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~ティルは、誰にも渡さない!~


Ⅳ 敵? 悲しむナノVS燃えるラルス


「「うっ」」

 バタバタッ

 ナノは、飛行機の席を確保するため、ベルサイユに行く中の二人組みのおじさんを気絶させた。

「いつ見ても、すごいな・・・。」

「ねえ、どこに隠せば良いかな?」

「さあ、そこらへんに置いとけばいつか誰かが気づくだろ。」

「そっか」

 ナノはおじさんを、なるべく滑走路から離して置いておいた。

そのとき、首にスカーフを巻いた、キャビンアテンダントの人がやってきた。

「ベルサイユ行きのお客様ですか?」

「はい。」

 レオが答える。

「では、ご乗車ください。」

「はい。」

 ナノとレオは、鞄を持った。

「五番席だ。乗るぞ。」

 レオが、おじさんから取った券を見て言った。

「うんっ」

 こうして、ナノとレオは、無事、飛行機に入る事が出来た。


「ちょっと待てよ、俺達の目的は飛行機に乗ることじゃないぞ。」

「え!そうだったっけ?」

 飛行機に乗ることしか考えていなかったナノは首をかしげた。

「そうだ。飛行機に乗る前に、情報を持ち帰ることだ。」

「あ・・・。そうだった・・・。」

「くそっ・・・まあいい、飛行機の中で、身長、百五十から百六十の二人組みで、他のスパイスクールに通っていそうな者を徹底的に絞って、情報を奪い返せばいい。」

 レオが、席に座りながら言った。


 そのとき、ナノは、前から思っていたことを言った。

「あのさ、なんでわざわざ情報を、手で持って帰るのかな?コンピューターで送れば良いじゃん。」

 すると、レオが「そんな事も分からないのか?」って目で見てきた。

「バカか?そんな事をしたら、政府が張っているコンピューター制御システムにつかまって、盗んだ意味がなくなる。」

「えっでもさ、スパイスクールの科学技術で何とかならないの?」

「さあな、もし出来たとしてもそれは百パーセントではないんだろう。つかまったら終わりだから、あえて手持ちにした。それだけの事だろ。」

「ふーん。」

 納得したナノは、上を見た。クーラーが、休まず動いてる。

「クーラーききすぎじゃない?ちょっとレオ、あんたのパーカー貸して!」

 ナノは、勝手に、レオの脱いだパーカーをはおった。

「はぁ~・・・。まあいいけど。」

 ナノはレオにかまわず、続々と入ってくる人を見た。

「ねえ、レオ?今の状態で怪しいと思う人って誰だと思う?」

 ナノの問いに、


「俺は、ティルとラルスって奴らが一番怪しいと思う。」

 とレオは答えた。


「えええっ」


 ナノは、つい叫んでしまった。

「お客様、もう少し静かに願います。」

「は、はい。」

 ナノは、小さな声で聞いた。

「それ、本気で言ってんの?」

「ああ、身長も条件と合っているし、二人組みだ。しかも同じ年くらいで、スパイスクールに通っている可能性があるだろ?よく考えてみろ、今、普通の学校では、授業をやっている。中学二年の者がここにいるのはおかしい。」


(そういえばそうだった・・・。)

「分かっただろ?」

「でもっ――」

「授業でも習ったはずだ。無駄な感情は作るな、任務だけを遂行させろ。と。」

「・・・・。」

 ナノは、まだティルを疑えないでいる自分に言い聞かせた。

(レオの言うとおり・・・無駄な感情は作っちゃダメ。ティルは友達だけど、敵なんだっ!)

 無理矢理自分を納得させようとするが、どうにかティルとラルス以外の者が敵だと思いたいナノは、

「あっあそこのおばさん二人は?」

 と、レオに聞いた。

「ダメだ。背が低すぎる。」

「じゃああそこの坊主の二人組み!」

「背が高すぎる、それにすごく目立っている。スパイなら、もう少し身なりに気をつける。」

「じゃあっ――」

「もういいだろっ?あいつらから情報を奪うことだけを考えろ。」

「・・・・分かったよ。」

 そのとき、

「あ!ナっちゃん!オレらの前の席なんだ!」

 ティルがナノに駆け寄りながら言った。

「う、うん!」

「偶然だね!」

「だね!」

 ナノとティルが笑顔で話していると、

「皆様、今回はご乗車いただきまして、まことにありがとうございます。では、空の旅をお楽しみください。」

 と放送が流れた。

「じゃあ、オレ達後ろだから。」

 ティルが席に着いた。


 飛行機が滑走路を走り、段々と空へ上がって行った。

「わぁーすごーい!」

 初飛行機にナノが目を輝かせて、窓の外を見ているとレオが突っついてきた。

「どうやって奴らから情報を取り返す?」

「さあ?」

「さあ?ってお前・・・。」

「じゃあティルに聞いてみる!」

「バカか!そんな事したら――」

「ねぇティル?」

 ナノは、シートベルトを緩めて、後ろを振り向き、ティルに話しかけた。

「なに?」


「あのさ、ティルって、アリマンテイル学校のコンピューターシステムに侵入して情報を取った?」


 ナノは超率直に聞いた。

(教えてくれるわけが無いだろっ バカかっ!)

