~ずっと友でいてくれる?~
最終回です!少し長いですが、よろしくお願いします!
Ⅴ ナノ&レオVSティル&ナイフ
ナノは、ティルといっきに間合いを詰めた。そして腹に突きをした。が、ナノは空を突いていた。
「えっ」
ナノは、そのまま体勢を崩しそうになったが、床に手を着いて、ティルを探した。
だがティルはいない。
振り向いた時、シュッ 何かを振り下ろす気配を感じた。ナノは瞬間的にそれを避けた。
ガッ
さっきまでナノが居た場所に、綺麗に飾りが付いているナイフが刺さっていた。
「あっぶなぁ」
「避けないでよ。」
シュタッ
ティルが真ん前に現れた。さっきは、飛行機の天井に居たのだ。
「避けないでよって言ったって、避けなかったら刺さってたんだよ!」
「まあ良いや、ナイフならまだまだあるし。避けられるかな?」
ティルが、どこからか、大量のナイフを取り出して投げてくる。
シュッシュッシュシュッ
「うわっうわっうわわわわっ」
ナノは、椅子の背もたれを楯にしたりして、避けた。
その繰り返しが何分も続いた。もう回りはナイフだらけだ。
「もうすぐ、ナイフも無くなるんじゃない?」
「ご心配なく。ナイフなら何億本もあるから。」
「うっそー!」
ナノは、避けながらティルへ近づくが、ティルはすぐに逃げる。
(くそっ ティルの動きが数秒でも止まっていてくれれば・・・。)
ナノが思った瞬間、奇跡が起きた。なんと、ティルの動きが止まって倒れたのだ。
なんと、レオがティルを羽交い絞めにしていたのだった。
「えっレオ!紐で縛られていたんじゃ・・・。」
「俺を誰だと思ってる?A級の天才だぞ。なめるな。ナイフの飛ぶ角度を計って紐を切ったんだ。」
「さっすが!」
ナノはニッコリ笑って、鞄から鉄製の紐を取り出した。そして羽交い絞めにされたティルを、力いっぱい締め上げた。
「痛いっ!もうちょっと手加減してよ~!」
「あははは、そんなこと言って、ナイフを手加減なしで投げてきたくせに。」
ナノは、ティルの頬を、ぐにーっ と引っ張った。
「あはは。それより紐解いてくんない?」
「いや、意味分かんないんだけど。」
ナノは、そう言ってから、ティルの耳から、ピアス型チップを取った。
「あああっ!お願い!それだけは!」
ティルが悲しそうな顔をした。
「・・・。」
黙ってしまうナノ。
「お願い!友達だろっ?」
「・・・友達か・・・友達なら、少しは意地悪も許されるよねっ?」
「えっ・・・」
「またお話しようねっ」
ゴスッ ナノがティルの腹を殴った。
パタッ ティルはそのまま倒れた。
「やったー!初ミッション成功!」
ナノは飛び跳ねた。そのナノの腕をレオが掴んだ。
「おい、喜んでいる場合じゃないぞっ乗客が通報している。このままベルサイユに行けば捕まる。」
「うっそ!どうする?」
ナノは周りを見回した。
「飛び降りるとか?」
「アホか」
「でもそれ位しかないよ。」
ナノはそう言って、鞄をレオに見せた。鞄は、パラシュートになっているのだ。
「そうか!それがあったな!」
レオは自分の鞄を持って、溶けた窓の前に立った。
「行くぞっ」
「ちょっと待って!」
「何だ?」
「友達を置いていけない。」
「・・・。」
レオはティルとラルスを見た。
「俺がバカを持つ。女はお前が持て。」
「うん!ありがとう!」
ナノは鞄を肩に掛け、ラルスを抱え、レオとは反対側の窓を、肘で割った。
バリンッ
レオが、現在地と、世界中の場所を詳しく教えてくれるデジタル式地図を見て言った。
「下は海。ここから五十九キロの場所に島がある。風は北北東向き、時間や風を計算しても、無事に島に下りるのは無理に等しい。」
「じゃあどうすんのっ?」
「いや、待てよ・・・。気温が上昇した!風向きが変わったぞ!そして、こいつらバカを計算すると・・・。」
レオがブツブツと言っている。
「ビンゴだ!行ける!」
「やった!」
ラルスを抱えたナノは、かばんの中から出したゴーグルを付けた。
(こういうの、一度やってみたかったんだよね!)
