?というか何気に俺合コン初なんだよ。え?そうだよ。緊張してるよチキショー
ちなみに俺の友人はきぐるみを脱いでティーシャツ短パンというラフな格好にもかかわらずちゃっかり一番の注目を集めている。
女8人男8人+司会者計17人
意外と大所帯だ。
……かえりてぇ
無理やり連れて来られた身としてはこの人数は帰りたくなってくる。絶対女子にも無理やり連れてこられてきた奴がいるはずだ!俺は帰っていいはずだ!!
「はーい、では次は男組み。そこのお前から」
そういって急に俺を指名する司会。え?女子の紹介もう終わったの?ひとつも聞いてないよ俺~、考え事すると没頭する癖、どうにかしないとなー。
「えー、俺は榊 祐一高三の文系です」
「いやにシンプルだなお前。俺はこいつの友人で、銅 敦こいつと同じく高三で、体育会系!特技はやっぱ運動、陸上部で大会にもいったことあるよ。よろしく」
「俺は_」
そして紹介が続いていく。そして俺はもっと帰りたくなってくる。なんでって?敦が友人なんていうから男子どもの視線が痛いんだよ。そして一人じっと俺を見てくる女子がいるんだよ。視線が痛い、帰りたい!!
もとから引き篭り気味で最近然る事情により若干人間不信になっている今の俺にこの視線は痛い。
「では自己紹介も終わったとこでゲームを始めましょー。まずは_」
・・・・・・・・・・・
そしてほとんど意識を飛ばしたまま合コンを終えた。話しかけられても適当に返事してたんじゃないかなぁ、多分。変なこと言ってなきゃいいけど、俺。
「では解散!!二次会行く奴、俺について来い!!」
誰がいくかボケ
俺はほとんどが二次会へ向かう中一人反対方向へ歩いていく
「おい、何ずっとつまんないって顔してたんだよ、おまえ」
「……敦か、俺のことはもうほっておいてくれ」
俺は疲れたんだ。速く家に帰りたいんだ。
「お?反抗期か?いやに冷たいじゃねーか」
「うるさい」
疲れた
「うえ、本気で冷たい。お前何、本気で嫌だったとか?……悪かったな、無理に引き込んで。」
「……疲れた」
「え?あぁ、そう。無理すんなよ。今日はもう帰れ。また明日な」
「あぁ、その前に。お前なんで着ぐるみなんか着てたんだよ?」
こんな小さな町に遊園地などはない。
「あぁ、それは………秘密だ。」
「は?」
「まあ、いいじゃねーか。じゃ、また明日な。」
「あぁ……そうだ、次ぎ誘うときはもう少し少人数にしてくれ。」
本気であの人数の視線は死ぬかと思った。時間が過ぎるにつれて、女から敦への高感度は高くなり、それに比例して敦に信頼されている俺への嫉妬は半端なかった。そしてその女の子達に対する男どもの嫉妬の視線がなぜか横にいる俺へと降り注ぐ。
「え?次も来てくれんのか?」
「どうせまた無理やり引っ張ってくるんだろ」
「そんなこと……無くも…ないか、な」
そういって苦笑いを浮かべる敦。
こういう下手な嘘をつかないこいつとのこの距離は安心する。
「あぁ。じゃあそろそろ帰るわ。また明日、図書館で。」
「おう!また明日な」
そうして俺は
今度こそ家路に着く
………と、思っていた。