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~ティルとレオ~



 Ⅲ ティル&ラルス


「お待ちしておりました。」

 スーツ姿の男が、黒塗りのベンツのドアを開けた。中には、もうレオが座っていた。

「まさかお前と、初ミッションをするとは・・・はぁーー。」

「ため息をつきたいのはこっち!」

 ナノは、レオからすごく離れた席に座った。

「少し急ぎます。」

 スーツの男がアクセルを踏んだ。そして、ジェットコースターのような速さでとばし始めた。

「お、おい、運転、乱暴すぎないか?」

「そう?あたしはこのくらいの速さが好き。」

「空港までに着替えをして下さい。その黒いコートは目立ちすぎます。服は特殊素材で出来ております。足元にございますので。」

 ナノは、すごい速さで走る車の中で立ち上がり足元にあった箱を持って、後部座席へまわった。

(初ミッション・・・)

 そう思うとだんだんと顔がニヤけてくる。ナノは箱を開けた。


 服は、袖が軽く開いている七部丈のカットソーに、サスペンダー付のタックパンツ。と、シンプルだった。

(こういう服、初めて着るなぁ~)

 首元が大きく開いているカットソーを見た。肩の部分に刺繍がほどこしてあり、とてもかわいい。

「着きました。」

「ありがとっ」

 ナノとレオは無事、空港に着いた。黒塗りのベンツがすごい速さで戻っていく。

「ベルサイユ行きの飛行機は十時出発だ。今は九時十分。まだ時間はある。急ぐぞっ」

「分かってるっ」

 ナノはレオが仕切っているのが少し癇に障った。


 二人は空港の荷物受け渡しの場所へ行き、ベルサイユ行きの便に乗る人達を、さりげなく監視した。ナノ達が持っている情報は、身長が百五十から百六十の二人組みで、違うスパイスクールの生徒かもしれないというものだけだ。

 ベルサイユ行きに乗る人はいっぱい居るし、身長が百五十から百六十の人だって何人もいる。

 みんな、怪しくないといえば怪しくないし、怪しいと思えば怪しい。

 ナノは少しパニック状態になってきた。


「おい、大丈夫か?」

 レオに声をかけられて、ハッとした。気がつけばレオの顔がまん前にあった。

 ナノは少し赤くなりながら、少し離れた。

「えっ!あ、大丈夫!よし初ミッションなんだから頑張らなくちゃ」

 ナノは深呼吸をして、心を落ち着かせた。

 そのとき、


「ねえっ君達っ!」


 いきなり声を掛けられた。

 ナノが振り返ると真っ赤な髪でピアスを耳につけた、少しチャラい男の子が立っていた。そしてその横に、冷たい目をした黒髪の女の子がいた。二人とも、百五十から百六十くらいの背丈だ。年はナノとレオと同じくらいだろう。

「なあに?」

 人見知りしないナノは、ニッコリ笑って聞いた。

「あのさ、ここってベルサイユ行き?」

 赤髪の子が聞いてきた。

 レオが目を光らせた。

(こいつら怪しい。 ベルサイユへ行くし、二人組みだ・・・。身長も俺らと替わらない・・・。)

「うん!そうだよっ」

「マジで!ありがとっ助かったよ!ラルス良かったな!ここだってさ!」

 隣の女の子はラルスというらしい。

「君達もベルサイユに行くの?」

「うん!そうなの!」

 ナノは口からでまかせを言った。


「お!じゃあさ、待ち時間まで一緒に話そうよ!」

(は?何言ってんだっ?)