「とう!」
ナノは掛け声とともに窓から飛び降りた。
それと同時にティルを抱えたレオも、窓から飛び出た。
ヒューーーッ ヒューーッ
耳には風の音しか聞こえてこない。ナノは目をゆっくり開けた。目に映るのは白い雲と、その間からちらほらと見える真っ青な海だけ。
「綺麗・・・。」
そう言うナノの声は、すごい風でかき消される。
雲の横を通り過ぎ、どんどん海が見えてくる。そのとき、島が目に入った。風で島の方へ近づいていく。レオがすぐ隣にいる。
ナノとレオは顔を見合い、頷いた。ナノは、鞄の手持ちの場所を、引っ張った。
バシュッ
パラシュートが無事に開く。
「よしっ」
ナノは、両腕を広げた。
そして、ナノ達は潮の香りが広がる浜辺に、無事着陸した。
「はぁ~疲れたっ」
ナノは、浜辺に寝っころがった。
「初ミッション・・・無事、クリア・・・んん~!いい気持ち!」
ジジジジッ
ナノのタップパンツのポケットから電子音がした。トランシーバーだ。ナノは起き上がって、トランシーバーのボタンを押し、耳に当てた。
「こちら、アンドリンナ・ラウ・ナノです。」
「校長よ、状況はどう?」
「最高です!無事、情報を取り返しました。」
「・・・そう・・・良かったわ・・・現在地は?」
「えーっと・・・島です。」
「島?」
「はい、飛行機から飛び降りたんです。」
「そ、そう・・・じゃあそこへ今すぐに迎えを用意するわ。」
「ありがとうございます。」
ナノは、そう言って電源を切った。
「迎えを用意してくれるって!」
「そうか。」
レオは少し顔を赤くして、ナノを見た。
「何?」
「初ミッション・・・。」
「うん。」
ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
「お前と一緒に出来て、良かった・・・。」
そう言うレオの言葉は、すぐ近くを通っていった飛行機の音でかき消されてしまった。
「なんて言った?もう一回言って。」
「い、言えるかっこんな恥ずかしいことっ」
レオは、顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「あははっ!顔、真っ赤っ赤!」
ナノは笑いながら、レオの隣に座って、レオにもたれた。
「えっ」
「あたし、レオと一緒にミッションできて良かったよ!」
ニッコリ笑って言うナノ。
真っ赤になった顔を見せないよう、ナノと反対側に顔を向けるレオ。
そんな二人の頭上を飛行機が過ぎていった。
エピローグ
Tは、このごろ様子がおかしかった。授業中、いつも上の空で、女子とも遊ばなくなった。そして、なぜか、いつもナノの事を考えていた。
(ナっちゃん・・・。)
Tは、紙を見つめていた。それは、砂浜でスーツ姿の男に起こされた時、
「ナノ様からの電報でございます。」と言われて渡された紙だ。
それには、
『友達へ 殴っちゃってごめんね!またお話しようね! ナノ』
と書かれていた。
Rが、そんなTを中庭に呼び、
「あんた。最近おかしいよ。」
Tを見て言った。
「・・・そうかもな。」
(もしかして、オレ、ナっちゃんの事が好きなのか・・・?)
「オレ、好きな人が出来たかも。」
TがRを見つめながら言った。Rの顔が、真っ赤になる。
(も、もしかして、Tったら、こんな所であたしに告白する気っ?で、でも・・・すごく嬉しい!)
Rが、そんな事を考えている事を知らないTは、ニッコリ笑って、
「オレ、ナっちゃんが好きみたいだ!」
そう言った。
グジャッ
Rは、手に持っていたノートパソコンをひねりつぶした。
(あのナノって野郎・・・次に会ったらぶっ殺す。)
Tは空を見上げた。
(アメリカか・・・そう遠くもないかもな・・・ナっちゃんに会いに行こうかな・・・。)
Rは空を見上げた。
(アメリカ・・・そう遠くはないわね・・・今度は、ナノだけに毒でも盛ってやろうかしら・・・。)
二人はまったく違う事を考えていた・・・。
ナノの事を考え、笑顔になっているティル。
盛るための毒を選んでいるラルス。
そんな二人の頭上を飛行機が過ぎていった。
《エンド》
アメリカ ワシントン通り。
リリリーン
朝食の時間だ。ナノ達はいつものように競争してランチルームへ走った。
ランチを五セット買い、席に着こうとした時、出しっ放しの椅子に足を引っ掛けたナノの手から、ランチが離れる。
その先にはレオ。
朝からうるさくなりそうだ・・・。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
この作品は、『青い鳥文庫』の【おもしろい話が書きたい】で、第二次審査らへんで落選した話です。
感想をいただけると、励みになります。
本当に読んでくださってありがとうございました。