~ティルとレオ Ⅱ ~
「ちょ、ちょっと、レオ、なんで引っ張るの?」
ナノが聞くと、レオは、ナノの手を離して、不機嫌そうに言った。
「お前が、あいつにお世辞を言われてデレデレしてるからだよっ」
「デ、デレデレなんてしてないっ」
「してるっ初ミッションだって言うのに、お前は失敗させたいのかっ?」
「そんなことないっ」
「いや、あるなっ」
「なんでそうやって決め付けるのっ」
ナノの目が潤んできた。
「あたし、初ミッションを失敗させたいだなんて、思ったことないのにっ!」
ナノは泣きそうな状態で、走り出した。
「あっ」
レオは急いで後を追いかけた。
ナノは人ごみの中を走っていた。そのとき、
「ナっちゃん!」 ・ ・ ・
そう呼ぶ声がした。ナノを先に見つけたのは、レオではなく、ティルだった・・・。
「・・・ティル?」
ナノは顔を上げた。すると、ティルが前から走って来ていた。
「大丈夫?なんか言われたの?」
ティルが、ナノの肩を優しく抱いた。
「・・・。ううんなんでもない。・・・・。そうだよっあたしは、あんな言葉でへこたれるような奴じゃないんだ!レオに一発食らわせて、分からせてやるっ」
開き直ったナノは、ティルを勢いで突き飛ばして、レオを探した。
ティルは、いきなり突き飛ばされて、驚きながらも、元気になったナノを嬉しそうに見ていた。
「あああ!もうこんな時間!急いで飛行機に乗ろう!」
ティルがナノの手を握った。
「あっ鞄!」
「オレが持ってるよ。」
ナノの鞄はティルが持っていた。
「あの・・・中身は?」
「大丈夫、見てないよ。」
「ありがとっ」
ナノは、ティルから鞄を受け取った。
「ほらっ急ごうっ!」
ティルが、ナノの手を引っ張ろうとした時、
ぱっ
ティルの手が、ナノから離れた。
「ん?」
ティルが振り返るとレオが居た。レオが、ティルとナノの手を離したのだ。
レオは、ティルの腕を持っている手に力を入れた。
「いてててっ」
ティルがレオの手を振り払う。
ティルを睨んでから、レオは、ナノの手を優しく握り直した。
「行くぞっ」
「う、うん。ティル、また後でね!」
レオはナノの手を引っ張って、ベルサイユ行きの飛行機の場所へ行った。
(あ、レオを殴んなきゃ!)
ナノはレオを見た。レオと目が合った。
「あっあの・・・。さっきはごめん。つい。」
(あの冷血バカ野朗が謝るなんて・・・。)
ナノがレオの顔をずーっと見ていると、レオの顔が真っ赤になった。
「あのさ、あんまこっち見んな」
「え?なんで?」
レオが照れていることに、ナノは気づいていない。
「と、とにかくだ」
レオはナノの手をギュッと握った。
ナノは手を握っていることを忘れていた。自然と顔が赤くなる。
(ま、殴るのは後でもいいか)
「チッ」
ティルは舌打ちをした。
「さっきの声は大げさ過ぎたんじゃない?」
ラルスが無表情で言う。
「いや、本当に痛かった。あいつ、血管の仕組みを知ってるな・・・。只者じゃないぞ・・・。」
ティルが面白そうに言う。
ラルスは無表情のままだ。