 レオは赤髪の子を思いっきり睨んだ。

「うんっ」

 ナノは勝手に返事をした。

「じゃあちょっと待っててね、荷物預けてくるから。」

 赤髪の子がラルスの手を引っ張って荷物を預けに行った。

「お前、なにベルサイユに行くなんて言ってんだよっ それに・・・」

 レオがナノを睨んだ。

「いや、ノリで。」

「はぁー犯人を捕まえて、一刻も早く情報を取り返さなくちゃ行けないってのに、あいつらと一緒にすごすなんて・・・。」

「じゃあさ、あたし達も飛行機に乗って飛行機の中で探せばいいじゃん。」

「はぁーもういい、好きにしろ。」

 するとラルスとテンションの高い赤髪の子が戻って来た。

「ごめん、混んでてさ。そうだ!あそこのカフェで話そう!」

「うんっ」

 ナノが乗り気で居ると、赤髪の子が、ラルスとレオに睨まれた。赤髪の子は気にせず、ナノの手を取ってカフェに走っていった。


「オレ、ティル。中学二年生、君は?」

「あたしナノ!あたしも二年生なんだ!」

「同じだね!ベルサイユには戻るの?観光しに行くの?」

「観光!すごい楽しみ!修学旅行みたいでワクワクするなっ」


(修学旅行なんて行った事ないけど・・・。)

 ナノはそう思いながら、淡々と嘘を付いていった。

「でもほんと、君ノリが良いよね、連れのラルス、あっあの子ラルスって言うんだけどさ、ラルスがすごいノリが悪くて、面白くないんだよ。」

 ティルは、テーブルの前に座りながら、ラルスを指さして言った。ナノも、ティルの前に座って、鞄を下に置いた。

「こっちもそう、レオって言うんだけど、ほんっとノリが悪くて、冷血で毒舌家で、性格がひねくれててさ、とにかくひどいの何のって――」


「ひどくて悪かったなっ。」

 レオが、ナノの隣に座って言った。


「あ・・・聞いてた?」

「ああ、全部な。」

 レオが不機嫌そうに言う。

「ごめんごめん」

「あはは、ナっちゃんって面白いねっ」

「ナ、ナっちゃん?」

 ナノが驚いて聞き返すと、ティルはニッコリ笑って頷いた。

「ナノだからナっちゃん。可愛いでしょ?」

「うん!ニックネームなんて初めて!ナっちゃんかぁ 嬉しいなぁ!」

 ナノがニコニコしていると、テーブルにハート型のホットケーキが二つ置かれた。

「え?」

「あっそれ、ナっちゃんの、オレのおごり。こっちはラルス。」

 ティルが、ニッコリ笑って言った。

「うわぁーいいの?」

「うん、全然OK!」

「ありがとう!」

 ナノは、ホットケーキを一口食べた。

「おいしい!」

 満面の笑みで言うナノを見て、ティルが言った。


「ナっちゃんって可愛いね。」

 レオがティルを見た。


「あはは、いいよーそんな。」

「ほんとだよ、ナっちゃんすごく可愛い!」

 ティルがまた言う。


 ティルが、ナノの頬に手を伸ばす。

「???」

 ティルの手が、ナノの頬に触れる。


 ガタッ


 レオが椅子から立ち上がった。

「ん?」

 ナノが不思議そうにレオを見た時、ティルがナノの頬から手を離した。

 ・

「髪の毛に付いてたゴミ、取れたよ。」

 ティルがゴミを床に落とした。

「どうしたの?レオ君。」

 そう言って、意地悪い目でレオを見るティル。レオはティルを思いっきり睨んだ。

「行くぞ」

 レオが、ナノの腕を掴んだ。

「えっ?なんで?」

 ナノが首をかしげていると、レオが無理矢理ナノを引っ張ってカフェから出した。


 その姿を、ティルは面白そうに見ていた。・・・・・・・・

「ティル、あまり女遊びは止めてくれない?付いていないゴミを髪から取ったり、おごったり。イライラする。もうすぐで殺すところだったわ。」

 ラルスが、手に持っているトートバックの中から、黄緑色の液体が入った小瓶を覗かせて言った。


「ごめんごめん、でも、あのレオって奴が面白いんだよ。ああいうの見ると、もっといじりたくなるんだよな。」

 ティルは目を細めて、言った。


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