 レオが頭を抱えていると、ティルはニッコリ笑って、


「うん、アリマンテイル学校の生徒の個人情報とか、全てをこのピアス型チップに入れたよ。」


 と言いながら、耳に付けている変な形のピアスを外して見せた。そのティルを、レオとラルスが、目をまん丸にして見ていた。

「・・・やっぱりティルだったんだ・・・。じゃあ食料に毒を盛ったのも?」

「うん、オレらだよ。ラルスが毒専門だからね。」

「そっか。ねえ、そのチップくれない?」

 ナノが言うと、ティルは苦笑いをして言った。

「いやぁ、ナっちゃんの頼みでもそれは無理だなぁ。」

「そこを何とか!」

 ナノが両手を合わせて言った時、


「無理よ。」


 ラルスの刺のある声がナノの耳に入った。

「貴方達、アリマンテイル学校の者でしょ?」

「ええっ」

 ティルが驚いて声を上げた。

「えっ!何で分かったの?」

(分からないほうが馬鹿だよ。)

 レオがため息をつく。

「やっぱり、残念ながら、返すことは無理よ。」

「ケチッ」

「ふんっ好きに言いなさい。どうしても返して欲しかったら、力ずくで取ればいいわ。」

 ラルスが気取った口調で言う。

「えっ?いいの?あんた怪我するよ。」

 ナノがさらっと言った。

 ムカッ.

「誰が怪我するって?」                              ・ ・ ・

 ラルスが殺気立って立ち上がった。ラルスが使っていたシートベルトは悪臭を放って溶けている。

「えっ溶けた・・・。」

「あなた、調子に乗りすぎよ・・・。」

 ラルスの指の間には、色々な色の液体が入った小瓶が挟んである。

「ラルス、落ち着いて。他のお客に迷惑が掛かるよ。」


「そんなのどうだっていいわ」

 ラルスが、左手の小瓶を投げてきた。


 ナノは反射的に、シートベルトを外して、背もたれの裏に隠れた。

 シューーッ 

 鼻を突くような臭いが背もたれからした。背もたれを見たナノは、目を白黒させた。

 なんと、背もたれ(鉄製)が溶けていたのだ。


「死ねっ」

「嫌だっ」


 ラルスが右手の一つの小瓶を投げてきた。

ナノは、着ているパーカー(レオの)で小瓶を窓に弾いた。


 シューーッ 

 窓ガラスが溶けた。

 ビューッ

 窓からすごい風が入ってくる。


 他の客は、ナノ達からなるべく離れた。

「あっぶないなぁ」

「黙れっ」

(ティルは渡さないっ!絶対に!あんたみたいな、バカ女にはっ!)

 ラルスの頭には、チップより、勘違いしている、この言葉しかなかった。

ラルスがまた小瓶を投げてくる。

ナノはそれを避けて、ラルスに近づいた。

「死ねっ」

 ラルスがナノの顔面めがけて小瓶を投げた。


 サッ

 小瓶はナノを確実に捉えていた。のに、ナノには当たらなかった。


「えっ」

 〇,一秒の間にラルスの背後に回ったナノは、ラルスの首筋を突いた。

「あっ・・・。」

 ラルスは、そのまま倒れた。

「わぁっラルスを倒すとは、すごいね。」

 ティルが拍手をした。ナノが振り替えると、ティルが、レオを紐で縛り上げていた。

「あっレオ!」

「残念、ベルサイユに着くまでおとなしくして貰おう。でないと、レオ君を殺しちゃうよ。」

 ティルが意地悪く、ニヤッと笑った。

「俺の事はいい、早くチップを取り返せっ」

 レオが苦しそうに言う。


「うん、知ってる。」

 ナノは、さらりと言った。


「お、おい、それが仲間に言う言葉かよ。」

 驚いて言うレオ。

「いや、だってレオが言ったんじゃん。」

 レオは深いため息をついた。

「ナっちゃんと戦わないといけないのか。」

 構えるナノを見て、悲しそうに言うティル。

「あたしも嫌だよ、でもしょうがないよ。」


「みたいだね。」


 ティルが構えた。



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